夏井いつきの俳句道場

兼題:紅葉(もみじ)


2020年11月14日(土)放送

兼題:紅葉(もみじ)


▼選句ポイント

・臨場感が伝わる

・五感で感じている

 

 

▼ギュッと!特選

しぶき満つ龍王(りゅうおう)さんの紅葉かな      小野睦

【解説】

上五「しぶき満つ」で、水が飛び散る様子がわかります。

滝それとも堰(せき)かしらと思ったとたんに出現する

「龍王さん」。

「~さん」という呼び名が地域の人たちから大事に

祀(まつ)られている水神様を思わせます。

上五中七が水の印象で構成されているので

上五「しぶき」が下五の季語「紅葉」の赤の鮮度をあげる

かのような効果をもたらします。

 

 

▼入選

行列を厭(いと)わず紅葉へと渡船     あずお 

【解説】

長い行列をものともせずに並んでいるのです。

人気のお店か チケットを買う行列かと思えば「紅葉」。

紅葉の名所と思ったとたん「~へとの渡船」と着地。

「渡船」に乗り込む様子までもが、生き生きと

想像されます。

 

トロッコへ紅葉メガネをはみ出して       大和田美信

【解説】

「~へ」ですから「紅葉」の枝がせり入ってくる

感じでしょうか。

別の言い方をすれば、「トロッコ」が「紅葉」の中に

突入していくような状況かもしれません。

かけている「メガネ」の視界を「はみ出して」という

視点に臨場感があります。

 

紅葉(こうよう)や果実売らるる白峯寺(しろみねじ)   山内三郎  

【解説】

「紅葉や」と強調した後に、「みかん」とか「柿」とか書くと

季重なりになりますが、「果実」と書くことで秋の豊かな実りの

印象が表現できます。

その果実が「売ら」れているのが「白峯寺」だという

固有名詞もよいですね。

「紅」と「白」の印象が一句の良きアクセントとなります

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

 

瀬戸内の多島に沈む紅葉色(もみじいろ)     文明

【解説】

「紅葉色」という表現が気になります。

「紅葉」は季語ですが、「紅葉色」は紅葉のような色という意味。

そこに紅葉があるのか、紅葉色のものがあるのか不明瞭です。

作者は「紅葉のような太陽」を表現したかったそうなので

これは厳密にいうと「季語のない句」になります。

さらに「沈む」が湯に沈むのか、夕日が沈むのかも曖昧。

原句の言葉をできるだけ使って添削すると……

 

【添削例】湯に沈み島の紅葉と夕映えと

文明さんの描きたい場面は ぎりぎり伝わるかと思います。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:紅葉(もみじ)添削「はじめの一歩!」


手を広げ 描く細石は  紅葉色      安曇   

・眼下なる  五色紅葉が   何もかも      芳郎

靴裏の  紅葉に残る  夏の跡      三上 慧        

もみじ散り  都思いて  白峯寺        青島しき

[解説]

五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。

テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)に

しているのは、テレビの画面が四角という事情から。

正しい表記を覚えましょう。

 

・哀れ彼岸花紅葉紅葉と云ふけれど     いつきなつを    

[解説]

「彼岸花」と「紅葉」の季重なりです。

むしろ「紅葉」が脇役になっている点に問題があります。

 

・もみじ狩りハンカチくるむ秋一つ   ツークン☆

[解説]

「もみじ狩り」「秋」が秋の季語 「ハンカチ」は夏の季語。

兼題は「紅葉」ですが、この句の場合は「もみじ狩り」を

諦めたほういいでしょう。

中七下五には、詩になる要素があります。

 

季節(とき)めぐり色づく紅葉コロナ禍も       宮井直樹      

[解説]

季語ではありませんが、一句に「季節」という

言葉を入れて成功する例は稀(まれ)です。

季語を一つ入れるだけで(この句では「紅葉」になりますが)

季節がめぐってまたこの時期がきたという

ニュアンスは伝わるのです。

「季節(とき)めぐり」は不要の言葉になります。

そこから一句の構成を考え直してみましょう。

 

銀杏黄葉うぶすな道の途中下車   裾野くみこ

青峰の黄葉を突きて根来寺や     青島              

[解説]

「銀杏黄葉」も季語ではありますが、兼題「紅葉」とあれば

「紅葉」という言葉を入れる必要があります。

 

我が家にはいつでも紅葉野村かな       翡翠

[解説]

作者から「我が家のシンボルツリーは「野村紅葉」という

いつも紅葉している種類です」と補足されていました。

「野村紅葉」という名前を初めて知ったのですが 

うーむ、これを季語として認識してよいのか?

困ってしまいました。

秋に落葉するとのことですから、ノムラモミジが

落葉する時期という季節感があるのかもしれません。

 

向かひけりマイントピアの紅葉かな     どーりー3    

[解説]

「けり」「かな」と強い切れ字が2カ所にあります。

感動の焦点がブレるので、俳句ではこのような使い方を嫌います。

どちらをいかしたいかによって、一句の展開は大きく変わります。

仮に「向かいけり」をいかすとしても

①移動していくという意味なのか、②今紅葉の前に立っているのか

それによっても下五の表現が変わります。

【添削例】①向かいけりマイントピアの紅葉へと

【添削例】②向かいけりマイントピアの照紅葉(てりもみじ)

 

・てっぺんを神になでられ薄紅葉(うすもみじ)    キートスばんじょうし       

[解説]

神が色をつけるのではという発想はありはしますが

「薄紅葉」に感動する気持ちには共感します。

もったいないのは中七 「~なでられ」がやや散文的な

叙述になっています。例えば…

【添削例】てっぺんを神のなでしか薄紅葉

「神がなでたのだろうか」というニュアンスなります。

さらに、意味合いがちょっと変わりますが

【添削例】てっぺんをなでしか神の薄紅葉

神社の杜のようなニュアンスを加えつつ

神がなでたのかもしれませんねという句になるので

少し奥行きが生まれます。

 

・濃紅葉や六十メートル自由落下      蒼求

[解説]

「六十メートル」を「落下」していくという

視点はおもしろいと思います。

「自由落下」という科学用語を持ち込むことも

悪くないのですが、この句の場合「六十メートル」と

「自由落下」二つ入れるのは無理があります。

俳句は17音しかありませんから、仮に「六十メートル」を

いかすとすれば、上五に字余りで置くのが効果的です。

【添削例】六十メートル落下崖紅葉の一葉

「紅葉」は3音の季語なので

「谷紅葉」「山紅葉」「崖紅葉」など場所情報を加えると

ちょうど5音になります。

「朝紅葉」「夕紅葉」など、時間情報を入れることもできます。

 

散骨の海凪いで紅葉が震う     堀アンナ

[解説]

これも素材がよく、ちょっとした言い回しで

さらに良くなります。

「紅葉」を「もみじ」と読ませたいか

「こうよう」と読ませたいかによって

微妙にニュアンスが変わります。

  【添削例】 散骨の海凪ぎ紅葉が震ふ

  【添削例】 散骨の海凪ぎ紅葉ふるへけり

 

大歩危(おおぼけ)の雨濃くなりぬ紅葉かな     宮本象三

[解説]

とても惜しい一句。

「大歩危(おおぼけ)」という地名「雨」が濃くなるという感知

さらに「紅葉かな」という詠嘆もしっとりと着地できています。

もったいないのは中七「ぬ」です。

完了の助動詞「ぬ」の終止形ですからここで意味が切れ

調べもここで切れてしまうのです。

意味の上でつなげると「雨濃くなりぬる」と連体形にしないと

いけないのですが中七が、8音になってしまいリズムが滞ります。

対処方法は二つ「ぬ」を諦めるか「かな」を諦めるか。

【添削例】 大歩危の雨濃くなれる紅葉かな

【添削例】 大歩危の雨濃くなりぬ夕紅葉

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:紅葉(もみじ)秀作・佳作


2020年11月14日(土)放送

兼題:紅葉(もみじ)

【秀作】

岩盤に隆起の記憶紅葉渓        あいだ だなえ

ふかふかのマイク紅葉の取材班      あいむ李景

公園の紅葉から二軒目が我が家      かつたろー。

石鎚の法螺貝夜明の谷紅葉          じゃすみん 

霊園の桶にもみじのはりついて      じょいふるとしちゃん

行列の門抜け紅葉は東福寺          すみれ     

野良猫が安座に座る初紅葉          スローライフ  

餌を待つ猫わらわらと寺紅葉        ハルノ花柊

曽祖父は好事家真つ直ぐな紅葉      ひでやん

薪風呂のけむりと暮らす夕紅葉        まっことマンデー

紅葉は今朝のからくり時計に散る   まるかじり

旅は素寒貧夕紅葉は豪奢        七瀬ゆきこ         

地獄とはこんなにきれい紅葉谷      宮武美香 

細胞診待つや川沿ひ夕紅葉          松山のとまと

お見舞の袋の底に付く紅葉          世良日守           

紅葉の中を琴電一両目          川越のしょび

吊り橋のしんがりとなり紅葉山      蒼奏         

肩を紅葉信号待ちのサイドカー    池之端モルト

窓に紅葉恩師の最終講義        島村福太郎

火を噴かぬ砲台の下紅葉谷          東京堕天使

大家さんの会釈は深し照紅葉        藤田ゆきまち

紅葉明るくて雲が迎えに来る        播磨陽子

照紅葉防火バケツの水面にも        板柿せっか         

色街の朝の箒や照紅葉          平本魚水   

山頂より空と紅葉と海と島          妹のりこ   

竹箒仕舞う紅葉のついたまま        木染湧水

 

 

 

 

 

 

【佳作】

紅葉東平貯蔵庫を飲み込みて         ⑦パパ   

ロープウェイ呑み込まれゆく谿紅葉   KAZUピー

駐輪場こごまる風とかごの紅葉       Sonyist

岩肌を覆ふ紅葉や寒霞渓         あみま           

夢で成就さめて紅葉の降りしきる    おぼろ月    

廃校の片隅照らすもみじかな         かざみどり       

金閣の金透き通る紅葉かな           じゅん      

風の輪がやわらかく去り紅葉落つ     そまり

紅葉して喫茶は移転坂の上           たま

七輪の猪肉の煙紅葉谷           ツユマメ

粒餡のつるっと食感紅葉山           ツユマメ末っ子@8歳

紅葉する木一本に人十人         ドイツばば       

洗車する父の鼻歌薄紅葉         ひとひら 

山門の歪み瓦に寄る紅葉        ペトロア

風と行く朝巡礼の紅葉道        みやこわすれ         

凛として紅葉羽織る天狗岳           メイさん 

居ながらに画像如きや庭紅葉         ヤチ代

石段の紅葉踏み締む仁王門           ゆすらご 

フェリーから見える紅葉の小豆島     れんげ畑

濃紅葉ややうやう鎖場を抜けて       伊奈川富真乃

デイケアの一団歌いだす紅葉         一斤染乃

ブォロロロとボンネットバス渓紅葉   一港     

石段を同行二人もみじかな           浦野紗知

紅葉川別子の銅の酸化して           佳山             

紅葉手に舞う巫女の袴濃き色         花の首飾り

里も奥隠れ耶蘇の碑渓紅葉           花子             

山脈の静脈のごと紅葉谷         花紋             

谿紅葉濃くあれ鳥は飛ぶところ       亀山酔田 

庭紅葉落ちて真っ赤な円となす       亀田かつおぶし   

リハビリの指を広げる紅葉かな       菊池洋勝 

おむすびを頬張る娘紅葉かな         玉井瑞月 

描きても描ききれざる紅葉かな       玉井令子         

おほぞらに開くキャラ弁紅葉かな     玉繭     

紅葉敷く遍路墓守る婆様をり         近江菫花         

未だ華奢な紅葉一本賜りぬ           薫夏

グレートトラバースもみずる木曽駒   香依蒼           

接待は有り難き縁夕紅葉         高橋寅次      

紅葉降る三崎 風車の二回転          高尾里甫

直葬の車にへばり付く紅葉           みなと                   

紅葉掃く僧の頭にまた紅葉           山羊座の千賀子

吊橋の揺れにしたがひ谷紅葉         紗千子           

もみじ葉や足湯飛び交ふ国なまり     紗智     

前かごに紅葉ひとひら夕まぐれ       小鞠     

紅葉見てもみぢ踏み行く父と杖       小池令香  

松山城宥め紅葉の四百回         松井くろ         

人力車紅葉くぐりて旅の宿           松山冬花

赤い橋渡り紅葉の町となる           城内幸江

湯屋を出で紅葉の坂に下駄が鳴る     新濃 健         

全霊の紅葉の紅の尤さよ         水蜜桃           

捨て石を目がけて散りし夕紅葉       裾野はな         

吊橋へ燃え上がり来る紅葉かな       石塚彩楓 

山紅葉暮れゆく麓に遍路道           太郎          

木もれびは仁淀ブルーへ谿紅葉       打楽器   

照紅葉ファイブアローズ開幕戦       土佐藩俳句百姓豊哲

ようきたなと山の声聞く紅葉晴れ     南側     

紅葉谷へ放つ小便小僧かな           比々き   

ひと枝の長きがもみづ始めなり       富山の露玉       

ワイパーに紅葉一枚留り居り         風ヒカル         

四万十や紅葉の喰らう沈下橋         野中泰風         

傷つけて息苦しいほど紅葉燃ゆ       藍月     

結願の涙にきらり夕紅葉        里山まさを       

磴のぼりきれば札所の紅葉かな       良馬                     

肩車伸ばす子の手に紅葉落つ         六手             

ひとり見る秘湯の谷の紅葉かな       戌亥     

ざる蕎麦の昼や父との初紅葉         棗椰子   

紅葉してフックラインが読み切れぬ   椋本望生

山閑か太師は一人紅葉の賀           ねじり花 

紅葉狩り分け入るとサルの群なす     水晶文旦

紅葉狩こんぴらさんの裏道を         はむ

せせらぎは雅楽のやうに草紅葉       のど飴   

骨董の壷に逢い合う蔦紅葉           上原まり                 

夫ありしままの門札柿紅葉           田島良生         

柿紅葉隣宅の犬また逃げて           伊予吟会 宵嵐

山城に続く小径に櫨紅葉         有明海           

巡りくる母の忌日や冬紅葉           揺子     

 

>>放送で紹介された句
>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:秋祭(あきまつり)添削「はじめの一歩!」


・枯れる前  カボチャの雌花  多数成る   松山の竜馬 

手をつなぎ  好きなあの子と  秋祭り   翡翠

[解説]

五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。

テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)に

しているのは、テレビの画面が四角という事情から。

正しい表記を覚えましょう。

 

 

・へんろ道お練(ね)る神輿と彼岸花    宮井直樹

・無機質な壁空蝉の安住    さくら丸

[解説]

兼題が「秋祭」とあれば、その言葉を入れる必要があります。

次回の兼題は「紅葉(もみじ)」ご投句お待ちしていますよ。

      

 

・提灯に灯りともる人の群れ    ツークン☆

[解説]

「秋祭」の光景を詠もうとしている句ですが、

肝心の季語が入っていません。

季語を入れるためには、どれかの言葉を

外さなくてはいけません。

この句の場合、無くても伝わる言葉がありますね。

 

【添削例】 提灯に灯り秋祭の人波

「提灯に灯り」とあれば、灯っていることは分かります。

ここでカットが変わり、後半で次の映像になります。

このような型を「句またがり」といいます。

1音余りますが、延々と続く人波を思わせる効果はあります。

 

・コロナ禍で蔵に眠る秋祭り    久龍昇     

秋祭りコロナ気にせずはしゃぐ子ら   子安一也

コロナ渦の秋祭り獅子は来年   芝山

[解説]

コロナを詠んだ時事句は たくさん届きました。

「コロナ」・「コロナ禍」という言葉が

「コロナのせいで」という説明的な意味に使われている

ケースが多かったように思います。

 

 

・ソーシャルディスタンスを執る秋祭り   水晶文旦

[解説]

「コロナ」と書かずに、コロナだと分かってもらおうと

挑む句もありました。

「ソーシャルディスタンス」という新語に目を付けたのは

良いのですが、これだけで9音もあるので使うのが難しいのも事実です。

 

 

御神灯氏子集うも秋寂し     芝山  

[解説]

「今年の秋祭りはコロナの為、小奴や獅子舞などの子供、

青年が参加する練り物行列(御下がり)が中止となりました。

神事だけは行いますが例年になく寂しい秋祭りになります。」

というコメントもついておりました。

この句は、「コロナ」と書かずに、コロナの年の秋だったなと

読んでもらえるのですが、肝心の兼題「秋祭」が抜けてしまった

勿体ない一句です。

 

 

秋祭睨みを利かす金の龍     宮武美香 

[解説]

山車や神輿(みこし)、お練(ね)りや舞いの動きなど

細部の一点を描写するのもコツの一つです。

 

 

銅山や猛者のあふるる秋祭   松井くろ

[解説]

「銅山」で、どんな場所なのかが分かります。

経済効率の良い言葉選びです。

 

 

 

・装束の父を遠目に在祭      裾野くみこ

会長は四時に目が覚め秋祭   かつたろー。

伯父さんの供米一俵秋祭     ひでやん

[解説]

その行事の現場にいる人たちも、ユニークな句材です。

人物をクロッキーするかのように目についた人や

動作を書き留めていきましょう。

 

 

・おいなりのきんいろ甘し秋祭   佳山

おこわ蒸す匂い家中秋祭      ドイツばば 

秋祭ぼうぜの姿寿司ぱくり    はむ

  ※ぼうぜ:イボダイ。徳島では秋祭時期にぼうぜの姿寿司を食べる。

[解説]

「秋祭」は豊作感謝という本意をもっている季語、

美味しい食べ物もまた大事な句材です。

「秋祭」に対して「おいなり」「おこわ」「姿寿司」など

取り合わせると、17音の半分ぐらいは使ってしまいます。

そうなると、残りの音数でリアリティあるいは

オリジナリティを工夫する必要がでてきます。

 上記の三句の場合、「きんいろ甘し」「蒸す匂い家中」

「ぼうぜ~ぱくり」等にその工夫が見て取れます。

 

 

●「秋祭り」に関する各地のお便り

 

文字だけの手書きポスター秋祭   じゅん 

小さな町ですが、毎年お寺の境内で秋祭が開催され

観音おどりをしています。

そのポスターがいつも毛筆で日付のみ書かれて

町のあちこちに貼られています。               

 

・新築やもぶり寿司食む秋祭     たま 

昔は新築の家に親戚が集まり神輿が入り

かき夫も子供もふるまい酒等で祝っていました。

 

・秋祭り獅子の頭を卒業す       ゆすらご  

秋祭に地域の子供らの獅子舞があります。

獅子の頭を兄が、後脚を弟が。

兄は来年高校生だから今年で獅子舞は卒業

弟が今度は頭になる。

地域で育てていると感じる獅子舞です。 

 

・秋祭桟敷に島の破籠寿司     柴田花子   

香川県の小豆島では、秋祭には桟敷で

破籠(わりご)と言う島独特の弁当箱で客をもてなします。

酌み交わしながら太鼓台の乱舞を見ます。

帰島の人も楽しみにしています。       

 

・夕暮れに響く太鼓や秋の声   太郎

愛媛県の西条祭りです。

私は愛媛県西条市で生まれ小学1年まで住んで居ました。

街を練り歩くだんじりのリズミカルな太鼓の音は

71歳になった今でも思い出せます。

 

・獅子百に百の油単や秋祭     比々き

高松の獅子舞。

神の通る道を先導し 清めるために舞う。

地の米の糊を使った糊染めで

獅子の絢爛豪華で勇壮な衣裳=油単を作る。

縁起のいい柄ばかりだが、皆柄が違い、そこも見どころの一つ。

 

・潮騒に松明かつぐ秋祭り       文明  

高知県中土佐町で毎年9月に行われる久礼八幡宮大祭。

高さ6mの大きな松明を担いで練り歩く。

波の音と松明の「パチパチ」という音が重なる。

初任地・高知の思い出の一つです。     

 

・褌の尻厳かや秋祭り      妹のりこ

勝岡八幡神社には、一体走りと言う無形文化財になっている

お祭りがあります。

昔、塩を運んだ事が由来で御輿を上下させないように走るのが

良いとされています。

 

・おなばれや街練り歩く秋祭   野中泰風 

故郷の街では秋祭りにて神輿(みこし)が運び出され

太刀(たち)踊りや天狗装束、巫女(みこ)さんや獅子などが

古市町商店街などを練り歩く「おなばれ」が行われます。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年10月10日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:秋祭(あきまつり)秀作・佳作


2020年10月10日(土)放送

兼題:秋祭(あきまつり)

 

【秀作】

産みたての卵を籠へ秋祭        じゃすみん 

渦潮の豊かにうねる秋祭           じゃすみん 

丈詰めし法被陰干し秋祭        かつたろー。       

会長は四時に目が覚め秋祭          かつたろー。 

伯父さんの供米一俵秋祭        ひでやん   

秋祭お太夫さんの赤ら顔        ひでやん   

石段の数はご利益秋祭          佳山                       

おいなりのきんいろ甘し秋祭          佳山

一回り摘果済ませて秋祭        花紋       

川の魚の鈍くなりけり秋祭          花紋       

秋祭睨みを利かす金の龍        宮武美香  

秋祭太鼓台曳き一万歩          宮武美香

装束の父を遠目に在祭          裾野くみこ         

新参の鉦の音もあり在祭        裾野くみこ                 

秋祭赤子抱く手の次々と        富山の露玉 

口上に海山のさち秋祭          富山の露玉 

潮焼の声朗々と秋祭            一港               

太刀は灯を黄金と返し秋祭          一港               

秋祭り輿通る道清めたる           ねじり花           

秋祭水の都に「ヨイトサー」        あみま     

神輿には旧き町の名秋祭        キートスばんじょうし               

階を乗り上ぐ舳先秋祭          あいが だなえ      

髪切って帰るや郷の秋祭           あずお                     

秋祭チキテキトンと御練りかな      おぼろ月   

おこわ蒸す匂い家中秋祭        ドイツばば

赤鬼も出てこぬ今日の秋祭          のど飴     

秋祭ぼうぜの姿寿司ぱくり          はむ

秋祭ぎょうさん揚げる野菜天        ハルノ花柊 

秋祭人に紛れてきつねの子          みやこわすれ

バス停の前は万屋秋祭          ヤチ代             

兄弟の獅子はぴったり秋祭          ゆすらご

バスに道譲り譲られ秋祭        れんげ畑

曾祖父は妾の子ども秋祭                葵新吾           

秋祭り二日目頭取のごろ寝           伊予吟会 宵嵐    

卑弥呼めく婦人部部長あきまつり     一斤染乃         

世話役は五十路の若手秋祭り         我省                     

秋祭夜の河原の喧嘩沙汰         亀山酔田         

コンバインのローン完済秋祭り       宮本象三                 

口癖の「老骨」朗々秋祭り           玉井瑞月 

手の中の小銭の音や秋祭         香依蒼   

近付いちやならぬ溜池村祭           高橋寅次 

秋祭屋台は余所のものばかり         高尾里甫 

身軽さの横笛は父秋祭           三泊みなと       

寿司飯を切るや仰ぐや秋祭           山羊座の千賀子           

秋祭り笛吹く君の袖を持つ           紫水晶   

河川敷に猛者猛者猛者や秋祭         七瀬ゆきこ 

秋祭みづはここまできたとかや       紗千子   

秋祭寄進に父の名が見えて           紗智     

先触れの扇高々秋祭             小池令香         

銅山や猛者のあふるる秋祭           松井くろ         

秋祭朝や婦人部米を炊く         松山のとまと     

御座船を見上ぐる吾子や秋祭り       水蜜桃           

秋祭見物客に貸す戸口           川越のしょび     

おしろいはすこしたいくつあきまつり  大和田美信      

秋祭役場最年少捻挫             池之端モルト     

子の担任今日は袈裟着て秋祭り          田島良生 

紅の鳴子秋まつりの一天         藤田ゆきまち     

歯の一本折って本気の秋祭       播磨陽子

絵馬に知る子の恋ごころ秋祭         板柿せっか

獅子百に百の油単や秋祭         比々き   

秋祭ここにもこんなに子がいたか     風ヒカル         

龍神の水こんこんと秋祭         平本魚水

潮騒に松明かつぐ秋祭り         文明

御霊乗せぶつける落とす秋祭り       妹のりこ  

縄手ごと溢るすずめや秋祭           椋本望生         

岩端へ汐満ちゆく秋祭                  棗椰子  

 

 

【佳作】

秋祭り女神輿の脇光る           ⑦パパ                   

地区地区のワッショイワッショイ秋祭り 8の月 

ポスターのだんじり見つめ秋祭       KAZUピー  

ビデオ見て今年は終わる秋祭り       いよかん         

秋祭り担ぎ手の笑み鈴なりに         かざみどり               

文字だけの手書きポスター秋祭       じゅん

新築やもぶり寿司食む秋祭       たま     

秋祭青年団のかつぎ棒           じょいふるとしちゃん     

軽トラに神輿引かれて島の夕         すみれ   

流鏑馬の蹄響くや秋祭           スローライフ             

風の中法被飛び行く秋祭         そまり           

氏神に初会の孫や秋祭り         ツユマメ 

秋祭り太鼓台の晴天よ           どーりー9

病床の涙かすかに秋祭り         のりのみや       

山あいをはやし立てるは秋祭り       のりぴ     

秋まつり舞いと御輿と烏賊焼きと     ひとひら 

テレワケーション神輿なき秋祭り     ひよとり2               

秋祭り今年は神事で疫病退散         ふうちゃん               

かき比べの男衆たぎる秋祭り         ペトロア         

秋祭り太鼓のおとに胸おどる         マサヤン 

秋祭車体動かすおまじない           まるかじり

帰らぬと決めた今年の秋祭り         花の首飾り

ソース味醤油味かな秋祭         菊池洋勝

川入りの神輿若衆秋祭り         亀田かつおぶし   

秋祭り特産品の市たてり         玉井令子                 

昔人の唄聞こえくる秋祭り           玉繭             

秋祭じんまもばんばも子も躍る       近江菫花         

シデ棒高く高く先導は夫秋祭         薫夏     

太鼓音にいそぎ足の子秋祭り         月雲     

秋祭日の出前から気配あり           山内三郎 

女子のみの鼓笛隊行く秋祭           小鞠                     

祝い膳大神迎え秋祭り           松山冬花 

大名行列の毛槍持つ秋祭         松本だりあ     

鳴子かざし紅にたすきの秋祭         上原まり         

米俵担ぎ手をんな秋祭り         城内幸江 

秋祭Fの鉛筆揃へをり           世良日守         

秋祭り休暇届は廃棄かな         青島     

祖父と孫二人ひよつとこ秋祭         石塚彩楓 

男衆は都会のことば秋祭         蒼奏             

夕暮れに響く太鼓や秋の声           太郎     

和太鼓の係は君と秋祭り         打楽器           

牛串の匂ふ屋台や秋祭           土佐藩俳句百姓豊哲

烏帽子舞う金比羅宮の秋祭           島村福太郎       

青空に跳ねる秋祭の神輿         藤色葉菜 

兄ちゃんと白足袋履いて秋祭り       南側             

秋祭には帰るからまた嘘か           片瀬如伽 

秋祭ドウジャドウジャの声高く       房総たまちゃん

救急車待機してをり秋祭         堀アンナ 

あきまつり子どものような父を見る   木染湧水 

婆の家いりびたる孫神輿乗る      夜香     

おなばれや街練り歩く秋祭           野中泰風

幼子の怖がりし天狗秋祭り           由美子   

秋祭ちとおめかしの地蔵かな         揺子             

手習ひの子らの撥音秋祭         良馬             

狛犬もよろこび吠えてる秋まつり     森田健司 

 

>>放送で紹介された句
>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

 

投稿時間:2020年10月10日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:秋祭(あきまつり)


2020年10月10日(土)放送

兼題:秋祭(あきまつり)

▼ギュッと!特選

猿熊鳥(さるくまとり)山に集ひて秋祭    じゃすみん

 

【解説】

こんな視点で「秋祭」を描くことができるのかと、少々驚きました。

「秋祭」の日は里も浦も、太鼓や笛や歓声で沸き立ちます。

「猿」も「熊」も「鳥」も一体何事かと、「山に集ひて」

じっと聞き耳を立てているに違いありません。

「山」も、木の実などの餌となるものが豊かに実った秋なのでしょう。

生きとし生けるもの皆、秋の実りに感謝する「秋祭」の今日は

豊作を見守って下さった田の神様が山へ帰っていく日。

田の神さまを迎えるため「猿熊鳥山に集ひて」いるのかもしれない。

そんな読みも膨らんできます。

 

▼入選

【選句ポイント】焦点を一つに絞る

 

・山頂は餅投げ始(はじ)む秋祭り  ねじり花 

【解説】

「宿毛金比羅宮の秋祭りには餅投げがあります」と

コメントがありました。

「始(はじ)む」は他動詞なので「投げ始(はじ)む」と

複合動詞で読んだほうが、現場の勢いがでるように

思います。

「餅」は冬の季語ではありますが、

この場合は、秋の豊作の感謝を捧げる「餅」。

主たる季語は「秋祭り」ですね。

 作者は、「山頂」にいるのか、「山頂」間近で

餅投げの歓声を耳にしたか。

いずれにしても、豊かな秋を喜ぶ気持ちが溢れる

一句です。

※文語「始む」=口語「始める」(口語「始まる」に対する他動詞。)

 

 

・秋祭鯛(たい)選(よ)る浜のさんざめき  藍月

【解説】

こちらは海辺の「秋祭」。

「桜鯛・花見鯛」ならば春の季語ですが、

「鯛」のみでは季語になりません。

「秋祭」の料理に使う「鯛」を選んでいるのです。

「鯛」の華やかさ、めでたさが、季語「秋祭」を言祝ぎます。

さらに後半の「浜のさんざめき」で海辺の町全体の喜びも

伝わります。

「秋祭」当日の朝でしょうか、「秋祭」を明日に控えて

準備をしているのかもしれません。

時間軸を前日、そして翌日と広げて句材を探す視点もあって

よろしいかと思います。

 

・石臼のゴリゴリゴリと秋祭り   ツユマメ末っ子@8

【解説】

「石臼」で挽いているのは、収穫した大豆

それとも蕎麦の実でしょうか。

「ゴリゴリゴリ」という当たり前のオノマトペを

「秋祭り」という季語が心躍る音に変えていくかのよう。

これもまた、秋祭りのもてなしのための「石臼」ですね。

ただ「石臼」を引いているだけなのに

季語「秋祭り」と取り合わせると、喜びと感謝が溢れてくる

これが季語の力なのだと思います。

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

◆焦点を一つに絞るヒント◆

 

・神輿(みこし)には旧(ふる)き町の名秋祭  キートスばんじょうし

・太刀(たち)は灯(ひ)を黄金(こがね)と返し秋祭     一港

【解説】

山車や神輿、お練りや舞いの動きなど細部の一点を

描写するのもコツです。

 

・秋祭水の都に「ヨイトサー」               あみま

秋祭チキテキトンと御練(おね)りかな     おぼろ月

【解説】

かけ声や、現場の「音」に注目してみるのも一手。

それぞれ勢いとテンポが違っていて、面白いですね。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年10月10日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:蜻蛉(とんぼ)


2020年9月12日(土)放送

兼題:蜻蛉(とんぼ)

▼ギュッと!特選

立てかけた金剛杖(づえ)に赤蜻蛉(とんぼ) みやこわすれ

【解説】

「金剛杖」の一語でお遍路さんが浮かび

この言葉の向こうに札所寺や四国遍路の賑わいも見えてくる

経済効率のよい言葉。

札所の本堂の前でちょいと「立てかけた」ているのかも。

中七「に」は説明的になりがちな助詞ですが、

この句の場合「金剛杖に」で、そこに「赤蜻蛉」が

止まっていることが表現できる。

うっかり「金剛杖(づえ)に止まる」と書いて

しまいそうですが、「に」の一音でそれが伝えられ

そのあたりの判断も確か。

下五「赤蜻蛉」は ♪夕焼けこやけ~の 歌のイメージもあり

今日予定している最後のお寺 そして背後には夕焼けが

広がっているのかもと思わせる。

それも季語の力。

平易な言葉で書かれていますが お念仏の声や

境内のお線香の匂いまでしてくるかのような丁寧な作品。

 

 

▼入選

【選句ポイント】季語が主役になっている

 

・四万十はとんぼうの国みずの国   はむ

【解説】

「蜻蛉(とんぼ)」は三音ですが

「とんぼう」と四音で読むこともできるのです。

「~の国~の国」との対句表現がリズムを作り

「四万十」の広々とした水面が見えてくるかのよう。

「とんぼう」「みず」の平仮名表記も明るい印象です。

 

・塩蜻蛉(とんぼ)飯盒(はんごう)の湯気ぴゅーぴゅーと   妹のりこ

【解説】

「塩蜻蛉(しおとんぼ)」は、塩辛蜻蛉(しおからとんぼ)の別称。

今まさに「飯盒(はんごう)」からは「湯気」が立ち上っている。

「ぴゅーぴゅー」というオノマトペが元気ですね。

その近くを飛んでいる「塩蜻蛉」も「湯気」が噴くたびに、

驚いて飛び逃げているのかもしれません。

臨場感のある作品です。

 

・島々の果てに広島鬼やんま           高橋寅次

【解説】

「島々の果てに広島」は瀬戸内海。

上五中七でかなり広い奥行きのある風景を描いるので

下五の着地が難しいところ。

下五を「鬼やんま」にしたのは非常にいいバランスです。

「赤とんぼ」だと瀬戸の花嫁の夕景みたいなイメージで

終わりますが「鬼やんま」だとここまでグングン飛んできて

さらに海を越え「広島」へと渡っていきそうな迫力があります。

まさに季語の力です

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

【添削前】

何気無い幼き記憶糸蜻蛉(とんぼ)  ひとひら

川蜻蛉(とんぼ)水面(みなも)に光る自粛明け  文明

【解説】

「蜻蛉(とんぼ)」は、秋の季語ですが

「糸蜻蛉」と「川蜻蛉」は、夏の季語になる。

「糸蜻蛉」の傍題には「灯心蜻蛉(とうしみとんぼ)」

「とうすみ蜻蛉」など。

そして「川蜻蛉」の傍題「鉄漿蜻蛉(おはぐろとんぼ)」

「かねつけ蜻蛉」など)も、夏の季語です。

 

【添削前】

川蜻蛉(とんぼ)水面(みなも)に光る自粛明け  文明

【添削例】

川蜻蛉水面に自粛明けの空

【解説】

「川蜻蛉水面に」で意味がひとかたまり。

前半の叙述で「川蜻蛉」も「水面」も

夏のひかりに溢れている。

そこから「自粛明けの空」と展開すると

一句の世界や心情が広がる。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年09月12日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:蜻蛉(とんぼ)添削「はじめの一歩!」


・プールサイドの 冷えたトマトに オニヤンマ  すみれ

・赤とんぼ  優雅に泳ぐ  晩夏の空    さんきゅう

帰郷して 蜻蛉(とんぼ)の種類  覚へをり   とらや

・どんなだろ トンボの眼鏡  見た景色  翡翠

[解説]

五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。

テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)にしているのは

テレビの画面が四角という事情から。

正しい表記を覚えましょう。

 

 

駅舎たたく白雨ひとり待つ老婆   香依蒼

[解説]

兼題が「蜻蛉(とんぼ)」とあれば「蜻蛉」という言葉を入れる

必要があります。

次回の兼題は「秋祭(あきまつり)」ご投句お待ちしていますよ。

      

 

糸蜻蛉白い畦道(あぜみち)ホバリング     花の首飾り

[解説]

「蜻蛉(とんぼ)」は秋の季語ですが

糸蜻蛉(いととんぼ)」は夏の季語になります。

 

 

・温暖化にて最速羽化や蜻蛉   野中泰風

[解説]

上五「温暖化にて」が説明、つまり原因理由を述べているので、

ここは外したほうがよいです。

原句の内容を率直に書けば(ニュース原稿みたいではありますが)、

以下のように。

【添削例】

蜻蛉羽化最速記録更新す

 

 

 

 

 

・屋島寺の暮色に染まる赤蜻蛉  柴田禮美

・飛ぶとんぼ宝石色に空を染め  川畑彩

[解説]

夕暮れの空の描写として「染まる」「染める」は

手垢の付いた表現に受け止められがち。

この動詞は 極力はずしたほうが得策です。

他にもいろんなやり方がありますので、

自分なりに工夫してみましょう。

【添削例】 

屋島寺の暮色の空や赤蜻蛉(とんぼ)

【添削例】 

とんぼ群れ飛ぶよ宝石色の空

 

 

・蜻蛉の羽持つ溶けそう千切れそう怖い 風ヒカル 

[解説]

自由律に挑戦したのかもしれませんがこのダラダラ感は

逆に臨場感を削ぎます。

動詞や形容詞などが多すぎるので せめて一単語削ります。

【添削例】

蜻蛉(とんぼ)の羽溶けそう千切れそう怖い

こう書けば読者は蜻蛉の羽を掴んでいることは想像してくれます。

上五は一音字余りですが、中七下五は足せば十二音。

独特の韻律も生まれますので、最後の「怖い」が際立ちます。

 

 

・赤とんぼ群れて山の遭難碑   じゃすみん

[解説]

「赤とんぼ群れて」で八音 「山の遭難碑」で八音 足して十六音。

一音の字足らずが、何らかの効果をもっているか?

と考えてみましたが中途半端。

むしろ五七五に近づけたほうが得策で複合動詞を使います。

【添削例】 

赤とんぼ群れゐる山の遭難碑

【添削例】 

赤とんぼ群れくる山の遭難碑

「群れゐる」は遭難碑の前に立った時から群れている状態。

「群れくる」は最初のそんなにいなかったのに

どんどん増えてくる状態。

それぞれ微妙なニュアンスが表現できます。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

 

投稿時間:2020年09月12日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:蜻蛉(とんぼ)秀作・佳作


2020年9月12日(土)放送

兼題:蜻蛉(とんぼ)

 

【秀作】

四万十の水面垂直なる蜻蛉            かつたろー。

うちぬきの水へ蜻蛉のランデヴー      あみま

夕蜻蛉今日も眺める不登校            スローライフ

震度8軽くとんぼは逃れたり          ドイツばば

運勢は大吉朝の鬼やんま          のど飴

蜻蛉追ふ重機の壊す生家なり          ハルノ花柊

複眼に二万の私たち蜻蛉          ひでやん

蜻蛉を増やす龍馬の風ならん          まっことマンデー

とんぼうや訴訟となった寺境          亀山酔田 

塩辛とんぼ空色の眼の空と海          ゆすらご

ロックフェスの拳を遥か鬼やんま      葵新吾 

霊山へ風のきざはし赤蜻蛉            一斤染乃

蜻蛉の空五倍子(うつぶし)色の翅の影    宮武美香 

連絡船うどんの椅子の赤とんぼ        川越のしょび

四万十の水は蜻蛉の翅の色            宮本象三                       

蜻蛉のまなこに映る馬の群れ          三泊みなと

直線を来て直角にゆく蜻蛉            七瀬ゆきこ

赤とんぼ夕餉の前の一仕事            紗智 

蜻蛉ふえゆくPKの静寂を            小野 睦  

戦士めく蜻蛉は風に乗り猛し          松井くろ               

蜻蛉二匹さらりっとダム湖蹴る        松本だりあ     

母の杖父のお下がり鬼やんま          城内幸江       

前かごの蜻蛉離るる羽の音            松山のとまと   

ツーリングの終点は浜あきつ舞ふ      裾野くみこ             

先生の鉛筆立てに蜻蛉が          石塚彩楓       

ダイナモの呻る羽音や鬼やんま        蒼奏   

北校舎四階窓を群蜻蛉            打楽器                 

吊橋の水までの距離おにやんま        田島良生 

交尾の輪の影石に美し銀やんま        東京堕天使 

みづきはに濁点をうつ鬼蜻蜓(おにやんま)    藤色葉菜       

とんぼうの恋やカーネルサンダース        藤田ゆきまち

天啓のごと浮きつるぶ蜻蛉かな            播磨陽子

そら描けと言はんばかりのあきつかな      椋本望生               

蜻蛉飛ぶ空を大きく返し縫い          富山の露玉

湯に入れば蜻蛉番ふ湯屋の隅          平本魚水       

私は原色蜻蛉の眼に捉えられ          穂積天玲       

朝風や井戸の端へと鬼やんま          棗椰子

 

 

【佳作】

とんぼうの鋭角の線白壁に            ⑦パパ

突然の虚空にとまる蜻蛉かな          KAZUピー

大空を傾けて飛ぶ蜻蛉かな            アリマノミコ

撮り鉄を蜻蛉の複眼復刻車            おぼろ月

ホバリングの銀やんまの視線の先      オルソ

肉食の飛翔力なり鬼やんま            キートスばんじょうし

レクサスの陰で重なる蜻蛉かな        じゅん

蜻蛉や向かふ札所の遠い空            じょいふるとしちゃん

鬼やんま兄はぐんぐん走り去る        そまり

とんぼうの左旋回コケコッコー        そらうみよね

小流れに野菜洗ふや蜻蛉群れ          たま

二枚羽風切るトンボ前へ飛ぶ          ツークン☆

とんぼうの尻高々とヨガポーズ        ツユマメ

固有種を守っていくよ赤蜻蛉          ツユマメ末っ子@8歳             

あかがねの空とんぼのめがねの吾子        どーりー

王国の蜻蛉ぶつかるように来る        ねじり花

自慢の体幹曲げて蜻蛉は愛し合う      のりのみや

蜻蛉の目故郷松山睨んでね            ひよとり2

四万十の蜻蛉と行きて遊歩道          ペトロア

蜻蛉の眼の奥は夕陽色            まるかじり

追へば惹く惹けば追ふ恋蜻蛉飛ぶ      ヤチ代

中庭に不意のまろうど夕とんぼ        ラーラ

橋渡る蜻蛉と共にバス停へ            れんげ畑       

蜻蛉やモネの描きし池と過去          伊予吟会 宵嵐

驚きて吼えて笑うて鬼やんま          一港   

己が影石にそと置く秋茜             一生のふさく

雨上がり蜻蛉に蜻蛉垂れ下がる        花紋   

蜻蛉の複眼ごとリモート画面          我省           

あめ細工のごと蜻蛉の羽は雨にぬれ        蟹丸           

蜻蛉かなお遍路さんの杖の先           亀田勝則

とんぼうや頭に載せる老眼鏡          菊池洋勝

校庭に児童の陰と赤とんぼ            宮井直樹       

どの島で生まれ来たのか蜻蛉飛ぶ      玉井瑞月 

鬼やんま清流に沿ひ低く飛び          玉井令子

病室を覗き込むよに蜻蛉かな          玉繭           

阿吽雀の城へ赤蜻蛉飛ぶ             近江菫花       

渋滞を蜻蛉が伊予の早曲り            高尾里甫       

ため池に卵を返す蜻蛉かな            山内三郎       

とんぼうの翅の滴をくださいな        紗千子         

鬼やんま突きあたりまでまっすぐに        小鞠           

作業着の肩かすめ行く夕蜻蛉          小池令香               

何ゆえに色薄れけり赤トンボ          昇徳   

清流に尾を打つ蜻蛉追いかけて        松山冬花       

とんほの眼シェスタむさぼる事ありや      上原まり 

風に乗りおしどり蜻蛉のランデブー        森本正男 

そよ風の穂先に揺れる蜻蛉の目        水晶文旦       

王国の蜻蛉四万十川に消ゆ            水蜜桃 

円柱の大気を廻す蜻蛉かな            世良日守               

水面引っ掻き塩辛蜻蛉産卵す          石塚彩楓 

夕日さす教室一人とんぼ来る          大津美         

とんぼうや大人はいつも空の色        大槻税悦

蜻蛉のとまる菅笠海間近          池之端モルト           

トンボ飛ぶ葉先のしずくそのままに        忠孝   

そらあみへ飛び立つ蜻蛉青い空        土佐藩俳句百姓豊哲

ギンヤンマ時速70キロの空の旅       島村福太郎

鬼やんま畑のネットすり抜ける        桃子ママ

蜻蛉来てカーペンターズ聴いてみる        南側   

とんぼうの空へ瓦をはふりけり        板柿せっか

絶対者の眼ぢからさみし鬼蜻蜓(やんま)  比々き 

金色の眼の蜻蛉遠山に            堀アンナ               

ノスタルジーがわからないから鬼やんま    木染湧水

とんぼ舞う主役不在の野球場          藍月   

鬼やんま廃屋の庭ゆうゆうと          良馬   

カップ酒父の墓石に赤蜻蛉            六手           

昨日より速く走りて蜻蛉かな          戌亥

蜻蛉止まり勝虫となるヘルメット          韋駄天(いだてん) 

蜻蛉や虚空(そら)の産道とおり抜け        揺子

殿様の庭は縄張り赤蜻蛉          扶佐子 

蜻蛉追い右へ左へ下校中          めりっさ

 

>>放送で紹介された句
>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

 

投稿時間:2020年09月12日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:素麺(そうめん)


2020年7月11日(土)放送
兼題:素麺(そうめん)

▼入選

・食欲ないと言うて素麺食うこと食うこと   ドイツばば

・さらさらときらきらと素麺を盛る      のど飴

・沢登り足袋とザイルと素麺と             紗智

 

【ポイント】おいしく・涼やかに詠む

 

 

▼ギュッと!特選

放たれてりうりう流れくる素麺    七瀬ゆきこ

 

【解説】

一句の構造に工夫があります。

「放たれて」のあとに「りうりう」とくれば、

水に放たれる魚かな? 風に放たれる鯉のぼりかな? と

一瞬思います。

次に続くのが「流れくる」 ん? 魚や鯉のぼりなら、

「流れくる」も妙だな……と思った瞬間、「素麺」という

映像が最後に出てくるのです。

素麺流し! と合点したとたん、気持ちのよい澄んだ水と

心地よい涼気が伝わってきます。

「りうりう」というオノマトペ(擬態語)が、

樋を流れる水にのる「素麺」の質感も描きます。

 

 

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

【添削前】

初帰省素麺みやげの連絡船   宮武花芳

 

【解説】

「帰省」と「素麺」が夏の季語。

この場合は、故郷に帰るということが伝わればいいので

「帰省」と書かなくても成立します。

 

【添削後】

素麺が土産帰郷の連絡船

 

【解説】

「素麺が土産/帰郷の連絡船」と斜め線のところに

意味の切れ目があります。

句またがりという型をつかって、「帰省」という

季語に近い意味を「帰郷」の一語に替えました。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

>>秀作・佳作・写真俳句

 

投稿時間:2020年07月13日 (月) 11:40 | 固定リンク


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