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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第45回】
今回、スポットを当てるのは、
ケシュ♯203

プロフィール

ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)
仲井陽(1979年、石川県生まれ)と仲井希代子(1982年、東京都生まれ)による映像制作ユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。
NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。
手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出を得意とする。100分de名著のアニメを番組立ち上げより担当。
仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。
またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。
オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに「赤毛のアン」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

「赤毛のアン」は日本でも有名な作品です。ファンも多く、数々のドラマや映画、高畑勲さんのアニメなどですでにイメージが定着していることもあり、キャラクター制作には特に気を配りました。
意識したのはなるべく原作に忠実なことと、瞳の表現です。私たちのアニメは、浄瑠璃のように人型を作り、各部位を動かすといった手法で制作しているのですが、顔はあまり動かせないため、喜怒哀楽の激しさや優しい眼差しなど、表情のニュアンスが瞳の表現ひとつで変わってしまうのです。

そしてこの人形遣いのような手法だと動きのバリエーションも限られてしまうのですが、赤毛のアンはヒューマンドラマなので登場人物の心情に寄り添えないといけません。心に染み入るシーンに相応しい演技でなければ作品世界から一歩引かれてしまいます。そこで、なるべく人物に共感できるように、人間らしい細やかな仕草や表情にこだわり、時間をかけて複雑な動作を演技の中に組み込みました。
さらに、演出を考えるうえで一番重要なポイントがアンの視点でした。アンの感受性豊かな眼差しが、他の人とは違うハッとするような言動につながるので、そのアンの目から見た景色をアニメならではの比喩表現で表すことが一つのテーマでした。

また背景に広がるアヴォンリーの豊かな自然も物語を支える重要な要素です。平面的なアニメで四季折々の奥深さをどう表現するかが課題でしたが、花びら一枚一枚、葉っぱ一枚一枚を、立体的に組み合わせてゆくことで、ディティールを伴った世界が立ちあがった気がします。

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