おもわく。
おもわく。

聖徳太子によって日本で初めて解説された仏典の一つ「維摩経」。興福寺にある「維摩居士」の坐像は、今も多くの人たちに親しまれています。かの文豪・武者小路実篤も「維摩経を読んで偉大な知己に逢ったような気がした」と述べるなど、日本人に親しまれてきた経典です。しかし、現代人には、意外にその内容は知られていません。「100分de名著」では、この「維摩経」から一宗教書にはとどまらない普遍的なテーマを読み解き、私たちにも通じるメッセージを引き出していきます。

「維摩経」が成立したのは西暦紀元前後の頃。インドでは部派仏教と呼ばれる教団が栄え、出家者を中心にした厳しい修行や哲学的な思索が中心になっていた時代でした。仏教が庶民の暮らしから少し遠い存在になる中、リベラルな在家仏教者たちが一大仏教変革ムーブメントを巻き起こしました。自分自身の救いよりも、広く人々を救済しようという「大乗仏教」の運動です。「維摩経」はこうした流れの中で生まれた経典なのです。

主人公は釈迦でも仏弟子でもありません。毘耶離という都市に住む一市民、維摩居士です。この維摩がある時病気になりました。釈迦が弟子たちに見舞いに行くようにすすめますが、誰一人としてそれにこたえるものはいません。かつて維摩の鋭い舌鋒でことごとく論破された経験から、みんな腰がひけているのです。唯一人、見舞いに行くことを引き受けた文殊菩薩が維摩の元を訪れ、前代未聞の対論が始まります。その対論からは、「縁起」「空」「利他」といった大乗仏教ならではの概念が、単なる観念の遊戯ではなく、日々の暮らしの中の「実践」の問題として浮かびあがってきます。

「理想の生き方は、世俗社会で生きながらもそれに執着しないこと」「すべては関係性によって成立しており、実体はない」「だからこそ自らの修行の完成ばかりを目指さず、社会性や他者性を重視せよ」。維摩の主張には、既存仏教の枠組みさえ解体しかねない破壊力があります。それどころか、現代人の私たちがつい陥りがちな「役に立つ・役に立たない」「損・得」「敵・味方」「仕事・遊び」「公的・私的」のように、全てを二項対立で考えてしまう思考法をことごとく粉砕します。その結果、全てを引き受け苦悩の世の中を生き抜く覚悟へと私たちを導いてくれるのです。宗教学者の釈徹宗さんは、「維摩経」の最大の魅力は、「全編にわたって、いったん構築したものを解体し、また再構築する、そんなめくるめくドライブ感」だといいます。そして、その手順を踏めば、どんな時、どんな場所でも、生き抜いていける力をもらうことができるというのです。

排外主義が横行し分断されつつある社会、世界各地で頻発するテロ、拡大し続ける格差……なすすべもない苦悩に直面せざるを得ない現代、「維摩経」を現代的な視点から読み解きながら、「こだわりや執着を手放した真に自由な生き方」「矛盾を矛盾のまま引き受けるしなやかさ」「自分の都合に左右されない他者や社会との関わり方」などを学んでいきます。

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第1回 仏教思想の一大転換

【放送時間】
2017年6月5日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年6月7日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年6月7日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
釈徹宗(如来寺住職・相愛大学教授)
…著書「なりきる すてる ととのえる」「お世話され上手」で知られる宗教学者・僧侶
【朗読】
哲夫(お笑いコンビ「笑い飯」)

出家者を中心に形骸化・硬直化が進んでいた紀元前後のインド仏教界。そこに風穴を開けようと、リベラルな在家仏教者が起こしたのが「大乗仏教」のムーブメントだ。「維摩経」の主人公・維摩居士は、それを体現するような人物。都市に住む一市民で、俗世間の汚れの中にありながらも決してその汚れにそまらない。そんな徳の高い維摩があるとき病気になる。その病気は、実は人々を導くための方便だというのだ。そこには、自分より他人を先とし、この世に苦しむ人が一人でもいる間はその汚れた世界にとどまり続け、自分だけが悟りの境地を目指さないという菩薩の生き方が象徴的に示されている。第一回は、「維摩経」が成立した背景や維摩の人物像を紹介しながら、既存の仏教体系を大きく揺るがした大乗仏教の基本構造を学んでいく。

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第2回 「得意分野」こそ疑え

【放送時間】
2017年6月12日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年6月14日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年6月14日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
釈徹宗(如来寺住職・相愛大学教授)
…著書「なりきる すてる ととのえる」「お世話され上手」で知られる宗教学者・僧侶
【朗読】
哲夫(お笑いコンビ「笑い飯」)

病気になった維摩を見舞うようにすすめる釈迦だが、誰一人それにこたえる弟子はいない。それもそのはず、維摩は、かつて釈迦の十大弟子全員をその鋭い舌鋒でことごとく論破していたのである。その論点を一つ一つ紐解いていくと、大乗仏教に解かれた重要な教えの数々が明らかになる。浮かび上がってくるのは、「自己分析」と「他者観察」という大乗仏教ならではの二つの手立て。この二つをしっかりやりきり、点検を続けていけば、人は決して独りよがりな偏りには陥らないのだ。第二回は、維摩と釈迦十大弟子や菩薩たちとの議論を通して、「得意分野」にこそ自分の弱点が潜んでいることや、自分との向き合い方の極意を学んでいく。

名著、げすとこらむ。指南役:釈 徹宗 〇〇〇
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第3回 縁起の実践・空の実践

【放送時間】
2017年6月19日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年6月21日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年6月21日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
釈徹宗(如来寺住職・相愛大学教授)
…著書「なりきる すてる ととのえる」「お世話され上手」で知られる宗教学者・僧侶
【朗読】
哲夫(お笑いコンビ「笑い飯」)

唯一人、維摩のお見舞いを引き受けた、随一の智慧をもつ文殊菩薩。見舞い先の邸宅で、いよいよ維摩と文殊菩薩との本格的な対論が始まる。そこから浮かび上がるのは、「すべては関係性によって成立しており、実体はない」という空の思想。「だからこそ自らの修行の完成ばかりを目指さず、社会や他者と関わっていけ」という縁起の思想。第三回は、維摩がもたらす予想外の答えや不思議な出来事から、単なる観念の遊戯ではなく、生きるための智慧として示された大乗仏教の精髄を学ぶ。

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第4回 あらゆる枠組みを超えよ!

【放送時間】
2017年6月26日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年6月28日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年6月28日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
釈徹宗(如来寺住職・相愛大学教授)
…著書「なりきる すてる ととのえる」「お世話され上手」で知られる宗教学者・僧侶
【朗読】
哲夫(お笑いコンビ「笑い飯」)

維摩は、数多くの菩薩たちに向けてこういう。「菩薩はどのようにして『不二の法門』に入るのか?」。「不二の法門」とは、相反するものが即一になる世界のこと。菩薩たちはその答えとして、「善と悪」「悟りと迷い」「身体と精神」「自分と他者」「光と闇」といったあらゆる二項対立の概念を語りながら、その構造が解体された世界こそ不二の法門であると述べる。同じ質問を問い返された維摩はどう答えたか? なんと、黙ったまま一言も発しないのだ。「維摩の一黙、雷の如し」と呼ばれたこの沈黙が意味するものとは? 第四回は、既存の枠組みにとらわれず、解体、再構築を繰り返しながら、融通無碍に生き抜く自由なあり方を維摩から学ぶ。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
維摩経 2017年6月
2017年5月25日発売
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