《ユリナ ノ メ》連載第6回目です!
今回の『君主論』の放送も、皆様お楽しみいただけましたでしょうか??
女性の先生を初めてスタジオにお迎えしての収録—。
武田先生は本当に物腰の柔らかいとっても素敵な先生でした!
いつも以上に、和やかな雰囲気の中での収録となり、とっても気持ちが良かったのですが、今回の名著はあの、《権謀術数の書》と言われる『君主論』—。
武田先生のマイルドさと、『君主論』の“冷徹な現実主義”というイメージのギャップが大きくて
収録中、そのギャップの面白さに時折思わず吹き出して笑いそうになってしまうこともありました!
さて、実はこの『君主論』は私自身が読み解いてみたい一冊でもありました。
高校時代の世界史の授業中のことです…
「は〜い、これは権謀術数の書、と言われていて、今日、目的のためには手段を選ばないという考え方を、彼の名前を取って《マキャベリズム》と言います!」
と先生がさらっと言います。
その時の私の気持ちは…
【え、それで終わり?
《権謀術数の書》だなんて、すごいインパクトなわりに、この情報量の少なさ!!
なんなんだろう、この謎の書物は?!かなりダークな感じだけど、どこがどうすごいの??】
こんな違和感を得たのです。
そして、この違和感は大学生になった今でも私の心の片隅にありました。
マキャベリって世界史の中でさらっと現れますよね!
学校の授業の中で同じような経験をされた方も多いのではないでしょうか?
その違和感を解きほぐすべく、臨んだ収録。
今回、武田先生のお話をうかがったことで君主論のイメージが全く変わりました。
そして、何の歴史的な文脈や背景も理解せずに作品に先入観を持ってしまうことの恐ろしさも改めて感じました。
16世紀初頭 イタリア フィレンツェ 時は戦乱の世。
『君主論』はその真っただ中で外交官マキャベリがなんと就職活動のために(!)
フィレンツェの最高指揮官に宛てて書いた論文だったと言います。
武田先生にその背景を伺うと、『君主論』は今までとは別の姿で私の前に現れてきました。
君主論は具体的な国の統治法が書いてありますが、その多くはかなり現実主義的で、時に残酷で狡猾にも思えます。
しかし、これが、就職のための論文であったことを加味すると、
マキャベリは、「あけすけに本心を話してくれる部下であり、自分の強さに貢献してくれる部下だ」という印象を君主に与えるためにこのように文章を綴ったとも考えられるでしょう。
確かに、美辞麗句を並べて道徳的観念を語られるよりも、マキャベリのように ズバズバと歯切れ良く現実的な実践の策を書かれるほうが説得力を増すように感じます。
『君主論』は謎の《権謀術数の書》ではなく、一外交官の再起をかけた渾身の就職活動論文だったのです。
このようにして、私の中で、見事に第一印象からの変身を遂げた『君主論』。
収録を通して最後に感じたのは、
人としての道徳と、人の上に立つリーダーになるための心得は両立しないものだということです。
複雑な人間の集合体を束ねなければならないリーダーは“イイ人”ではいけない。
…ということは、私のように、リーダーの支配を受け取る側の人間もリーダーに“イイ人”を期待してはいけないのでしょう。
リーダーの判断は、時に無慈悲に思えるものもあるかもしれませんが、
その判断がもしかしたら正しいのかもしれないです。
私たちはリーダーの一挙手一投足に翻弄されてはならないのだと感じました。
私自身は、君主になる機会はなさそうですが(笑)
君主に対する向き合い方をも学べたような気がして
とても素敵な一冊だったと思います。
次回は、『幸福論』を読み解いていきます!
どうぞお楽しみに!!