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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第71回】
今回、スポットを当てるのは、
川口恵里(ブリュッケ)

プロフィール

多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。

川口恵里さんに「ディスタンクシオン」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回の「ディスタンクシオン」は、とにかく難解な書でした。番組中にもありましたが、当時の風潮として、一定の割合理解できない(または理解しにくい)書き方をあえて含めていたとのこと。アニメパートの意義は回によって変化するものだと思っていますが、「ディスタンクシオン」においては、なるべく、わかりやすさを追求したいと思いました。

そんな中で、絵で表現するにあたり頭を悩ませた箇所がいくつかでてきましたが、最も大きかったのは「ハビトゥス」をどのように絵で表現するかを悩みました。
ハピトゥスは、遺伝では無く、あくまで後天的に身についたものであるけど、育った環境に密接に根付いているもの、そして経験によって成長変化していくものであること。
最初にイメージしたのは自分を覆っているベールのようなもので、そこには民族柄のように編み込まれたもので差異化できるか・・・? 額にある3つ目の目(心の目)として描くのか・・・トーテムポールのような文化的伝承を表すものか・・・または盲導犬のように常に歩みを共にしてして先導してくれる存在として描くのか。など悩みながら、最終的に「眼鏡のようなもの」に辿り着きました。
しかし眼鏡を全くしない私には眼鏡というとどうしても(取り替え可能でお洒落も楽しめる装飾的なイメージが僅かに浮かんでしまって)(ハピトゥス=眼鏡)と言い切るには、しっくりこなくて更に内在化させるにはどうしたらいいか。等悩みながら、眼鏡をかけた他のスタッフと討論しながらたどり着きました。

今回アイデアを考える上で、自分で想像する全てのものがハピトゥスによる再生産なのか・・・などと意識するとハピトゥスが呪縛のように頭から離れず。
悶々とすることも多かったのですが。眼鏡においても、眼鏡経験者のハピトゥスを借りながら考えることが出来たので本当にいい経験になりました。
今回は主人公のような登場人物を2人に絞って登場させました。最後まで密かに追い続けているので、楽しんでいただけたら嬉しいです。

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