もどる→

アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第55回】
今回、スポットを当てるのは、
高橋昴也

プロフィール

高橋昂也 1985年 愛知県生まれ。
東京藝術大学大学院デザイン科修了。
アニメーション作家・イラストレーター。フリーランス。
テレビ、博物館、ゲームなどの分野で活動する傍ら、自主作品の制作も行なう。

高橋昴也さんに「小松左京スペシャル」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

小松左京スペシャル、後半の2作は未来を舞台にしたディープなSFの世界に突入します。
誰も見たことのないイマジネーションの世界が次々と展開されるので、アニメの作り甲斐がありました。

「ゴルディアスの結び目」は、人間の精神世界を探索するシーンが主軸なのですが、本文がとにかくグロテスクで、絵にすることを躊躇する程でした。
プロデューサー、ディレクターの皆様から、遠慮なくやっちゃってと要望をいただいた時は、改めて番組の熱意を感じました。
初見の方にも理解できるようにアレンジを加えた部分もあるのですが、小説のムードは最大限尊重して、わりと攻めたホラー調のアニメが作れたのではないかと思います。

「虚無回廊」はハードSF小説とはこういうことか、と気づかされた一作でした。
作品内の空想の産物のすべてに与えられた科学的根拠が淡々と語られて、「これはあり得る話だ」と好奇心が掻き立てられました。
物語のほとんどが姿のないコンピューター・プログラムの目線で語られるのも小説的な醍醐味に溢れていて、映像化する空しさを受け入れたうえで、自分の読後感を大事にしながらアニメを作っていきました。

また、小松左京といえば僕が尊敬するイラストレーターの生頼範義氏が多くのカバーを描いているので、どこかでオマージュを捧げたい気持ちがありました。
「虚無回廊」の終盤で、主人公が記憶の中の亀と同調するような描写があるのですが、ここにあてるアニメを、単行本の表紙絵の印象に近づけることで、物語を象徴的に締めくくることができるのではないかと思いました。

ページ先頭へ
Topへ