おもわく。

サン=テグジュペリ『星の王子さま』

砂漠に不時着した飛行機のパイロットが、遠い小さな星から来た少年に出会う不思議な物語「星の王子さま」。人間の絆や愛の意味を問うた哲学的な童話として名高く、子どもだけでなく大人にも人気があり、多くの人を魅了してきました。その出版部数は日本だけで600万部、全世界では8000万部にものぼるといいます。
著者は、フランス人作家のサン=テグジュペリ(1900-1944)。青年時代、飛行機でサハラ砂漠を縦断し、郵便を届ける仕事をしていました。当時の飛行機はよく故障したため、編隊を組んで飛行し、不時着した仲間を助けることになっていました。僻地には中継基地があり、そこでは一人で飛行場を守らなくてはなりませんでした。砂漠の部族と親しくなり、運航に協力してもらうことも大事な任務だったそうです。こうした環境で、サン=テグジュペリは、孤独と死の恐怖、人の絆の有り難さを知ります。
星の王子さまは、こうしたサン=テグジュペリの経験をもとに執筆されました。飛行機のパイロットと星の王子さまの友情を通して、人の絆とは何かを訴えたかったのでしょう。
物語では、大人と子どもの考え方の違いが語られます。大人は、目に見える表面的なことで物事を判断しがちです。どんな服を着ているか、財産はどうか、データはどうなっているのか。しかし子どもは違います。子どもは相手の姿形に左右されません。子どもにとって大事なのは、心で感じたこと、それだけです。
子どもの心には大人への大切な教訓が秘められています。絆や愛はかけがえのないものですが、目には見えません。つまり、心で感じるしかないのです。だから目に見えるものしか理解しないような、間違った心を持つ大人になってはなりません。そうした願いを物語に込め、サン=テグジュペリは兵役に志願します。そしてナチスドイツとの戦闘に赴き、偵察飛行中に帰らぬ人となりました。
絆とは、愛とは、幸福とは何か。番組では「星の王子さま」を通して、サン=テグジュペリが残したメッセージをひもといていきます。

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第1回 子どもの心を忘れずに

【放送時間】
2012年12月5日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2012年12月12日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2012年12月12日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
水本弘文(北九州市立大学名誉教授)

物語は飛行士が思い出を語る形で進む。飛行士は幼い頃、画家になるのが夢だった。しかし才能を認めてもらえず、夢をあきらめた。ある日、飛行士は砂漠に不時着、星から来た王子に出会う。王子の純粋な質問に答えるうちに飛行士はあることに気づく。自分が物足りない毎日を送っていたのは、子どもの頃の情熱を失っていたからだと。子どもの一途な心があってこそ、大人の経験が生きてくる。子どもと大人のバランスがとれるよう、心を常に手入れしなくては幸せになれない。第1回では、幸せを失わない心のあり方について問い直す。

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第2回 悲しい勘違い

【放送時間】
2012年12月12日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2012年12月19日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2012年12月19日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
水本弘文(北九州市立大学名誉教授)

王子は飛行士にこれまでの旅を語り始める。ある日、王子の星にバラが咲いた。バラを見たのは初めてだった王子は、感激して世話をするが、バラは強気で王子につれなかった。実はバラは王子への愛を素直に表せなかったのである。王子は傷つき、星々をめぐる旅に出る。そこには自己中心的な欲望にとらわれた大人たちがいた。やがて王子は、強いとばかり思ってきたバラが、いつ枯れてしまうか分からない弱い存在であることを知る。王子は、自分もバラも自己を中心に置きすぎていた、だから傷つけ合うことになったのだと悟る。第2回では、人間の愚かさと、他人の立場に立つことの大切さについて考える。

名著、げすとこらむ。ゲスト講師:水本弘文「見えない幸せの世界」
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第3回 本当の絆のつくり方

【放送時間】
2012年12月19日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2012年12月26日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2012年12月26日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
水本弘文(北九州市立大学名誉教授)

7つめの星・地球で、王子は5千本のバラが咲いている庭を目にする。世界にひとつしかないと思っていたバラがこんなにある。自分が愛したバラが、何の変哲もない花に過ぎなかったことを知り、王子はショックを受ける。すると狐が王子に声をかけた。狐は王子に、愛は時間によって育まれると言う。共に過ごした時があるからこそ、かけがえのない唯一の存在になるのだと。王子は、狐との出会いを通して、幸せとは時間をかけて自分で作り出すものだと悟るのだった。第3回では、本当の絆のつくり方について語る。

もっと星の王子さま
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第4回 すべては心で変わる

【放送時間】
2012年12月26日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年1月2日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年1月2日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
水本弘文(北九州市立大学名誉教授)
【特別ゲスト】
中嶋朋子(女優)

不時着して8日目。飛行機の修理は進まず飲み水もつきた。困り果てた飛行士を見て、王子は井戸を探しに行こうと提案する。歩きながら王子は「月夜の砂漠が美しいのは砂漠がどこかに井戸を隠しているからだよ」とつぶやく。初対面の時と仲良くなった後では人の印象が異なるように、世界は心によって違う姿を見せる。心の影響力の大きさを、詩的に表した美しい言葉だった。そして夜が明ける頃、ついに井戸が見つかる。それはふたりの間の絆が確かなものになった瞬間だったが、実は悲しい別れの始まりでもあった。第4回では、世界が心によってどう変わるのかを、ラストシーンから探っていく。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
サン=テグジュペリ『星の王子さま』2012年12月
2012年11月24日発売
定価550円(本体524円)
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こぼれ話。

「星の王子さま」こぼれ話

100分 de 名著、担当のNです。
番組を担当していると、出演者や出版社の方から、「今回はなぜこの本を選ばれたのですか?」と尋ねられることがよくあるのですが、実は「番組で取りあげる本の基準」がいくつか存在します。
この基準は当番組の最高機密であり、また極めて厳密なものなので、全てを明かすことは出来ませんが、今回ひとつだけ、特別にお教えします。 それは「若かりしころのNが読もうとして挫折した本」です!
今回はそのパターンでした。長い間のつかえがとれたような感じで、すっきり。
みなさんはいかがでしたでしょうか。
次回は、年の始まりにあわせ、「般若心経」を取りあげます。
字数はわずか262文字ですが、1つの文字に含まれている意味がたいへん深いので、ぜひごらんください。

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