兼題:楊梅(やまもも)の花「夏井いつきのアドバイス」


◆兼題とは?

瑞の光夢見し春に君想う  如月心晴

[解説]
今回の兼題は「楊梅の花」、季語が兼題として出題される場合はその季語を詠み込む必要があります。

 

◆正しい表記とは?

花穂一途  やまももの花  かぜまかせ   華 香

[解説]
五七五の間を空けないのが、俳句の基本的な表記です。まずはここから覚えましょう。

 

◆兼題は「楊梅」ではなく

やまもも実色づく赤いルビー色           ツークン☆

楊梅や隣も今は老夫婦                  ヤチ代

揚梅は逞(たくま)しき赤母は畠               ツユマメ

楊梅熟るるコロナ禍の実家かな                 花  小雪

街路樹の楊梅つつく都会(まち)の鳥            花の首飾り

ヤマモモの実に君想う色と魅せられて            津国智之

土佐の山赤き花と実ヤマモモで                 七折梅王子

赤黒き楊梅のなる山恋いし                     井上喜代子

[解説]
「楊梅の花」は「春の季語」です。「楊梅」は実を意味する「夏の季語」になります。

 

楊梅の赤のひかりの真下に居る                 花紋

楊梅は意外と甘い反抗期                      小野睦

楊梅を千年先の子にあげる                     城内幸江

楊梅や小声で夜を教えませう                   大和田美信

[解説]
ちなみに上記の4句は、「楊梅」(夏の季語)としては秀逸でした。

 

◆季語をよく観察しよう

実は見れどヤヤモモの花いまだ見ず     メイさん

楊梅花記憶に薄しやま育ち            勇

[解説]
確かに実の赤は印象に残りますが、「楊梅の花」は意識して見つけようとしないと、なかなか目にとまりません。是非探して観察してみましょう。

 

◆添削

楊梅の花の心臓赤かりき             亀田かつおぶし

[解説]
花の赤を「心臓」と比喩しました。独特の形なので肉体の一部みたいな感じはします。惜しいのは「き」。これは(基本的には)過去の意味を持つ助動詞。今、目の前にある「楊梅の花」を描いてこその一物仕立てなので、過去にしないほうが得策です。

【添削例】 楊梅の花の心臓とは赤し

「~とは」という叙述が理屈っぽく感じるようでしたら

【添削例】 楊梅の花の心臓赤し赤し

下五の字余りになりますが、リフレインする方法もあります。「赤し暗し」「赤し苦し」とアレンジすることも可能です。

 

◆質問

楊梅の花猫さかる夜明けどき           鈍亀  

この時期 、猫の異様な声にせっかくの眠りをじゃまされてしまいます。「猫さかる」としたのでは季重なりになるのでしょうか?投句後に気になったので「楊梅の花猫の声夜明けどき」と「猫の声」に変えてみました。先生のおっしゃる「取り合わせ」の俳句もむずかしいですね。

[解説]
「猫の異様な声にせっかくの眠りをじゃまされて」ということが表現したいのならば、ズバリ「猫の恋」で一句作られたらよいかと思います。再投句の「楊梅の花/猫の声/夜明けどき」は三段切れになっている点に問題があります。

あえて季語「楊梅の花」と「猫の声」を取り合わせたいのであれば、ちゃんと季語を主役にする配慮が必要です。
【添削例】楊梅の花や夜明けの猫の声

季語を「や」で詠嘆し、「猫の声」のトーンをおさえました。が、二つの材料を切り分けることをお勧めします。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2021年04月10日 (土) 07時30分


ページの一番上へ▲