兼題:白子干(しらすぼし)


2021年2月13日(土)放送

兼題:白子干(しらすぼし)

 

▼選句ポイント

・意外な発想

・想像力をかきたてる

 

 

▼ギュッと!特選

摘(つ)まんでは富士の形にしらす干し     妹のりこ

[解説]
「摘(つ)まんでは」は「指先」、指先で何かをつまんでいると思えば、いきなり中七に「富士」がでてきて読者の脳は一瞬「え?」と思います。「なぜ富士山?」と思った瞬間「~の形」と比喩に展開し、下五で「しらす干し」と肝心の季語をだしてくるこの構成に工夫があります。白子干(しらすぼし)というヤツは、ついつい摘(つ)まんでしまうものです。摘(つ)まむ度にその指が「富士の形」の白子(しらす)の山を形作り、山は次第に小さく低くなっていく。やめられない止まらない、そんな「しらす干し」の美味さも、言外に語っている作品です。

 

 

▼入選

猫振り向かず篭(かご)百枚のしらす干し     すみれ

[解説]
さすがの猫たちもこの時期にはいつもそこに「しらす」が干してあるものだから、振り向きもしない。白子漁が盛んな海辺の日常を切り取った一句です。「篭(かご)百枚」という数詞によって映像を描いている点も、この句の工夫です。

 

潮荒れの手をこぼるるや白子干(しらすぼし)   伊奈川富真乃

[解説]
「潮荒れの手」のアップにリアリティがあります。一気に潮の匂いと、ザラザラした感触も伝わります。その手を「こぼるるや」とこぼれていくモノがあることを強調・詠嘆しておいて、そのモノである「白子干し」を配する。丁寧な描写力を褒めたい作品です。

 

粥(かゆ)の海に放つ百態白子干(しらすぼし)  裾野くみこ           

[解説]
お粥(かゆ)やご飯に「白子干(しらすぼし)」をのせてという句は沢山あったのですが、「粥(かゆ)の海に放つ」という表現が面白いですね。「百態」という「白子干(しらすぼし)」のさまざまな形が、まるで元の海に戻っていくかのような面白さがあり、想像力をかきたてられます。

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

【添削前】朝粥(あさがゆ)に振りたる柔きしらす干し  小鞠

【添削後】朝粥(あさがゆ)に振るやはらかき白子干(しらすぼし)

[解説]
「たる」は完了の意味になるので、振るという行為が今、完了した、というニュアンスです。 この句は、朝粥(あさがゆ)にふっくらと柔らかい「白子干(しらすぼし)」を振ったというその感触を伝えたいわけですから、完了の助動詞「たる」は損。

普通に「振る」と書けば、やわらかい白子干(しらすぼし)を指先につまんで、今まさに振っている一句になります。表記も「やはらかき」と平仮名書きにし、下五「白子干」を漢字で書くほうが、季語の印象がはっきりします。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

 

投稿時間:2021年02月13日 (土) 07時55分


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