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身体障害者の女性31歳が、面白そうだからとVR空間に飛び込んでみたら・・・一期一会の機会を自分でも作りたくなった/『プロジェクトエイリアン』出演者のその後

現実社会では出会わないような4人が、自分が何者かを伏せたままVR空間上でエイリアンのアバターに身を包んで交流する番組「プロジェクトエイリアン」。
参加者の1人で、車いすユーザーとしてYouTubeを中心に活動するどてさん(31歳/仮名)。元々、かやぶき屋根を直す職人の見習いをやっていましたが、仕事中に屋根から転落。脊髄損傷で下半身が動かなくなりました。持ち前のポジティブ思考で前向きに自分らしく生きようと励むどてさんですが、 正直に意見を伝えてこない人やネガティブ思考の人とは仲良くなれないと思うようになりました。
番組をきっかけに自分と異なる考えの人と交流してみたいと考えたどてさん。VRでの交流を経て、考え方に変化が生まれたのか、取材しました。

(「プロジェクトエイリアン」ディレクター 中村 貴洋)

プロジェクトエイリアン “分断”が進む社会をVR×エイリアンアバターで解決!? 全く新しいドキュメンタリー番組!

2023年3月23日(木)午後10:45~11:30(NHK総合)
👆 放送から1週間 NHKプラスで見逃し配信

車いすユーザーとして 前向きに生きる

自室にいるどてさん

NHKの開発番組『プロジェクトエイリアン』では、VR空間を舞台に、見た目に影響されないアバターでの交流を通じて、ジェンダーや国籍などを理由とした“分断を乗り越える”きっかけとなる場を作ろうとチャレンジしています。車いすユーザーのどてさんは、日常生活とは異なるコミュニケーションへの興味から、この場への参加を希望したといいます。

どてさん

「車いすユーザーのことを一括りにしてほしくないっていう思いがあるんですよね。人間って見た目じゃないと思っていて、基本的には中身の話だと私は思うから。車いすだからこうです、ああですっていう部分は一括りにしてほしくないなって思う。例えばですけど、車いすの人って性格良さそうって思われるみたいなんですよ。 悪いことしなさそうというか。でもそんなわけないんだよね。だって人間だもん。だから、このVR空間は面白そうというか、中身の話だけになってくるから興味深いなって思いました」

どてさんは仕事中の事故が原因で、下半身が動かなくなりました。かやぶき屋根職人になる夢が絶たれ絶望する日もありましたが、前向きに生きようと自分を鼓舞しながら日々を暮らしています。

どてさん

「私のお父さんがかやぶき屋根を直す職人をやっていたんです。自分の家もかやぶき屋根だし、同じ地域にもかやぶき屋根のおうちがもう1軒あるので、こうした文化を世の中に残しておきたいなっていう思いで家業を継ごうと職人の見習いをやっていたんですが、ある日、仕事で屋根に登っているときに転落して、脊髄を損傷したんです。今はみぞおちから下が麻痺してる状態なので足が動かなくて車いすに乗って生活をしています。
もう屋根に登ることができないし、元通りの身体はほぼ100%無理ってわかっていて。私がいくら足を叩こうが何をしようが現実は変わらないなって」

かやぶき屋根の手入れをするどてさん
(かやぶき屋根の職人見習い時代のどてさん。およそ3メートルの高さから転落し下半身マヒになった)
どてさん

「車いす生活で大変だなって思うことはいーっぱいあるんです!挙げきれないほどあって。例えば、バリアフリー住宅って賃貸ではなかなかないので、まず見つけることがそもそも大変で」

キッチンで料理するどてさん
どてさん

「キッチンのシンクは車いすに乗っていると高くて、料理することがしんどいですし。食材を切るのも大変だし、洗うのも大変だし。私の家はIHだけど、ガスだと火が体の近くにあったり、炒め物とかすると油はねがすぐ近くになってくるから、怖いっていうのもある。私は体幹っていう部分がマヒをしていて、腕だけでバランスを取らなきゃいけないから、お湯を持ち上げたときに、チャポンってはねて、足に落ちてやけどするっていうこともあるんです」

車いす生活の苦労は多いというどてさん。しかし、自分のため、そして家族のためにも、障害を持つ前よりももっと前向きに生きることを心がけていると話します。

どてさん

「車いすだと何でもできないんだなって、みんな思いがちな部分を、“車いすだったらどんなことできるんだろうな”って考えて、いろんなことにチャレンジしてみたいっていうふうに思ったんです。車いすだから諦める、じゃないというか。お父さんにも悲しい思いをさせたくないから、こんなこともできています、あんなこともできていますよ、私は充実していますっていうのを見せるためには、そういう行動をしないと結果はついてこないから。そういうふうに行動するためには、やっぱりネガティブではいられないから。車いすになっても別に平気だと思える人生を自分で作っていますね」

ボルダリングで壁を上っているどてさん
(SNSなどで“車いすでもできる”をモットーに発信を続けているどてさん)

VR空間で“エイリアン”になってみて気づいたこと―

プロジェクトエイリアン番組の様子

今回番組では、現実社会では交わり合わない4人が外見や素性を伏せて、エイリアンのアバターに身を包みVR上で一緒に月面旅行をしてもらいました。先入観なしの交流はどてさんにとって新鮮ながらも、大変なことでもありました。

どてさん

「参加したいと思った理由としては、もし参加者でネガティブだったり引きこもりがちのタイプの方がいるのであれば、なぜそういう心になってしまったのか、そこから変わりたいと思っているのか、そうであることが自分にとって幸せなのかを知りたいなって思いました。私とは考え方が違う人たちと会話することで、自分の中でどんな思いになるか、どんなことを考えるか、興味がありました。でも、1回目の収録は自分のまわりにいない人と長時間しゃべるので、疲れたというのと、言葉に気を使いながら話している自分がいたんですよね。ふだんは人の顔を見ながら視線や表情、仕草で話し方を考えていることにはじめて気づきました。なのでかなり苦労しましたね。でも、最後までお付き合いしないと分からない部分があるなと。みなさんが何者かわかったら、そこからもっと深い話ができたらいいなって感じました」

お互いが何者か全くわからないコミュニケーションは疲れるし消化不良だったと正直に語るどてさん。しかし、相手が何者かわかった後、いろいろと発見があったと言います。

月面で話す4人のアバターたち
どてさん

「何者かわからないときは、こんな人かな?とか勝手に想像しながら話していたのですが、自分が予想していた属性とは全く違った人であることに気づいて…。その人の声や話し方で勝手にイメージを決めつけていた自分がいたことに気づきました。だから、先入観でしゃべってしまい、すみませんって思いました…。ただ、みんなが何者かわかったことで、表面上だけの会話じゃなくて、それぞれの属性についてより深く話せるなとも思いました」

どてさんにとって、特に気づきとなったのは、参加者の1人マヤさん(34歳)の存在でした。

マヤさんとそのアバター

引きこもる生活が続き、SNSが自分の居場所となっていたマヤさん。どてさんは当初、自分とは真逆の性格で苦手なタイプだと感じていましたが、“誰にも選ばれてこなかった人生”というマヤさんの言葉を聞きながら、自分に何ができるかを考えるようになりました。

どてさん

「マヤさんの“自分を選んでもらった経験がない”って言葉を聞いて、VR空間は誰かに打ち明けやすい、悩みを話しやすい空間なのかもって思いました。あと私の中ですごく心に残ったのは、最後のほうでマヤさんが話した“一期一会もありなんだな”って話。自分のSNSにもDMで悩みの相談がたまにくるんですけど、素性を隠しながら自分のプライベートなことを言える空間って現実社会にはそんなにないじゃないですか。そういう人にとって大事なのかもしれないなって気づいて。酔って入ったバーのマスターに愚痴を語るような空間の必要性というか、自分がマスターになって愚痴だけを聞く空間っていうか。マヤさんのような人にとってそういう空間って大事なのかもしれないって思って。今回番組に参加して、今までの自分では気付かされなかったことに気づいたなって思いましたね。そうした空間を私が作れないかなと思って、早速知り合いのアプリの開発者に相談し始めました(笑)」

カメラを抱えるどてさん

他者との交流のハードルを下げ、さらには距離感を縮めることも可能なVR空間。「VR×社会課題」プロジェクトでは、今後もVRの有効活用法を模索していきたいと思います。

プロジェクトエイリアン “分断”が進む社会をVR×エイリアンアバターで解決!? 全く新しいドキュメンタリー番組!

2023年3月23日(木)午後10:45~11:30(NHK総合)
👆 放送から1週間 NHKプラスで見逃し配信

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みんなのコメント(3件)

感想
鯛焼き
60代 男性
2023年3月25日
「どて」さんの、議論をリードする前向きで明るいご発言を聞いたあとの、ご自身が何者かのお話が、すぐには結びつきませんでした。私自身が同様の事故で車椅子生活になったら、自分を鼓舞し前向きに生きていけるか、考えされられました。車いすだったらどんなことできるんだろうなというチャレンジ、凄いです。
「どて」さんが私の職場にいてくれたら、職場の雰囲気が一気に明るく活気が出て、大きな戦力となるだろうなと想像し元気を頂きました。ありがとうございました。
感想
ロード
2023年3月23日
どてさんの参加動機が、自分の周りにいない人を知りたいって言う動機を見て
人間が好きな人なんだなと感じました。
 スパイスのあるコメントも、時には必要であるし色んな意見を言えることの大事さと自分はどうなのかなって振り返るきっかけになりました。
体験談
まは
50代 女性
2023年3月23日
はじめまして。
思うコトは同じなんですよね。
今 お悩みのかた、タイヘン!疲れた!しにそう!とか口癖のヒトもいますが…
まじ辛いときは
なんとかなるさ?!!
と、とりあえず、つぶやく、または叫ぶ。そして睡眠確保。
ただし、ナントカナルが口癖の方は振り返って いつもより良いと思うコトをしてみてほしいです(周りに被害出てますから)。

ヒモ自称さん、その関係は確信であればそれもありなのかな?とおもいましたか、本人サンがそうでないようならば 本人サン次第としか言えませんw
事実婚、現在は主夫と30年越えました。そんなもんです。