兼題:新茶「夏井いつきのアドバイス」


◆「兼題」とは?

椿皿走り茶殼の箸休め          小早終子

若草の色だけ愛でて流すコロナ禍の家庭科  渡せないバトン

[解説]
兼題「新茶」とあれば、この季語を詠み込むことが必須です。

 

◆季重なり

梅雨の入り甘い新茶のつまみ食い 古松庵人

日が暮れて新茶で一杯麦焼酎     アル中

五月空梅と新茶出番待つ        松野のマル

[解説]
一句に複数の季語が入った秀句もありますが、最初は一句一季語からの練習。「歳時記」を開いてどれが季語か確認してみましょう。

 

語らずも淹れる新茶の風薫り     津国智之

[解説]
新茶の香りを「風」と喩(たと)えているのだろうなとは思うのですが、「風薫る」という季語があるのでそこが気になるところ。

 

◆5音分の勝負

新茶摘む淡い緑に癒やされて。        あっつさん

リビングに新茶の余韻福が増す        かざみどり

新茶してひとりっきりの至福時        そまり

幼き日新茶香る懐かしさ             鶴

[解説]
4句とも下五が不要、再考してみましょう。

 

◆助詞「で」

同じ干支母と娘で新茶飲む            立葵

[解説]
中七「で」が説明的な助詞の使い方になっている。

【添削例】干支同じ母と娘や新茶汲(く)む

 

仏前の初新茶で父思ふ               翡翠

青天を写して田で飲む新茶かな        あぽろ

すごもりで新茶の味身にしみる        まあくん

[解説]
これら3句も助詞「で」が説明的になっていて気になるところ、再考してみましょう。

 

◆添削

認知の祖母にっこり笑う新茶摘み        環

[解説]
祖母は茶摘みを見てるだけなのか、自分も茶摘みをやってるのか。そこが分かるように書きたいですね。例えば、実際に摘んでいるのであれば……

【添削例】祖母は笑む忘れたはずの新茶摘み

 

新茶の香(か)諍(いさか)いさえも脇に置く     ウクレレみっちゃん

「さえも」が言い過ぎ。普通の書き方をしただけで、気持ちはちゃんと伝わりますよ。

【添削例】諍(いさか)いを脇に置いたる新茶の香(か)

 

◆今月の文明くん

新茶摘む働き者の手皺(しわ)多し       文明(佳作)

[解説]
下五の着地を考えるのも大事な工夫。下五を「皺(しわ)多し」とクローズアップするのではなく「新茶摘む」という季語の現場をより鮮明に表現する語順を考えるべき。

【添削例】新茶摘む皺(しわ)多き手は働く手

下五「働く手」という表現が、上五「新茶摘む」へ戻っていくような印象になりますね。

 

◆今月のユニー句
新茶香るフードコートに人疎ら          伊予吟会 宵嵐(秀作)

[解説]
「フードコート」の一語がユニーク。スーパーのような場所だと分かりますし、下五で人出のないコロナ禍の光景に違いないと想像ができる。こんな場面にも「新茶」は生き生きと薫り立っていますよ。

 

ロンドンは雨餞別(せんべつ)の新茶かな 池之端モルト(秀作)

[解説]
「ロンドン」と「新茶」の取り合わせがユニーク。ロンドンは今日も雨らしいよ。お餞別として日本のこの新茶を、という場面に味わいがある。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2021年06月12日 (土) 07時30分


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