おもわく。
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中国古典の中で、若者からお年寄りまで誰もが知っている名著といえば、多くの人が「三国志」の名を挙げるでしょう。英雄たちが覇を競う歴史エピソードの数々は現代でも人気が高く、小説、漫画、人形劇、映画から、果てはゲームまで、幅広い媒体で親しまれています。しかし実際に、歴史書である「三国志」を通読した人がいるかというと、非常に少ないのではないでしょうか。そこで「100分de名著」では、「三国志」に新たな視点から光を当て、価値観が大きく揺らぎつつある現代とも比較しながら、乱世を生き抜くヒントを読み解きたいと思います。

「三国志」の世界は、後漢(25-220)の終焉から始まります。前漢と合わせて約400年以上も中国を支配した漢王朝は、外戚と宦官の専横によって衰退期を迎えていました。これに乗じて太平道という宗教結社が「黄巾の乱」を起こし、世は大混乱。その鎮圧を巡って各地に群雄が並び立ちます。次の覇権を狙う董卓とそれに対抗する反董卓連合。その生き残りをかけた戦いの中から次代を担うリーダーたちが続々と出現していきました。やがて、魏の曹氏、蜀の劉氏、呉の孫氏という三人の皇帝が同時に立つ、中国史上初めて三つの国家に分裂した時代を迎えるのです。

三つの国の存亡をかけた戦いが展開する「三国志」ですが、曹操、劉備、孫権ら三人のリーダーや彼らを巡る人々が、国や組織の生き残りをかけて知恵をしぼりしのぎを削る姿には、「人間関係の築き方」「人材登用の秘訣」「ライバルを出し抜く戦略」「失敗から学ぶべきこと」等々……今を生き抜く上で貴重なヒントや教訓にあふれています。早稲田大学教授の渡邉義浩さんは、国家、組織、人間の興亡を描ききった「三国志」は、人間学や組織論の宝庫であり、混迷を深める現代社会にこそ読み返されるべき名著だといいます。

広大な大陸を舞台に、スケールの大きなリーダーたちがそれぞれの野望を胸に抱きながら知謀の限りを尽くしてせめぎあう歴史を描いた「三国志」を、現代社会と重ね合わせながら読み解き、厳しい現実を生き抜く知恵を学んでいきます。

 
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第1回 動乱の時代を生き抜く知恵

【放送時間】
2017年5月1日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年5月3日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年5月3日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
渡邉義浩
…早稲田大学文学学術院教授。三国志学会事務局長。著書に「三国志 演義から正史、そして史実へ」など。
【朗読】
北村一輝(俳優)
【陳寿役】
小松利昌(俳優)

人間と組織が一進一退の興亡を繰り返す後漢末の時代。動乱の時代が故に少しでも読みを誤ると没落の運命が待っている。「名士」を重んじたが欲望におぼれ見放されていく董卓。「名士」を軽んじ自ら帝位につこうとして身を滅ぼす袁術。逆に「名士」の意見を聞きすぎて優柔不断で決断できなかった袁紹。いずれも地域社会に支配階層として根をおろす「名士」と呼ばれる知識人たちとの距離のとり方を誤ったが故に没落していく。その中で「名士」を味方につけ、つかず離れずで見事に運用した曹操ただ一人が頭角を現したのだ。この時代の動静を読み解くキーワードが「名士社会」なのである。第一回は、「三国志」の基本構造を学びながら、動乱の時代を生き抜く知恵を「三国志」幕開けの時代から読み解く。

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第2回 曹操 乱世のリーダーの条件

【放送時間】
2017年5月8日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年5月10日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年5月10日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
渡邉義浩
…早稲田大学文学学術院教授。三国志学会事務局長。著書に「三国志 演義から正史、そして史実へ」など。
【朗読】
北村一輝(俳優)
【陳寿役】
小松利昌(俳優)

「乱世の奸雄」と評され、とかく悪役のイメージがある曹操。だが人々に理解されないのは曹操の戦略や政策があまりにも革命的で時代に先駆けすぎていたからだともいわれる。かつての敵を精鋭部隊に育てる「人材登用術」、兵糧の確保のために流人となった農民を活用する「屯田制」、儒教に対抗して新しい文化を育てる「建安文学」のサロン作りなど、時代に先かげたアイデアは、後の律令体制の基礎ともなっていくのだ。その一方で手段を選ばない強引な手法はマイナスに働くことも多い。第二回は、曹操が実行した様々なアイデアの適否を読み解きながら乱世に生き残るリーダーの条件を探る。

名著、げすとこらむ。指南役:三国志 『「伝統」か「確信」か』
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第3回 孫権 「信」がピンチを救う

【放送時間】
2017年5月15日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年5月17日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年5月17日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
渡邉義浩
…早稲田大学文学学術院教授。三国志学会事務局長。著書に「三国志 演義から正史、そして史実へ」など。
【朗読】
北村一輝(俳優)
【陳寿役】
小松利昌(俳優)

弱小集団だった孫氏がなぜ一国を築く君主にまでのぼりつめたのか? 荒らされた漢王朝の陵墓を整備した初代の孫堅、漢王朝をないがしろにしたとして自分を支えてくれた袁術に絶縁状を出す二代目の孫策。孫氏一族は、常に漢王朝を崇敬する信義の人々だった。孫権は一族が築いてきた信義を基礎に多くの「名士」を味方につける。その代表が周瑜。大勢が曹操への降伏に傾く中、只一人主戦論を唱えた周瑜。孫権が信じた周瑜の意見が反対論を押し切り「赤壁の戦い」が始まる。結果は呉の大勝利。曹操の天下統一の野望をくじくのだ。第三回は、孫権の生き方から「信」の大事さを学んでいく。

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第4回  劉備の「仁」、孔明の「智」

【放送時間】
2017年5月22日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】
2017年5月24日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年5月24日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
2017年5月29日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
2017年5月31日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2017年5月31日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります
【指南役】
渡邉義浩
…早稲田大学文学学術院教授。三国志学会事務局長。著書に「三国志 演義から正史、そして史実へ」など。
【朗読】
北村一輝(俳優)
【陳寿役】
小松利昌(俳優)

多くの人に「仁」の人と評価された劉備。その人柄ゆえに多くの味方を作っていくが、それはマイナスに働くこともあった。関羽、張飛との個人的な友誼を優先してしまうが故に離れて行く「名士」たち。天下国家を視座に置くべきなのに、関羽の仇討ちを優先し身を滅ぼしてしまう悲劇。「仁」の人、劉備はときに情に流されてしまう。その弱さを補ったのが軍師・諸葛亮孔明だ。「三顧の礼」で発言権を確保し、重要な場面では主君を諌め、軸をぶらさない。「水魚の交わり」といいながら、劉備とはいい意味での緊張関係を保ち続けたのだ。二人の「仁」と「智」は、ともすると崩れがちな組織のバランスをとる絶妙な働きだった。第四回は、劉備の「仁」、孔明の「智」に、組織が生き残る上で欠かせない人間力を読み解いていく。

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三国志 2017年5月
2017年4月24日発売
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こぼれ話。

リーダーたちの資質を見抜く目を養う

世界各国で、そして日本国内でも、今までの流れが大きく変わるような出来事が頻発しています。リーダーの交代、法改正、制度改革といった現象面に限っても、これまでちょっと考えられなかったようなことが続出している昨今ですね。「三国志」の時代も「乱世」でしたけど、現代という時代もある意味、「乱世」といえるのではないでしょうか? 「ちょうどあの頃が時代に変わり目だったな」と後世の歴史家たちがしみじみ振り返るような分岐点に、今、私たちはいるのではないかと思えることもよくあります。

正史「三国志」を取り上げたいと考えたのは、このような「乱世」に生きる私たちが、危機的な状況の中で、どのように対処していけばよいのかといったヒントを得られるのではないかと考えたからでした。

横山光輝「三国志」、吉川英治「三国志」、NHK人形劇「三国志」等に親しんできた私は、正史「三国志」に描かれている事実に対して加えられる渡邉義浩さんの解説に、驚きどおしでした。「曹操って単なる悪者だと思っていただけど、こんなに才能あふれる人だったの?」「赤壁の戦いって、面白いと思っていた描写はほぼフィクション?」「劉備と諸葛亮ってこんなにもせめぎあっていたの?」等々、数え上げればきりがないほど、今まで抱いていたイメージが覆っていきました。そして、実感したのは、「史実って面白いなあ」ということ。もちろん、そこには作者・陳寿によるバイアスがかかっているにしても、真実ならではの圧倒的な説得力を感じます。

心にしみる部分は数多くあれど、一番印象に残ったのは、リーダーたちの「自らが言った言葉に対する誠実さ」「責任の取り方」「理想に殉じる生き方」。もちろん人によってレベルの差があったり、完璧に遂行されていないケースもあるけど、ここぞというところで発揮されるリーダーたちのふるまいには、その誠実さ故に心を打たれます。彼らは決して「言い逃れ」はしない。過去にやった過ちをごまかさない。責任を他に転嫁しない。そして、自らが信じる理想に対しては決して妥協せず行動していく。清々しいまでに潔いのです。こうしてみてみると、私自身の反省も含めて思うのですが、かつて日本人たちももっていたこういう美質が、今の日本では失われつつあるのではないかということ。情けない限りです。

「三国志」に描かれるリーダーたちの生き様を胸に刻みながら、「本物」と「偽者」を見抜いていく目を養っていきたい。そして、何よりも、「不正」や「ごまかし」に対しては、自分自身に誠実であれるよう、堂々と言葉を発し、行動していきたい。そう願ってやみません。

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