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生理についてどう学んだ?女性器をなんて呼ぶ?

あなたは生理や性器について、誰から、どう学びましたか?

NHK「シチズンラボ」では2021年12月~2022年8月の8か月間にわたってジェンダー・性教育の専門家とアンケート調査を行いました。

10歳から69歳までの男女1,201人より寄せられた回答から、家庭や学校で、生理や女性の性器の話題がタブー視されている実態が見えてきました。調査の詳しい分析については「生理リサーチ1 結果報告」をご覧ください。

(「シチズンラボ」ディレクター 柿沼 緑)

「生理」について、誰から、何を教わった?

アンケート調査で「生理というものがあることを最初に教わったのは、誰からでしたか?」という質問に対し、15歳以上の男女の回答者1,143人のうち、最も多かったのは「学校の先生や保健室の先生」で半数近く(49%)、続いて「母親」(31%)、「絵本、本、雑誌、教科書、パンフレット、インターネットなど」(7%)でした。家庭では生理の話がしづらい様子がうかがえます。

(回答者15歳以上 1,143人)

また、教わった内容も決して十分ではなかったことがデータからうかがえます。
小学校の授業で教わった内容について、「生理では血が出てくること」を教わったという人は回答者の8割近く(78%)に上りましたが、「生理の血はオシッコともウンチとも違う出口から出てくること」を教わったという人は4割近く(37%)にとどまりました。

(回答者15歳以上 1,143人)

学校で「生理」について教わった内容だけでは理解が十分に進まなかったという声も調査に多く寄せられました。

「小学校で教わったときは、(生理を)身近なものとして捉えておらずイメージがあまり湧かなかったので、初めて生理がきたときに血が出てきて とても驚いたのを覚えています」(10代・女性)

「私は6年生のときPMSがひどく、吐き気がしたり泣いてしまったりといったことがあったのですが、学校で教わっていなかったので初めてのときは病気かもと思いすごく怖かったです」(10代女性)

「小6の時に生理がきたが、ナプキンの使い方は知らなかった。親はそろそろ来るだろうと思っていたようだったが、ナプキンの付け方を習った記憶はない。実際に来たとき とても不安だった。少なくともどう対処するべきかは教えておいてほしかった」(20代・女性)

「小学生では生理のことは男子に教えていなかったと思う。中学生では性教育は男女一緒だったが、生理についてはそういう現象があるということだけで、女性がどう対処しているのかや心身の影響などは教えてもらわなかった」(30代・男性)

「産道・膣(ちつ)」について、誰から教わった?

(回答者15歳以上 1,143人)

続いて「女性の体には『赤ちゃんが生まれてくる通り道(産道・膣)』があることを最初に教わったのは誰からでしたか?」と尋ねたところ、「生理」についての質問と同じように、回答者の半数近くが「学校の先生や保健の先生から教わった」と答えました。しかし、次いで多かったのが「絵本、本、雑誌、教科書、パンフレット、インターネットなど」(17%)、続いて「母親から教わった」(12%)、「誰も教えてくれなかった」(9%)でした。

生理と比べて「母親から教わった」という割合が低く、「父親から教わった」と答えた人はひとりもいませんでした。「産道・膣(ちつ)」について、家庭でより話しづらいのではと推察されます。

生理について初めて学んだときに産道・膣(ちつ)についてはまだ知らなかったために、よく理解できなかったり、誤解をしたり、不安になったという声もありました。

「赤ちゃんがおまたから出てくることは知っていたけどそれが膣(ちつ)だとは思っていなかった。おまたのところにオシッコとうんちが出てくる穴が二つあるのは知っていたけど、生理の血も赤ちゃんもオシッコの穴から出てくると思っていた。だから自分に3つ目の穴があるのに気づいたときは病気かと思った。膣(ちつ)があることをはっきりと教えてほしかったなと思う」(20代・女性)

「ベタに母に『赤ちゃんってどこから出てくるの』と聞いたとき、『おなかの穴が拡がってそこから出てくるんだよ』的な教えられ方をされましたが、『おなかの穴』=『へそ』かと思って『ここが開いて広がるの?!』と勘違いして驚いた。時を経て、本か何かで女性器、男性器の存在を知り、あれってそういう意味だったのかとようやく納得がいった」(30代・女性)

「(教わったときに)恥ずかしいこと、いやらしいこと、触れてはいけないこと、子どもは知らなくて良いこと、という扱いがされたことが悪かったと思う」(50代・女性)

「そもそも詳細に教わった記憶がありません。子宮の存在を聞いた程度だと思います。友人との話の中で膣(ちつ) についての知識を得ましたが、それまでは肛門と共通だと思っていたくらいです」(30代・男性)

東海大学教授 小貫大輔さん

調査を一緒に行ったジェンダー・性教育が専門の小貫大輔さん(東海大学教授)はこの結果から、まず家庭での性教育が十分でなかった可能性があると指摘します。

東海大学 小貫大輔教授 

もし子どもが赤ちゃんの通り道(産道)のことを知らなかったら、突然 体の断面図を見せられても、理解できないことがあるのは当然だと思います。自分がお母さんのおなかの中で育ったということ、そして、どうやって生まれてきたかということを、小さいときから家庭で話してあげるのが理想だと思います。

もちろん帝王切開だった場合もあるでしょうが、それには理由があったこと、もし帝王切開でなかったら、お母さんのおなかから出てくるときに通ることになっていた道があることを話してあげたらいいのです。

「赤ちゃんはどこから来たの?」というのは、幼児がよくする世界共通の質問だと言われますが、日本の家庭では、そういう話を親子でするタイミングを逸しているのではないでしょうか。

女性器 家庭で使いやすい呼び名がない!?

「あなたが子どものときに育った家庭では、女性の性器を何と呼んでいましたか?」という質問に対し、15歳~69歳の回答者1143人の6割近く(58%)は「家庭で使う女性器の名前はなかった」と答えました。

「おまた・また」「おまんこ・まんこ」「おちょんちょん・ちょんちょん」など何かしらの名前で呼んでいた人は32%と3人に1人程度(32%)、「おぼえていない」「答えたくない」が1割(10%)でした。

Q 女性器には、家庭で使いやすい呼び名がないということでしょうか?

東海大学 小貫大輔教授

日本では、男の子の性器には「おちんちん」のような全国共通の呼び名があるのに、女の子の性器にはそういう共通の呼び名がありません。私は30年ほど前から保護者向けに性教育のワークショップをたくさん開いてきましたが、家庭で使う女性器の呼び名があったとしてもまちまちで、誰もが納得する名前がないのを感じてきました。「おまんこ」、「おチョンチョン」などいくつか上がりますが、どれも大きな声では言えない言葉と思われています。

ある小学生の女の子が、学校で机の角に性器のあたりをぶつけたときに、「おまんこをぶつけた」と家庭で使っている呼び名で痛みを訴えたら、「そんな言葉は使うものじゃない」と先生に怒られたそうです。

Q 女性器に名前をつけていない家庭では、子どもに性器の衛生についてどう教えているのでしょうか?

東海大学 小貫大輔教授

小さな女の子にも、性器の衛生について教えてあげないといけないですよね。そんなときは「あそこ」とか「下」、「前」あるいは「おしり」などの表現を使って説明することがあるようです。「あそこ(下、前、おしり)をきちんと洗いなさい」といった具合です。

「『おしり』というと、『お尻』と勘違いされませんか?」と、ワークショップの際にあるお母さんに聞いたら、「そういうときは『前のお尻』と言うと思う」と答えました。お尻が前にも後にもあるイメージのおかしさに本人もハッとしたようで、その様子をみて会場もどっと沸きかえりました。

男女の体の違いを、おちんちんがあるのが男の子で、おちんちんがないのが女の子だと説明する家庭もありました。もちろん、解剖学的に正しい表現ではありませんね。

なぜ女性器に共通の呼び名が定着しない?

なぜ「女性器」に共通の呼び名がないのか。そこには“わいせつなもの”として捉えられてきてしまった歴史があると小貫さんはいいます。

東海大学 小貫大輔教授

男の子の性器は外からもよく見えるし目立った性徴です。おしっこをするたびに一日に何回も引っ張り出してくる身近な存在でもあります。おちんちんという言葉自体が「擬態語」とでもいうか、おしっこの残りを飛ばすとき思いっきり上下に振られる様子が伝わってくるような親しみ深い響きがあります。その言葉を与えられて、男として生まれてきた私は本当にありがたかったと思います。おかげで、自分の体の一部を子どものときから堂々と肯定することができたと思うからです。

女の子の性器に名前を与えないということは、その存在そのものを否定することにつながらないでしょうか。男の子の性器には市民権があって、女の子の性器は“不法滞在”だとでもいわんばかりです。

そのことを問題視して新しい言葉を作った教育者がいます。1970年代に性教育専門の出版社を創設してたくさんの絵本や書籍を出版された北沢杏子さん。『アンパンマン』の作者で国民的絵本作家のやなせたかしさんと一緒に絵本『なぜなの ママ?』を作って、「われめさん」という言葉を世に送り出しました。

東海大学 小貫大輔教授

1960年代生まれの私にとって「われめ」はそれなりに耳にしたことのある言葉ですが、エッチ、わいせつな言葉だった記憶があります。せっかく生まれてきた善意の言葉も、またたく間にそんなふうに使用されるようになり、いつの間にか家庭でも使えない言葉になってしまいました。

もともと「おまんこ」や「おめこ」も幼い女の子の性器のことをいう擬態語的なかわいらしい呼び名だったそうです。今日それらの言葉が堂々と使えないのは、女性器を表すすべての言葉が次々とわいせつな言葉に変化していくからです。

Q なぜ女性の性器は「わいせつな言葉」とされてしまうのでしょうか。

東海大学 小貫大輔教授

人間にとって「性」は、とても強い感情をもたらすものです。性の行為に強いプライバシーを必要とするのは人間だけで、そこが他の動物との大きな違いです。だから、性器のことを話すのに羞恥(しゅうち)の感情が生まれるのは、何ら不思議なことではありません。しかし、その羞恥(しゅうち)の感情が利用されて、女性の性が抑圧されているのも事実です。

おそらく本来はおおらかな言葉であった女性器の名前が、次々とわいせつな言葉とされていくことで、男性が、というよりも社会の無意識が、女性の性を抑圧する仕組みとなってきたと思うのです。

女性器の呼び名 「おまた」が増えてきている

前述の「家庭の中で女性の性器に名前があったか」という質問に対し、「名前があった」と答えた人は15歳以上の回答者1,143人の3割余り(32%)いました。その中で一番多かったのは「おまた」ないし「また」で、「名前があった」と答えた人の4割近く(38%)、全体(1,143人)の1割余り(12%)を占めました。

女性器の名前の動向を観察してきた小貫さんも、ここ10年ほどの間に「おまた」が多く使われ始めていると感じています。

Q 「おまた」を使う人は増えてきているのでしょうか?

東海大学 小貫大輔教授

私は大学で「ジェンダーとセクシュアリティ」という授業を毎年100人ほどの学生に教えていますが、「おまた」という言葉を使うという人がだんだん増えてきました。4、5年ほど前から目立って多くなったように感じます。

「股」は男性の体にもあるものなので、女性の性器を「おまた」と呼ぶのはわざとぼやかした表現ではあります。月経のことを(生理現象の一つだからと)「生理」と呼ぶのと同じで、遠回しな表現です。本当は、膣(ちつ)とは違う「股全体」を指していると思っている子どももいることでしょう。

でも、最近 私はそれはそれでいいのかなと思うようになってきました。言葉がないよりも、みんなが使える言葉が生まれることはいいことに違いありません。あと10年もすれば、この言葉が全国の家庭で使われる共通語になっているのかもしれません。

海外でも、女性の性器にはいろいろな呼び名が

女の子の性器を示す全国共通語がないのは、実は日本特有の現象ではないそうです。

Q 男性器に共通の呼び名があるのに女性器にはないという国は海外にもありますか?

東海大学 小貫大輔教授

私が長く住んだブラジルでも、男性の性器には全国共通の「ピント(ひよこ)」という言葉がありますが、女性の性器はいろいろな名前で呼ばれていました。ある家庭では母親が娘たちと話すときに「ペレレッカ(雨蛙)」という言葉を使っていましたが、ある家庭では「ピリキット(インコ)」と呼んでいたり。定番といえるような言葉はないのでしょう。

性に関して比較的に開かれた文化をもつオランダやスウェーデンですら似たような状況があります。2001年にオランダで15歳の若者の性の知識と意識について調査したのですが、おちんちんには「ピーメルチェ (piemeltje)」という誰もが使う言葉があるのに対し、女の子の性器を指す名前には共通語がありませんでした。今でも人それぞれにいろんな言葉を使っていて、なかには「おしり」と同じ意味の言葉を使う家庭もあるそうです。日本と同じですね。

女の子の性器を指す名前には、多くの国でこれといった共通語がないようです。

Q 女性器の呼び名が定着している国はありますか?

東海大学 小貫大輔教授

スウェーデンがおもしろい例で、20年ほど前から子どもたちにも親しみやすい言葉が広がり定着しているそうです。

スウェーデンも以前は日本と同じで、男の子の性器には「スノップ(snopp)」という共通語があったのですが、女の子には汚い言葉か、遠回しの表現か、医学用語しかなかった。でも、2000年代になってから1人のソーシャルワーカーが「スニッパ(snippa)」という言葉を広めたそうです。

妊娠中だったその女性は「もし生まれてくる赤ちゃんが女の子だったら、その子の性器を呼ぶための名前がなくては」と考え、あちこちの保育園にこの言葉を紹介したそうです。そしてとうとう2006年からは、スウェーデンの辞書にも掲載されるようになったとのことです。

女性の性や性器の呼び名を取材して…

今回の調査で、「生理」や「産道」など女性の体や性について女性も男性も性別をこえて、十分な理解がないこと、そして全国の家庭で共通語と言えるような「女性器」の呼称がないことが分かりました。

「初潮を迎えたときに、経血がどこから出るか知らなかった」という人が約半数もいましたが、女性の性器を話題にすることがタブーになっていることが理由なのかもしれません。スウェーデンのように親子で親しみを持って使えるような共通語が広がって、家庭や学校でこのタブーが解かれていくことが子どもの健やかな成長につながると感じました。

また、小貫さんの「女の子の性器に名前を与えないということは、その存在そのものを否定することにつながらないでしょうか」という言葉が印象に残りました。さらに次のようにも語ってくださいました。

「女性器の名前なんて、たわいないことと思われるかもしれません。でも、それに名前を与えることから性教育は始まります。『性教育はゼロ歳から』と言われるのは、そういう簡単なことから始めようという意味です。性教育が目指す大きな目標の一つは、性への抑圧を見直すことなのです」

ひとりひとりの体と心のみならず、人権を守ることにつながる性教育。これからも、さまざまな視点で取材を掘り下げていきたいと思います。

【関連番組の放送予定】
4月2日(日)午前7時台
おはよう日本「シチズンラボ『生理教育』」

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みんなのコメント(4件)

感想
マリ
30代 女性
2024年2月21日
女性器の呼び方ですが、複雑に考えないで普通に「おまんこ」でいいんじゃないですか。私自身も小さい頃からそうでしたし、我が家では娘も普通に使っています。
悩み
ハナ
2023年5月17日
友達に生理のことを聞かれたとき、なんて答えたらよいかわからない。
悩み
ナナ
19歳以下 女性
2023年4月8日
私は小学4年生ですだけど生理がこないので心配しています
感想
なんでちゃん
40代 女性
2023年3月25日
男性器にはチンチンという親しみを込めた共通の呼び名があるのに、女性器にはなく、卑わいなイメージに変わり、定着しないという指摘が大変面白かった。
日本にも女性器の呼び名が定着するといいなと思った。