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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第81回】
今回、スポットを当てるのは、
ケシュ#203

プロフィール

ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)
仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。
NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。
手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出を得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。
仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。
またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。
オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに「群衆心理」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

「アニメーションの軸をどうするか」というのは、アニメーションを手掛けるときに最初に必ず考えることです。

今回は、一目で群衆化した状態だと分かることが重要だと判断しました。
そのため、主軸になるのは、著者のル・ボンでもなく、また特定の登場人物でもない、群衆化した状態の人物をアイコン化することでした。

彼らは、堅苦しい四角い顔を持ち、自動人形のような部品で可動域が止められ、体の模様は群れると円の形となり、人が人に同調していくようなイメージで描かれています。
上記のような自動人形らしさも出しつつ、狡猾さ、恐れといった表情を出せるような顔の造形を心掛けました。

また、解説アニメーションだけでなく、エピソードアニメーションのなかの登場人物を(靴職人や売春婦、船員、大学生など)群衆化アイコンと共通した特徴を用いて、表現しました。
それは、群衆化した人物とは、特定の人物ではなく、「状態」そのものであると画で表したかったからです。

「ナチスの手口に学べ」と政治家が発言するようなこの国において、ヒトラーが愛読していたという本書が、遠い出来事ではなくあくまで現代の我々に対しての警句になるよう、現代の感覚に照らし合わせて表現が伝わるよう演出しました。

私たちのなかにも「群衆化してしまう自分」が内在しているのだと伝われば幸いです。

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