「もう1人の自分を楽しめる空間」農業経営者 しごとバ!02
髙橋康輔(アナウンサー)
2022年06月01日 (水)

しごとバ!02「キャリアをいかして農業を育てたい」

水戸市でフルーツトマトを販売する三浦綾佳さん(33)。ママになり、自分のキャリアを生かせる仕事として新規参入したのが農業でした。
経験ゼロから経営規模を拡大させている三浦さんの仕事の育て方とは。
販売の仕事にハマる
三浦さんはフルーツトマト農家として起業するまで、様々な販売の仕事を経験します。アパレルや住宅展示場の受付、太陽光発電や浄水器の販売に携わり、猛烈に働く中で、成果が数字に表れる販売の魅力にハマったそうです。
私からのひとことでお客様の反応が変わる、反応がすぐにわかる、結果がすぐに見えるところが私の性格上、すごくハマった要素かなと思います。
とにかく仕事が生きがいで、打ち込んだという三浦さん。そんな中、仕事で夫と出会い、結婚。妊娠・出産を経て、改めて仕事のことを見つめ直しました。
仕事を辞めるという選択肢はありませんでした。子育ても仕事もどちらも妥協しないまま、諦めないまま生活したいという思いが強かったです。

「売る」農業なら自信あり
ママである自分が使える時間を考えて、夫と一緒に飲食業をしようかと本気で業界研究していた時期もあった三浦さん。そんなとき、偶然テレビで最新技術をいかしたフルーツトマト栽培を目にします。すぐ夫婦で意気投合。甘いトマトを作ることさえできれば、売る自信はあると考えて新規就農します。
農作物を育てたいという思いより、自分たちのこれまでのキャリアがいかせる形で農業をどう作り上げていくかということに面白みを見つけました。
農業経験ゼロだった三浦さんは、販売の仕事で追い求めてきた「どのように売るか」という視点で、農業と関わり始めます。
先端技術×農業の可能性
とはいえ、おいしい農作物を作るのが大切だと思います。農業の知識を身につける必要があったのでは?
農業って経験と勘、10年かかると言われる分野だと思うのですけど、就農した当時、ようやくIOTやスマート農業と呼ばれる技術が出てきていたので、かき集められるだけそういったツールをかき集めて、スタートしています。
先端技術と農業の可能性は大きく広がっていると感じますか?
大きく感じますね。現在は異業種で活躍していた人たちが自分たちの強みを生かして様々な農業に挑戦している時代。これからますます農業の現場は面白くなっていく。
三浦さんと夫、パート従業員の3人でスタートしたトマト農場。7年たった今、規模は大きく拡大し、1ヘクタールの畑に加えてトマトジュースの工場、直売所と24時間営業の自動販売機を運営しています。従業員数は、パートを含めて30人となりました。

販売力=商品力×説明できる力
マーケティングやブランディングに力を入れる三浦さん。前提は、商品が魅力的であること。そして魅力をきちんと説明できてこそ販売力が発揮されるというのが信念です。そのために栽培法から加工場、直売所にわたる事業のすべてを把握し、説明できる状態を7年間、継続してきたといいます。
仕事は「もう1人の自分を楽しめる空間
誰もが働きながら輝くためにどんなことが大事だと考えますか?
人それぞれ、いろんなバックグラウンドがあって悩みとかライフスタイルとかがあると思いますが、仕事、職場というところに1歩踏み出してみると、ある意味プライベートな部分を知らない人たちの集団の中に自分がいられるので『もう1人の自分を楽しめる空間』だと思うんです。こうなりたいという自分を仕事の現場、職場では実現できるんじゃないかと思っていてそれを楽しめるようになると仕事もすごく楽しくなるんじゃないかと思っています。私自身はオンオフの切り替えが本当に激しいです(笑)

働くことの価値観は人それぞれ。お金や、やりがいや地元の友達と休日に遊べることなど様々な価値観があります。でも、すべてを実現できる職場はなかなかありません。
自分が仕事を選ぶときどの価値観が優先順位として高いのか、この部分を明確にすることが重要です。そうすることで誰もが訪れるつらい瞬間にでもこの価値観を優先して自分で選んだんだから頑張ろうって割り切って仕事を頑張れるような気がしています。
インタビューを終えて
三浦さんは、共同経営者でもある夫と運営に当たっています。商品の企画やプロデュースなどは、広告代理店で勤務していたご主人が活躍しているそうです。今回、取材の趣旨を説明に行ったとき「お二人にインタビューしたい」と話したところ「社長である綾佳さんにスポットライトを当てた方が」とご主人からさりげなくアドバイスが。振り返ると、私もプロデュースされていたのかな。次は、じっくり二人三脚の秘訣を聞いてみたいです。