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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第66回】
今回、スポットを当てるのは、
山中澪/川口恵里(ブリュッケ)

プロフィール

写真右-演出:山中澪
愛媛県生まれ。神戸大学発達科学部人間表現学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。アニメーション関係で活動中。

写真左-イラスト:川口恵里(ブリュッケ)
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。

山中澪さんに「共同幻想論」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回の制作は新型コロナウィルスの影響で開始が遅れ、本の内容について考える時間がいつもより長いというある意味ラッキーな事態になりました。読んで考え、作っている間にも日本や世界で大きな社会の動きがいくつもありました。その中で怒ったり焦ったりしながら、私のこの気持ちは吉本さんの言葉だとどのように語られ得るのだろうか、と考えながらの数カ月でした。番組のクレジットの「アニメーション制作」には私の名前を出していただいていますが、完成したアニメーションとして眼にうつる絵は「イラスト」担当の川口さんが描いています。まず私が映像の流れとその簡単な構図を川口さんにお伝えし、川口さんがその指示に沿って絵を仕上げてくださいます。そのいくつものパーツに分かれた絵を私が受け取って、映像として繋げていきます。
指示は時代に沿った参考資料をつけたものだったり、キャラクターの位置や向きだけ指定したものだったり、場面によって様々です。この指示に対して川口さんはどのような絵を仕上げてくださるだろうか、と待つのは楽しい時間になります。
今回むつかしく、そして楽しかったのは第四回でとりあげられる「遠野物語拾遺」の夢の場面でした。
ここで登場する「輪になった橋」がどのようなものかが私たちの頭を悩ませました。「共同幻想論」での引用は省略されたバージョンだったので「遠野物語拾遺」の本文を確認すると、「その川には輪形の橋が架かっているが、見たところそれは透明でもなく、また金や銀でできているのでもない」と橋についてやや長い説明があります。そこで「わざわざ透明でも金や銀でもないと言うならそうであったかもしれないほど幻想的な光景がいいのでは?」と考え「ファンタジックに、現実離れしていて、例えば空がピンクや薄紫などでもいいかもしれない」というようなことを川口さんにお伝えしました。
その他にもいくつかのやりとりを経て仕上がったのが、あの夢の場面です。シンプルな絵柄ながら不思議な夢の空間を作り上げられたのではと思っているのですが、いかがでしょうか?

川口恵里さんに「共同幻想論」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回一番印象に残っているのは、第二回にあった「集団婚」のカットです。
「集団婚」とは、男女が互いに全員を所有しあう婚姻形態で、そこには近親相姦という概念はなく、親子や兄弟でも性交が行われるとのこと。この説明をアニメーションで、どのように表現していくんだろうと思っていたところ、演出の山中さんから 複数の男女のペアが草むらに消えゆくというアイデアを聞いて、その表現がとても素敵だったので、楽しく描くことができました。
それ以外では、複数取り上げられた「遠野物語」のエピソードの内、「鳥御前」の回がお気に入りです。鷹匠は物語の主人公的な位置付けだと思うのですが、文章上の鷹匠の身なりや性格に関する描写は少なく、そもそも このエピソードには、主人公像を作り上げることが重要視されていないんだろうと思い そのニュアンスを大切にしながら鷹匠を描きました。

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