2018.6.18

ペスト

リウー。なんてかっこいいのでしょう!高橋昴也さんのアニメーションでますます素敵に見えます。ひたむきにペストと闘い、患者を救おうとする医師のリウーの姿に、心を打たれた方も多いのではないでしょうか。
「不条理」とは、理屈の通らないこと、現実にはありえないことを意味すると思っていましたが、考えてみると私たちの周りには、突然の事故や自然災害など、「なぜ」といくら問うてみても答えのない、不条理な出来事があふれています。不条理に直面した時、どのように行動するのか。目を背ける人。絶望する人。自暴自棄になる人。その中でリウーは、自分にできることを見極め、真摯に取り組み続けます。
小役人のグランもその姿勢は同じです。ヒーロー的な要素はどこにも見当たらない、凡庸な人物として描かれているグランですが、「グランこそが聖人なんですよ」と、第4回にご出演くださった内田樹さんが収録後におっしゃっていたのが印象的でした。はじめからグランに注目していた伊集院さん、さすがです。

実存主義というのは神の存在も否定し、カミュによれば、そもそも人間は追放状態にあると言う認識だそうです。なんてネガティブ!でも実は続きがあって、「世の中や人生は思い通りにならないものだが、だからといって闘いをやめる理由にはならない」ということなのだとか。悲観的だけどあきらめない、というスタンスがあるのですね。
「ペストとは君にとって何だ?」という問いに対して、リウーは「果てしなき敗北」とこたえています。それでも、あきらめて治療を放棄するようなことはせず、ギリギリまで闘うことを選ぶのです。
リウーとスケールは違いますが、私も仕事で敗北感を感じることがあります。悲しいことに、結構頻繁にあります。
そんな時は、20年もこの仕事をしているのに何やっているんだろう、と情けなさでいっぱいになります。それでも、自分にできることを精一杯続けることが、未来を拓く道なのではないかと、励まされる気がしました。
日本にはカミュのファンが多いのだそうです。宗教に解決を求めないところも、その理由のひとつかもしれません。中条さんと内田さんも、「読む度に発見があるんです!」と、カミュへの愛があふれていました。私のように「リウー萌え」の新参者も、フランス語を操る文学や哲学の専門家も同時に夢中になれる、また、作品全体に感動すると同時に、作品の中の一文、一語に胸を揺さぶられる。こうしたところからも、カミュとこの作品の偉大さを感じずにはいられませんでした。



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