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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第73回】
今回、スポットを当てるのは、
きのしたがく(ROBOT)

プロフィール

イギリスのCentral Saint Martin's College of Art and Designにて学士、RoyalCollege of Artにて修士を取得。
ロンドンのアニメーション制作会社所属を経て、2008年に帰国。フリーランスのアニメーション作家として独立。
2020年、アニメーション制作スタジオSepiaWorksを立ち上げ活動中。
TV番組、企業CM、ミュージックビデオ、など幅広く手掛ける。2Dと3DCGを融合させ、手描きスタイルの柔らかい絵柄を特徴とする。

きのしたがくさんに「黒い皮膚・白い仮面」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

2020年にアメリカでジョージフロイドさんの死亡事件から起こった運動、ブラック・ライブス・マター。
ぼくは学生時代を海外で過ごしたため、共感できる部分がたくさんありました。。
この運動が伝えたかったこと、言葉にならない理不尽、獲得したかった平等について、「少しでも力になりたい」という思いで参加させていただきました。

作画中に最も気を使ったのが、どんな人種人が見ても不愉快にならない絵柄。
特にファノンは黒人であるため、黒人の視聴者目線を想像して描くことが多かったです。
制作当初はコミック調の少しかわいらしい絵柄やシンプルな記号的な絵柄を考えていたのですが、プロデューサーと相談して写実寄りのまじめな絵柄に方向修正しました。人種差別の問題なので視聴者に冗談っぽくに受け取られないための配慮です。

黒人、白人、アラブ人、同じ種族でもいろいろな骨格や顔のパーツや肌の色があるので画一化しない様にたくさんリサーチをしました。
ストーリーが重い話になったときにアニメはそれを憂鬱な方に引っ張るでなく、視聴者が気持ちをリセットできる様に演出したいと思いました。

私的なチャレンジとしては、皮膚の色がテーマのこの作品で、あえて色を使わず白黒のモノトーンの着彩したことです。
モノトーン画で光の陰影の黒と皮膚の黒を区別して描くことは技術的にかなり難しく、皮膚は茶色系統を使うと表現しやすいのです。しかし、番組の題名が「黒い皮膚、白い仮面」であったため、白黒のみ絵で描くことがこのテーマをビジュアルからも印象付けることができると考えた挑戦でした。

この作品を通して、人種差別のみではなく、視聴者自身の身の回りある差別意識に心を向けるきっかけになってもらえたら嬉しいです。

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