おもわく。

「ファーブル昆虫記」

今月からプロデューサーNの後任で「100分de名著」を担当するプロデューサーAです。今後もたくさんの名著を取り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。

さて、7月にとりあげるのは、粘り強い地道な観察によって昆虫の驚くべき生態を明らかにした「ファーブル昆虫記」。著者は19世紀に南フランスで物理や数学の教師をしていたジャン・アンリ・ファーブルです。皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
子どものころから昆虫が大好きだったファーブルは、55歳の時に昆虫観察に専念することを決意、その後30年の歳月をかけて昆虫記を書き上げました。学校で様々な事情を抱える生徒たちと接してきたファーブルは、昆虫記を難解な論文調にしませんでした。謎に迫る過程を生き生きと記すことで、学ぶ楽しさが読者に伝わるようにしました。それが昆虫記の大きな魅力となっています。
この昆虫記には意外な側面も。原題は「昆虫学的回想録」。昆虫学の本であると同時に、ファーブルの自叙伝にもなっています。ここに書かれたファーブルの人生と照らし合わせながら、昆虫の観察記録を読むと、彼がどんな思いを抱いて研究をしたのか、またどんなメッセージを人々に伝えたかったのかを、はっきりと知ることができます。
もうすぐ夏休み。この番組を通して、もう一度「ファーブル昆虫記」の世界に触れてみませんか?親子で生命のすばらしさをわかりやすく学べるのはもちろん、大人の読み物としても読み応えがあり、知的好奇心をかきたてられます。ぜひご覧ください。


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第1回 命には必ず役割がある

【放送時間】
2014年7月2日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年7月9日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
↑ワールドカップ中継のため放送が休止となりました
2014年7月9日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
奥本大三郎(フランス文学者・作家)

第1巻では、30代のファーブルが生徒とスカラベ(牛糞を食べる甲虫。大きな糞球を転がして運ぶ)を観察した思い出が語られる。しかしなぜファーブルは、糞を食べるような昆虫に愛情を注いだのだろうか。ファーブルは山奥にある貧しい村で育った。祖父母の家の周りは家畜の糞だらけだったが、それを汚いという人はいなかった。家畜の乳を絞り、その肉を食べ、羊毛を着ていた村の人々は、家畜によって人間が生かされていることをよく知っていたからだ。全ての生き物は平等であり、それぞれの役割がある。それがファーブルの信念だった。第1回では、ファーブルの昆虫へのまなざしから、その生命観を描く。

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第2回 昆虫観察を天職と知る

【放送時間】
2014年7月9日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年7月16日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年7月16日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
奥本大三郎(フランス文学者・作家)

両親が都会でカフェを開くことになり、ファーブルは9歳で故郷を離れた。しかしカフェはつぶれ、一家は離散。ファーブルは働きながら学び、師範学校を出て教師となる。しかし若い頃のファーブルは物理や数学が専門で、昆虫は趣味に過ぎなかった。人生が変わったのは31歳の時。虫を食料とする狩り蜂の論文を読んだのがきっかけだった。そこには狩り蜂が捉えた虫はいつまでも腐らないと書かれていた。驚いたファーブルは、自分でも観察を行う。そして、それまで知られていなかった驚愕の事実をつきとめた。第2回では、ファーブルが昆虫学者となるまでを見つめる。

名著、げすとこらむ。ゲスト講師:奥本大三郎「飽くなき好奇心を持つ博物学の巨人」
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第3回 本能の謎を解き明かす

【放送時間】
2014年7月16日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年7月23日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年7月23日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
↑高校野球中継のため一部地域で休止
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
奥本大三郎(フランス文学者・作家)

ファーブルは昆虫の卓越した本能について発見を重ねた。狩り蜂の幼虫は親が捕った虫を食べるが、心臓など致命傷になる場所を巧妙に避け、獲物を生かしたまま食べていた。一方で本能の限界も明らかにする。狩り蜂の幼虫は、生みつけられたのとは違う場所に移されると獲物を食べることができなくなる。本能には全く柔軟性がないのだ。こうした観察は注目され、ダーウインなどから高い評価を得た。しかし女性が同席している講演会でおしべとめしべの解説をしたことが問題視され、ファーブルは職を失う不運にみまわれる。そこで筆一本で生きる決意を固め、書き始めたのが昆虫記だった。第3回では、昆虫の本能と昆虫記誕生のきっかけを語る。

もっと「ファーブル昆虫記」
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第4回 昆虫から学んだ生と死

【放送時間】
2014年7月23日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年7月30日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年7月30日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
↑高校野球中継のため一部地域で休止
2014年7月30日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
2014年8月6日(水)午後5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年8月6日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
奥本大三郎(フランス文学者・作家)

55歳になったファーブルは、荒れ地を買い、植物を植えて昆虫の楽園を作った。そこで観察をしながら昆虫記を書き続けた。当時は帝国主義の時代で、戦争が絶えなかった。こうした中、ファーブルはサソリを使った実験を行う。サソリが攻撃するのは餌となる生き物だけで、他の生き物とは決して戦おうとしなかった。不必要な殺戮を行うのは人間だけであり、死について知っているのも人間だけだとファーブルは考える。そして人間は命の意味を考え直さねばならず、また死を知る唯一の生き物として一生懸命生きなくてはならないと結論づけた。第4回では、ファーブルが晩年に到達した死生観に迫る。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
「ファーブル昆虫記」2014年7月
2014年 6月25日発売
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こぼれ話。

「ファーブル昆虫記」こぼれ話

「ファーブル昆虫記」いかがでしたか? 子供の頃に一度は目にしたことはあるけど、まさかこんなに豊かな本だったとは思わなかった…という人も多かったのではないでしょうか?
今回、初めてプロデューサーとしてかかわったAも驚きの連続。単にユニークな昆虫の生態を描いているだけでなく、その発見に至るまでのわくわく感が縦横に描かれているところ。どんな苦難の中でも決してあきらめず、自分の一番大好きなことに突き進むファーブルの情熱。どんなにすばらしい業績に対しても納得がいかないところには疑問をもち、徹底して実験を続け、ついには新たな事実にたどり着いてしまう探究心。そして、何よりも、一流の文学を思わせる美しい文章たち。
とにかく見どころが満載で、その全ての魅力を入れ込もうとすると時間が足りない…というのが一番の悩みの種。どうしてもカットしなければならない部分も多々ありました。 ぜひこの番組をきっかけに、「ファーブル昆虫記」そのものを手にとってみてください。子供から大人まで、どんな読者にもきっと新しい世界を開いてくれることでしょう。
さて、次回は「アンネの日記」。まだ読んだことがない人はもちろん、読んだことあるよ、という人も必見です。読み直してみてここまで再発見するものが多い本も珍しいかも。作家の小川洋子さんが、そんな再発見の喜びを教えてくれますよ。お楽しみに。

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