おもわく。

『おくのほそ道』

松尾芭蕉が記した「おくのほそ道」。俳句が随所に散りばめられた旅のドキュメントというイメージがあるかと思いますが、実はそうではありません。今回はその意外な姿に迫ります。
伊賀に生まれた芭蕉は、武士の家に奉公人として仕えていた時に俳諧連歌に出会い、俳諧師になりました。俳諧とはもともと“滑稽”を意味し、上の句と下の句を複数の人が読みあうもので、遊びの要素が強く、芸術といえるほどではありませんでした。
芭蕉は、この俳諧を和歌に匹敵する文学へと磨き上げようとしました。そして“蕉風”と呼ばれる独自の境地を開きます。これが後の俳句へとつながっていくのです。
46歳の時、芭蕉はある大きな決意をします。古くから和歌に読み込まれてきた景勝地「歌枕」の宝庫であるみちのくを訪ね、理想の句を生み出そうとしたのです。その旅が「おくのほそ道」でした。
番組では、女優の内山理名さんが俳人の長谷川櫂さんとともに、芭蕉の足跡をたどり、その旅を追体験します。そして東京深川の芭蕉記念館をスタジオにして、司会の伊集院光さん、武内陶子アナウンサーと共に芭蕉の世界観を語りあいます。番組を見れば、あなたも必ず、旅に出たくなるはず。どうかお楽しみに!

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第1回 心の世界を開く

【放送時間】
2013年10月2日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年10月9日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年10月9日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
長谷川櫂(俳人)
【ゲスト】
内山理名(女優)

芭蕉はなぜみちのくへと旅だったのだろうか?今回は「古池や 蛙飛こむ 水のおと」という有名な句を手がかりに、芭蕉の心境を推理する。江戸・深川を出発した芭蕉は、寺社をめぐりながら日光へと向かった。長旅の安全を祈願するのが目的だが、実は日光の描写には、芭蕉の周到な計算が見え隠れしている。第1回では、旅にこめた芭蕉の思いを描く。

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第2回 時の無常を知る

【放送時間】
2013年10月9日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年10月16日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年10月16日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
長谷川櫂(俳人)
【ゲスト】
内山理名(女優)

旅先で芭蕉がまず知ったことは、人の営みが、いかにはかないものであるかという現実だった。松島に着いた芭蕉は、その美を流麗な文章でたたえるが、何と自分の句をおくのほそ道に載せなかった。その真意とは何か?さらに北へ進み、平泉に着いた芭蕉は、ひとつの希望を感じることになる。第2回では、無常という現実を芭蕉がどうとらえたかを探る。

名著、げすとこらむ。ゲスト講師:長谷川櫂 『おくのほそ道』への旅
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第3回 宇宙と出会う

【放送時間】
2013年10月16日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年10月23日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年10月23日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
長谷川櫂(俳人)
【ゲスト】
内山理名(女優)

芭蕉が山形の山寺で読んだ句「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」。蝉の声がうるさいのに、芭蕉はなぜ「しずか」と表現したのか、そこから謎ときを始める。旅の後半、芭蕉の句はさらに進化していった。出羽三山に登った芭蕉は「天の入口に来たかのようだ」と記し、山中で句を読む。大自然の中で芭蕉が感じたものとは何だったのか?第3回では、芭蕉の宇宙観に迫る。

もっと「おくのほそ道」
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第4回 別れを越えて

【放送時間】
2013年10月23日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年10月23日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年10月23日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
2013年10月30日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
2013年11月6日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年11月6日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
長谷川櫂(俳人)
【ゲスト】
内山理名(女優)

東北を離れた芭蕉は、北陸を経て岐阜へと向かう。ここで芭蕉の思索はさらに深まりを見せる。人生は思うようにならない悲惨なものである。その現実を静かに受け止めて、時々めぐってくる幸福を楽しむような、達観した句を作るべきだというのだ。のちに芭蕉は、この境地を「軽み」と称するようになる。第4回では、芭蕉が最後に達した「軽み」とは何かを探る。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
『おくのほそ道』2013年10月
2013年 9月23日発売
定価550円(本体524円)
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こぼれ話。

「おくのほそ道」こぼれ話

「おくのほそ道」いかがだったでしょうか。普段はアニメーションやスタジオで撮影した再現シーンのVTRを流すことが多いのですが、今回は芭蕉の旅を追体験するVTRを加えました。しかし単なる旅番組になってしまうと、「100分de名著」らしくないので、解説部分と旅の部分の配分を考え、芭蕉の世界観をしっかり描くように心がけました。今年は東北の梅雨がなかなか明けなかったため、最上川が真っ茶色になっていましたが、流れの速さを読んだ句だからまあいいか、と自分を納得させています。
9月の「古事記」、10月の「おくのほそ道」と、日本の古典が続いたので、次回は方向性を大きく変えて「アラビアンナイト」を取りあげます。こちらもどうかお楽しみに!

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