もどる→

アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第44回】
今回、スポットを当てるのは、
奥田昌輝

プロフィール

1985年神奈川県横浜市生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修士課程修了。
多摩美術大学在学中にアニメーション制作を始め、東京藝術大学在学中に制作した「くちゃお」がアニマドリード(スペイン)の学生部門グランプリ、 ファントーシュ(スイス)のNew Talentを受賞した他、ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に入選するなど、国内外の映画祭での受賞・上映多数。
これまでにMVやライブ演出映像、CM、ドラマのタイトルバッグや教育番組のアニメーション等を手掛けている。

奥田昌輝さんに「薔薇の名前」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」のアニメーション映像を制作させていただきました。
既に映画化もされていて、映画を見たことがある方も多いのではないかと思います。
番組では、この映画の映像も使われているので、映画のイメージから離れ過ぎず、尚かつ、自分なりに新しいイメージを加えられればと思い、考えていきました。

作品の舞台は、中世ヨーロッパの雪の残る殺伐とした山の上に建つ修道院。
冷たい石の壁、灰色の空を覆う分厚い雲、閉鎖的な修道院の雰囲気等、重苦しい空気が作品世界のベースとなっています。
普段、どちらかというと明るい色彩で平面的な絵作りをした作品を作っているのですが、今回はそれとは正反対な要素が多く、どう自分の作風に落とし込んでいくかというところで、試行錯誤を重ねました。

映画では、全体的に画面の色味が抑えられており、暗い重厚な画になっています。
作品全体を通して、そういった重苦しい空気が漂っているのですが、一方で所々にユーモアのある描写もみられました。
そこで、必ずしも重厚にし過ぎる必要もないのではないかと思い、少しポップささえも感じられるような絵の世界観を作っていきました。
そうすることで、この作品のユーモアの部分にも注目してもらえたら嬉しいです。

今回の映像化にあたって特にこだわった部分は、
修道院内部の暗闇や夜の修道院など、暗い場所を多く描いているのですが、それらの場所を照らす光です。
夜の月の光、修道院のロウソクの炎、暗闇を照らすランタンの光、修道院を覆う炎等がありますが、この作品では、光が重要な意味を持っているのではないかと思ったからです。
光は暗闇を照らし出しますが、この作品においては、「暗闇」=「修道院で起こる事件の謎」であり、仄かな光で照らすことで少しずつ謎を明らかにしていくというイメージを重ねています。
それから、アニメーションという表現を使っているので、アニメーションでしか描けないような画面作りを心掛けました。
例えば、修道院の図書館内部の迷宮のような空間をウィリアムとアドソが彷徨うカットでは、様々な部屋とそれらを繋ぐ階段や通路が入り組んだ画面になっているのですが、奥の部屋に二人が入っていくと、今度は手前の部屋から出てきたりと、入り組んだ迷宮で彷徨う様子を誇張して描いています。

「薔薇の名前」は難解だと言われていますが、原作を読んだ方も読んでいない方も、このアニメーションが物語の世界に入り込む助けになれば嬉しく思います。

ページ先頭へ
Topへ