NHK松山放送局

週刊 防マガ 2014.10

しこくの防災を考える

災害に関する知識から、私たちの身近に起こる可能性、そして対処方法まで、防災に関する知識を学び備えよう!

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ラジオ第一
2014/10/20
07:40~

広島土砂災害の経験を忘れずに活かす

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“6.29豪雨災害”

広島市では、大きな土砂災害が繰り返し起きています。今回の“広島土砂災害”についてお話する前に、“6.29豪雨災害”に触れておきます。
“6.29豪雨災害”は、1999年(平成11年)6月23日~7月3日の間に降った豪雨により、北九州北部から中部地方にかけて広範囲で土砂災害が起こりました。この土石流災害が契機となり、平成13年4月、一般に「土砂災害防止法」といわれる法律が施行されました。
その後、新潟県中越地震(平成16年)、東北・宮城県内陸地震(平成20年)にともない、土砂災害については国と都道府県で、それぞれの役割や関与が法律化され、平成23年5月1日に改正法が施行されました。さらに、今回の広島土砂災害を受け、平成26年10月14日「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」について、閣議決定されました。ここで注目する点は、国が都道府県に対し、基礎調査の結果公表を義務付けたことです。

公開された情報は防災に役立てなければなりません。例えば、「土砂災害特別警戒区域」を決めた場合、まず居住地として不適切な場所となれば、対策の前にリスクを避ける選択も必要です。そのためには、情報の判断の適確さ、現地での安全/危険の境界を明確化し、危険範囲の限定を行わなければなりません。

さて、今回の広島土砂災害では、現地の安佐南区の多くの沢では谷口に扇状地が形成されています。扇状地は過去に土石流が生じた場所です。土石流の発生要因は、このような地形を形成する沢の存在、沢の両岸を覆う厚い表土(崩土、マサ土、風化土など)の存在、それに加えて、一日に100mmを越す豪雨が挙げられます。沢ごとに、異なった土石流堆積物になりますが、いずれの沢も大量の倒木が一緒に運ばれています。

四国での被害

四国では、忘れかけている土砂災害である「繁藤災害」と、一昔前の新居浜市・西条市の土砂災害事例を挙げます。
 「繁藤災害」は、1972年(昭和47年)7月の豪雨で起こりました(土佐山田町繁藤で99.5mm/時間を記録)。大雨は7月4日から5日かけて降り、24時間降雨量は平年の3ヶ月分にも当たる742mmにも達しました。降雨量が降り始めから600mmになったとき小崩壊が起こり、土砂除去中に一名が生き埋めになり、780mmになったとき、幅170m、長さ150m、高さ80mにわたって斜面が大崩壊を起こしたようです。被害は最終的に死者60名、負傷者8名、家屋全壊10棟、半壊3棟にのぼり、「繁藤」駅さらに停車中の列車を直撃しました。土讃線復旧に23日要しています。救出活動は約1ヶ月、延べ約2万名が従事しました。当時救助活動をした人に聞いた話ですと、悪臭が現場近くに立ち込めて作業は大変だったようです。
一方、新居浜市・西条市の土砂災害は、2004年(平成16年)の連続した台風15号、21号、および23号により起こりました。これらの地域で土石流は27箇所、崖崩れ・地すべりは29箇所で生じています(台風15号及び21号)。松山自動車道は10数箇所の土砂流出で不通となり、国道11号線、JR予讃線などが土砂災害によって寸断され交通が麻痺しました。そのうち、死者4名を出し、松山自動車道が不通になった土砂災害は、新居浜市大生院で起こりました。これは台風21号に伴う大雨によるものです(87mm/時間:9月29日16:00-17:00新居浜市垣生観測所)。ここでは、明瞭な地すべり地形を示していない斜面でしたが、長さ50m、幅30m、深さ5m程度の規模で崩壊しました。

ところで、四国で被害が想定される場所は、基本的に、地質では三波川帯の変成岩が分布する斜面や、中央構造線沿いの斜面、異なる地質の境界にある斜面です。そして、斜面に表土が厚さおよそ50cm以上あると、30mm/時間(場合には50mm/時間)以上の降水量により土砂災害が起こり易いと言えます。

過去の災害の歴史を忘れず、豪雨時に備えること

土砂災害が起きた時は手遅れです。災害に備えるためには、自分の住んでいる地域の地形・地質を理解した上で、気象情報を入手し、避難勧告や特別警戒があれば素早く対処することです。
インターネットで入手できる自分の住んでいる地域の情報は、オープンデータとして、各自治体のHPにある防災関連情報、産業総合研究所のシームレス地質図、防災科学研究所の地すべり地形分布図データベースがあります。
危険が切迫した場合に備えて、危険となる前に退避する、家屋内での安全箇所の認識・確保、避難ルートの周知、避難訓練の施行、などが挙げられます。以上のような平常時及び緊急時に限らず、過去の土砂災害の歴史を忘れることなく、豪雨時の対処に備えることが必要です。
 

廣田 清治(愛媛大学 教授)
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