兼題:鹿(しか)「夏井いつきのアドバイス」


●「俳号」について 夏井いつきからのお願い
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は「自分の作品をマーキングするための印」でもあります。せめて俳号に名字をつけていただけるとありがたく、共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が「複数の俳号」を使って投句するのはご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せばどれか紹介されるだろう」という考え方は俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。

 

 

◆季重なり

朝焼けの町かっ歩する奈良のシカ    中村のりぴ

小鹿にも仰ぐ空あり黄落期       中矢長宗

奈良の鹿撫でし記憶や秋の空     野菊

山霧や突如飛び出す親子鹿       ゆづりん

[解説]
それぞれ「鹿」という言葉は入っているが、「朝焼け」「黄落期」「秋の空」「山霧」などが主たる季語となっている。

 

◆季語深耕

茶のセーター十六夜こぼれ鹿の子模様    さぬきの風

花札の紅葉と鹿の札を打つ       ツークン☆

[解説]
「鹿」の文字は入っているが「鹿の子模様」は模様の種類、「鹿の札」は花札の種類。どちらも季語とは言い難い。

 

鹿の糞(ふん)見つけし青いフンコロガシ    松山のオジサン

鹿の糞(ふん)よい土にする虫を知り    真帆

鹿のふんかがやく虫のころがしぬ  どいけず

鹿のふん豆だ々と子らがゆう      謨斉大工

[解説]
「鹿の糞(ふん)」の句がたくさん寄せられた。
調べてみると、鹿の糞(ふん)を自然に返す分解の働き手として「フン虫」という種類の生き物がいるそうだ。奈良公園に住むフン虫は、ルリセンチコガネの鮮やかな瑠璃色に驚いた。一句目の「青いフンコロガシ」はこれだなと合点した。
鹿の糞(ふん)も句材なのでどんどん詠んでいいのですが、今回の兼題は「鹿」なので「糞(ふん)」を描きつつ「鹿」そのものを描いて欲しいなと思う。例えば、「秀作」に推したこの句などがお手本になりそう。

ぽぷぷぷと糞(ふん)する鹿と目が合(お)うて   いさな歌鈴

◆今月の添削

杖の音に山崖を飛ぶ鹿夕の逍   白髪

[解説]
材料が多すぎ、材料をギリギリ削いで整えてみよう。

【添削例】杖音や崖飛ぶ鹿の夕ざるる

「山」、「逍」を外しただけでも韻律がゆったりとしてくる。

 

山里や田は荒れはてて鹿鳴き近く   酔蓮

[解説]
「山里」、「田」と地理的な情報が重複している、そして最後の「近く」が唐突であること、その2点が気になる。
鹿が近くで鳴いているのは、山や田が荒れてしまったからだよ、ということを伝えたいのであれば、こんな感じになるでしょうか。

【添削例】鹿近く鳴く荒れ果てし山よ田よ

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2021年10月09日 (土) 07時30分


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