「日本人論」といいますと、とかく「政治的」な取り扱い方をされがちなテーマですが、今回は、「名著」から読み解くというスタンスに立って、あえて「哲学的」に、かつ「縦方向に奥深く」、日本人のアイデンティティや文化の基層に迫ってみる手法をとりました。また、通常は、「平易にわかりやすく」を旨とする「100分de名著」ですが、スペシャル版ということで、少しだけディープな議論にも挑んでみました。
今回のゲストの皆さんは、プロデューサーAにとっては、大変思い入れの深い方々でした。私が大学一年生の頃出版された中沢新一さんの「チベットのモーツァルト」は夢中になって読みふけった本の一冊で、以来、ほぼ全ての著書を読ませていただいています。また、ちょうどその頃発刊を終えた、松岡正剛さんが編集されていた「遊」は、私に知への扉を開いてくれた憧れの雑誌でした。斎藤環さんの著書「社会的ひきこもり」は、マスコミ業界に入って中堅になってから読んだ本で、精神医学が社会批評としても大きく機能しうるということを気づかせてくれた本ですし、赤坂真理さんの小説「東京プリズン」は今年読んだ本の中で最も衝撃を受けた本。そう、今回ご出演いただいた皆さんは、私の「知」を育ててくださった恩人でもあったわけです。同世代の方で私と同じ感慨を持たれる方も多いかもしれません。また、赤坂真理さんはもちろん、他のベテラン三人も現在でも第一線で活躍されている方々なので、若い世代の皆さんの中にも、大いに刺激を受けているという人が大勢いるかもしれませんね。
収録は実に5時間以上にわたり、日本人についてとことん語りつくしていただきました。そのエッセンスをお伝えすべく奮闘いたしましたが、あれだけ情報量の多い名著を解説するにはやはりどうしても時間が足りなかったというのも実感です。もしかしたら物足りないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。去年の「100分de幸福論」に引き続き、後日、ムック本という形でも展開させていただこうと考えております。ぜひご一読いただけたらと思います。