兼題:桜鯛(さくらだい)「夏井いつきのアドバイス」


◆夏井いつきから「俳号」についてのお願い
 
同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。

 「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。

 

◆兼題がない?!

骨のコブうずしおおぼゆだしの味         ちえふゆ

ピンク纏(まと)い海より一尾春麗(うら)ら     ふじ

鯛ごはん息子と囲む九年目の春           桃猫

鯛は刺身か塩むしか春の帰路             海野郎

春来たり安堵坩堝(あんどるつぼ)と瀬戸の鯛     泰

[解説]

兼題である春の季語「桜鯛」を詠もうとしているのはわかるのですが、募集兼題はテーマではなく「桜鯛」という季語を詠み込むのがルール。

 

◆季重なり
桜鯛春をつげるか藍き海        小松カヅ子

花びらヒラと降りて寿司桜鯛        ドキドク

水温(ぬる)み春待つ我に桜鯛      にゃんた

釣れた春光の道に桜鯛             宏峰

渦潮に垂れる糸先桜鯛          ぽんかん太郎

[解説]
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」という。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「桜鯛」以外のどれが季語なのか歳時記を開いて調べてみるのも勉強になる。

 

◆秀作への道
祝いの日息子が食べた桜鯛                     マユミ62

[解説]
何の祝いなのか漠然としている。「息子」がどのぐらいの年齢なのか、これだけではわからない。

 

お食い初め生命溢るる桜鯛                     ハナショウブ

桜鯛お食い初め子の頬の色                     南無スカル

[解説]
「お食い初め」という言葉が入ることで子の年齢がわかり、さらに儀式の場面であることも伝わりますね。ただ「生命溢るる」は抽象的な説明。そして「お食い初め子」といういい方が少々寸詰まりな書き方になっている点も気になる。

 

お食い初め歯の頼もしや桜鯛                   おこそとの

[解説]
中七「歯の頼もしや」と描写する姿勢はよいのですが、お食い初めの儀式は生後100日頃(三ヶ月~四か月ぐらい)。赤ちゃんの歯が生えるのは生後八か月ぐらいからかな。

比喩だと考えるのも、少々無理がありそうな……。

 

桜鯛片手に力士恵比寿(えびす)顔           山川腎茶(佳作)
横綱がかかげて笑顔桜鯛             翡翠(佳作)
[解説]
「力士」と「桜鯛」を描いた二句、ここまで書けていれば佳作ですが、「恵比寿顔」「笑顔」がややありがちなワード。

 

関取の紅潮や手に桜鯛               たま(秀作)
横綱の破顔両手に桜鯛               宮武美香(秀作)

[解説]
「紅潮」「破顔」によって、関取や横綱の表情が生き生きしてくる。

 

横綱の上腕ほどの桜鯛               池之端モルト(秀作)

[解説]
どれほどの大きさなのかを比較することで映像化した一句。

 

大関となりて掲げる桜鯛             とべのひさの(秀作)
[解説]
「大関となりて」で優勝して昇進が決まったという場面があることが想像できる。

小さな工夫が「秀作への扉」を開く。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2022年03月12日 (土) 07時30分


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