兼題:紅葉(もみじ)添削「はじめの一歩!」


手を広げ 描く細石は  紅葉色      安曇   

・眼下なる  五色紅葉が   何もかも      芳郎

靴裏の  紅葉に残る  夏の跡      三上 慧        

もみじ散り  都思いて  白峯寺        青島しき

[解説]

五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。

テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)に

しているのは、テレビの画面が四角という事情から。

正しい表記を覚えましょう。

 

・哀れ彼岸花紅葉紅葉と云ふけれど     いつきなつを    

[解説]

「彼岸花」と「紅葉」の季重なりです。

むしろ「紅葉」が脇役になっている点に問題があります。

 

・もみじ狩りハンカチくるむ秋一つ   ツークン☆

[解説]

「もみじ狩り」「秋」が秋の季語 「ハンカチ」は夏の季語。

兼題は「紅葉」ですが、この句の場合は「もみじ狩り」を

諦めたほういいでしょう。

中七下五には、詩になる要素があります。

 

季節(とき)めぐり色づく紅葉コロナ禍も       宮井直樹      

[解説]

季語ではありませんが、一句に「季節」という

言葉を入れて成功する例は稀(まれ)です。

季語を一つ入れるだけで(この句では「紅葉」になりますが)

季節がめぐってまたこの時期がきたという

ニュアンスは伝わるのです。

「季節(とき)めぐり」は不要の言葉になります。

そこから一句の構成を考え直してみましょう。

 

銀杏黄葉うぶすな道の途中下車   裾野くみこ

青峰の黄葉を突きて根来寺や     青島              

[解説]

「銀杏黄葉」も季語ではありますが、兼題「紅葉」とあれば

「紅葉」という言葉を入れる必要があります。

 

我が家にはいつでも紅葉野村かな       翡翠

[解説]

作者から「我が家のシンボルツリーは「野村紅葉」という

いつも紅葉している種類です」と補足されていました。

「野村紅葉」という名前を初めて知ったのですが 

うーむ、これを季語として認識してよいのか?

困ってしまいました。

秋に落葉するとのことですから、ノムラモミジが

落葉する時期という季節感があるのかもしれません。

 

向かひけりマイントピアの紅葉かな     どーりー3    

[解説]

「けり」「かな」と強い切れ字が2カ所にあります。

感動の焦点がブレるので、俳句ではこのような使い方を嫌います。

どちらをいかしたいかによって、一句の展開は大きく変わります。

仮に「向かいけり」をいかすとしても

①移動していくという意味なのか、②今紅葉の前に立っているのか

それによっても下五の表現が変わります。

【添削例】①向かいけりマイントピアの紅葉へと

【添削例】②向かいけりマイントピアの照紅葉(てりもみじ)

 

・てっぺんを神になでられ薄紅葉(うすもみじ)    キートスばんじょうし       

[解説]

神が色をつけるのではという発想はありはしますが

「薄紅葉」に感動する気持ちには共感します。

もったいないのは中七 「~なでられ」がやや散文的な

叙述になっています。例えば…

【添削例】てっぺんを神のなでしか薄紅葉

「神がなでたのだろうか」というニュアンスなります。

さらに、意味合いがちょっと変わりますが

【添削例】てっぺんをなでしか神の薄紅葉

神社の杜のようなニュアンスを加えつつ

神がなでたのかもしれませんねという句になるので

少し奥行きが生まれます。

 

・濃紅葉や六十メートル自由落下      蒼求

[解説]

「六十メートル」を「落下」していくという

視点はおもしろいと思います。

「自由落下」という科学用語を持ち込むことも

悪くないのですが、この句の場合「六十メートル」と

「自由落下」二つ入れるのは無理があります。

俳句は17音しかありませんから、仮に「六十メートル」を

いかすとすれば、上五に字余りで置くのが効果的です。

【添削例】六十メートル落下崖紅葉の一葉

「紅葉」は3音の季語なので

「谷紅葉」「山紅葉」「崖紅葉」など場所情報を加えると

ちょうど5音になります。

「朝紅葉」「夕紅葉」など、時間情報を入れることもできます。

 

散骨の海凪いで紅葉が震う     堀アンナ

[解説]

これも素材がよく、ちょっとした言い回しで

さらに良くなります。

「紅葉」を「もみじ」と読ませたいか

「こうよう」と読ませたいかによって

微妙にニュアンスが変わります。

  【添削例】 散骨の海凪ぎ紅葉が震ふ

  【添削例】 散骨の海凪ぎ紅葉ふるへけり

 

大歩危(おおぼけ)の雨濃くなりぬ紅葉かな     宮本象三

[解説]

とても惜しい一句。

「大歩危(おおぼけ)」という地名「雨」が濃くなるという感知

さらに「紅葉かな」という詠嘆もしっとりと着地できています。

もったいないのは中七「ぬ」です。

完了の助動詞「ぬ」の終止形ですからここで意味が切れ

調べもここで切れてしまうのです。

意味の上でつなげると「雨濃くなりぬる」と連体形にしないと

いけないのですが中七が、8音になってしまいリズムが滞ります。

対処方法は二つ「ぬ」を諦めるか「かな」を諦めるか。

【添削例】 大歩危の雨濃くなれる紅葉かな

【添削例】 大歩危の雨濃くなりぬ夕紅葉

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07時55分


ページの一番上へ▲