兼題:栗(くり)


2021年9月11日(土)放送

兼題:栗(くり)

▼兼題の季語「栗」解説

さまざまな傍題があるのが季語「栗」の特徴。

毬(いが)に入っている状態の「毬栗(いがぐり)」、中身がからっぽの「虚栗(みなしぐり)」
熟して毬が開いている栗を意味する「笑栗(えみぐり)」、産地の名を冠した「丹波栗」「中山栗」など。さらに地理情報を含む「栗山」「栗林」、調理して「焼栗」「茹栗」「栗飯」、菓子として「栗羊羹(くりようかん)」「栗饅頭(くりまんじゅう)」「栗鹿の子」「栗きんとん」「マロングラッセ」など、産地から加工されたものまで幅広い季語をもつ。

 

 

▼選句ポイント

季語「栗」が動かない

俳句の世界では「季語が動く」という評言がある。他の季語に替えても一句が成立してしまう時に使う言葉だ。特に「栗」のような季語は、「梨」でも「柿」でもいいじゃないかという具合になりがち。
今回は、季語「栗」でなければ成立しない句を選んだ。

 

 

▼ギュッと!特選

原始よりをんなは栗を拾ひけり      伊奈川富真乃

[解説]
栗は縄文時代から食材や木材、そして燃料としても使われてきた木。栗を拾っていると、縄文の頃から女たちは皆こんなふうに栗を拾ってきたのだなあと、しみじみと実感した。
「栗」を拾うという行為が原始からの生きる営みであったのだという感慨が、どっしりとした作品になっている。「縄文」という言葉を使った句は他にもありましたが、「原始」という言葉を使うことでより強い、生き抜いてきた力を印象付ける。

 

 

▼放送でご紹介した「秀作」

栗むくやナイフの跡は多角形       じょいふるとしちゃん

[解説]
切っている場面だが「むく」という行為を強調詠嘆しておいて、「ナイフ」によって削られた部分を丁寧に描写。「多角形」で剥いた栗の断面がみえる。

 

摑(つか)み取る栗一キロの手の形    友健

[解説]
売っている人の「手」がプロの手なんだろう。「摑み取る~手の形」でかなり正確に「1キロ」がつかめてしまう、この観察眼もいい。

 

柴栗の弾(はじ)ける墓や父母の墓     こぼれ花

[解説]
「柴栗」は小さくて味がよい栗。「柴栗の弾ける墓や」で弾ける様子や墓石そのものを大写しにしておいて、それが「父母の墓」であると展開するのが上手い。

 

毬(いが)栗や昨日幹太は父になり      南側

[解説]
「毬栗」をアップで強調詠嘆しておいて「昨日」と時間を巻き戻し、「幹太は父になり」と言い切るこの語順が上手い。「父となり」としてもよいかとは思うが、父になった息子?に対する思いが「毬栗」との取り合わせで表現できている。

 

 

▼放送でご紹介した「佳作」

栗という大きな種を茹(ゆ)でて食う      れんげ畑

[解説]
季語「栗」を調べただけに終わるのではなく、この句は俳句のエリアに入ってきている。「栗という大きな種」という表現にささやかな詩がある。

 

お仏飯(ぶっぱん)の栗小さめに切ったよ  織部なつめ

[解説]
「お仏飯」のための栗飯だから栗を小さく切っている。具体的に書くことによって映像が作れている。調べが五七五を裏切ってるけど、語り口調をよしとしよう。

 

 

▼放送でご紹介した「秀作への道」

<ポイント>「凡人ワード」に気をつけて!

①栗ごはん甘塩黒ゴマ母の味              浜松 泉

②栗ご飯母の思い出こめて炊く            佐藤壱伍

③母想う煎り胡麻塩(ごましお)と栗赤飯   真湖

[解説]
似たような発想を「類想」、似たような句を「類句」という。俳句でよく使ってしまいがちな「~の味」「思い出」「想う」は、要注意の「凡人ワード」。
「凡人ワード」に頼ると、類想類句の句になりやすい。

 

>>夏井いつきのアドバイス
>>秀作・佳作

 

 

投稿時間:2021年09月11日 (土) 07時30分


ページの一番上へ▲