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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第75回】
今回、スポットを当てるのは、
ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)

プロフィール

仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。
NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。
手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出を得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。
仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。
またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。
オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに「100分de災害を考える」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

東日本大震災が起きた2011年に『100分de名著』の放送が始まりました。当時を振り返ると、余震が続く中で本当に通常通り放送されるのだろうかと不安になりながらアニメーションを作っていたことを思い出します。この『災害を考える』を担当することは感慨深いものがありました。

今回アニメーションを担当したのは、第三回『セネカ 生の短さについて』と、第四回『池田晶子 14歳からの哲学』です。

『生の短さについて』は、ローマ帝国の哲学者であるセネカと現代の私たちの間にある時間の差をどう埋めるかがアニメーションのキーでした。

絵柄を現代風にして今の社会に引き寄せることもできますが、ただそれだけでセネカの言葉を実感として届けることが出来るのか、古代ローマとの膨大な時間の隔たりを埋めることができるのか、非常に悩みました。
そこで、セネカ自身を登場させ、しかも現代に生きる私たちの生活のなか(TV画面や窓ガラス)に映り込むような演出にし、時空を超えてセネカが私たちに警告するイメージで、現代社会と古代ローマとの隙間を埋めようと考えました。

『14歳からの哲学』は抽象的な概念をどうビジュアルに落とし込むかが最大の難問でした。
普段なら「おもい」や「こころ」を表す際、ハートの形を使ったり胸に手を当てたりといった表現にするのですが、しかし今回は「こころ」がどこにあるのか、自分から切り離して存在できるようなものではないのではないか、というような内容でもあり、分かりやすさのために「こころ」=ハートというイメージを選ぶのは相応しくありませんでした。
悩んだ結果、メタファーを使って客観的に理解するのではなく、主観的にキャラクターの実感が伝わるような表現にしました。見たり、聞いたり、触ったり、その動作を通じてキャラクターの感じていることが伝わり、理解されるように構成しました。
アニメーションが考えるための一助になれば幸いです。

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