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もっと「日本の面影」もっと「日本の面影」

今回のキー・フレーズ

「人間は、知識よりも幻想に頼る存在なのだ」

(「『日本の面影』はじめに」より)

この言葉自体は、レッキーという人物の文章から小泉八雲が引用したものですが、八雲の人間観を象徴するような言葉といってよいかもしれません。

科学的思考、合理的思考がどんなに進んでも、私たちは昔話を聞けば癒されるし、ピンチになると思わず何かに祈ってしまったりしますよね。そうすることで、私たちは心を安らかにしている。小泉八雲は、これこそが「人間の本質」だと考えていたようです。

この言葉の後には、次のような文章が続きます。

「思索する上で、たいがい批判的で破壊的な理性よりも、全体的にみて建設的な想像力の方が、われわれの幸福に貢献するのではないだろうか。人間が本当に困っているときには、気取った哲学理論よりも、粗野な人でも、危険時や困難時に思わず胸に握りしめる粗末なお守りや、貧しい人の家にもご加護を注ぎ、守ってくれる御神像の絵の方が、実際に心を癒してくれるものである」

理性や知識のみに偏重した西欧近代の方法に反発した小泉八雲は、この言葉に従うように、日本の豊かさをすくい上げるのに、理性や知識で分析するような方法をほとんど放棄しています。代わりに、異文化・日本を理解するために八雲がとった方法は、庶民の暮らしに向き合うこと、迷信や伝承、神話に耳をすませることでした。西欧的価値観では非合理的だと切り捨てられてきたものにしっかりと向き合うことで、同時代の日本研究者の誰もが理解できなかった日本の本質に、八雲は近づけたのだと思います。

「幻想」「想像力」「迷信」……合理的な考え方からすると、あやふやで頼りなげにみえるものばかりですが、実はそこにこそ、「人間の本質」が宿っていると看破した小泉八雲。「日本の面影」の文章の中には、今も私たちが学ぶことができる「異文化理解のヒント」がたくさんちりばめられていると思います。

アニメ職人たちの凄技

【第四回目】
今回、スポットを当てるのは、
「qmotri(クモトリ)」& 田山結花

プロフィール

プロフィール
田山結花/イラスト
1984岩手県生まれ。2005バンタンデザイン研究所 イラストレーション本科卒業。書籍、雑誌の挿絵のほかNHK鳥取放送局「√るーと」「√るーとhigh↑2」、NHK Eテレ「スマホ・リアル・ストーリー」のイラストを担当。手描きのタッチを特徴に、和や怖さを織り交ぜたイラストを制作。

夏川憲介(qmotri)/演出・アニメーション 
1975年 北海道生まれ。武蔵野美術大学卒業後、アニメーター、イラストレーターとして活動。NHK Eテレ「みいつけた!/いすのまちのコッシー」立体アニメーション演出他「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」「どきどきこどもふどき」などでアニメーションを担当。

田山結花さんと夏川憲介さん(qmotri)のお二人に、「日本の面影」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

【田山結花】
今回の「日本の面影」では、原画となる背景や人物のイラストを担当しました。全体的にペンで描いていますが、日本が舞台のシーンでは背景を鉛筆で描いています。不気味さを感じてもらえるよう細かく描き込みました。

人物に関して、表情には気をつけて描き進めました。第1回で八雲が横浜の町を駆け抜ける一枚があります。

それまでの八雲の表情は辛い、苦しい、怖い、という重いものばかりでしたのでコントラストが出るよう、より一層嬉しく楽しそうに描きました。ここに動きや効果が加わり、八雲が最大に生き生きしていているシーンになりました。

【夏川憲介】
小泉八雲は16歳の時に失明した左目をとても気にしていてそれ以降の写真は全て右側からか、うつむき加減で撮っているとのことでしたので八雲本人を描く場合は、幼少期以外は 絶対に左側から描かないと決めました。ですので、右向きのみで、映像としておかしくないようにコンテや構図を工夫しました。

映像上のコンセプトとしては「田山さんの絵を活かす」ということがありまして、田山さんの絵をどう動かすか、あるいは動いているように見せるかを考えました。動画全てを田山さんに描いてもらうのは不可能だったので画風を真似て、僕が描いている部分もあります。その中では、第4話に出てくる赤ちゃんの1コマが気に入っています。抱っこしている時に急に伸びをするというのが赤ちゃんらしいのではないかと。この後に続く話はこわいのですが。

ぜひ田山結花さんと夏川憲介さんの凄技にご注目ください!

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