兼題:蜻蛉(とんぼ)


2020年9月12日(土)放送

兼題:蜻蛉(とんぼ)

▼ギュッと!特選

立てかけた金剛杖(づえ)に赤蜻蛉(とんぼ) みやこわすれ

【解説】

「金剛杖」の一語でお遍路さんが浮かび

この言葉の向こうに札所寺や四国遍路の賑わいも見えてくる

経済効率のよい言葉。

札所の本堂の前でちょいと「立てかけた」ているのかも。

中七「に」は説明的になりがちな助詞ですが、

この句の場合「金剛杖に」で、そこに「赤蜻蛉」が

止まっていることが表現できる。

うっかり「金剛杖(づえ)に止まる」と書いて

しまいそうですが、「に」の一音でそれが伝えられ

そのあたりの判断も確か。

下五「赤蜻蛉」は ♪夕焼けこやけ~の 歌のイメージもあり

今日予定している最後のお寺 そして背後には夕焼けが

広がっているのかもと思わせる。

それも季語の力。

平易な言葉で書かれていますが お念仏の声や

境内のお線香の匂いまでしてくるかのような丁寧な作品。

 

 

▼入選

【選句ポイント】季語が主役になっている

 

・四万十はとんぼうの国みずの国   はむ

【解説】

「蜻蛉(とんぼ)」は三音ですが

「とんぼう」と四音で読むこともできるのです。

「~の国~の国」との対句表現がリズムを作り

「四万十」の広々とした水面が見えてくるかのよう。

「とんぼう」「みず」の平仮名表記も明るい印象です。

 

・塩蜻蛉(とんぼ)飯盒(はんごう)の湯気ぴゅーぴゅーと   妹のりこ

【解説】

「塩蜻蛉(しおとんぼ)」は、塩辛蜻蛉(しおからとんぼ)の別称。

今まさに「飯盒(はんごう)」からは「湯気」が立ち上っている。

「ぴゅーぴゅー」というオノマトペが元気ですね。

その近くを飛んでいる「塩蜻蛉」も「湯気」が噴くたびに、

驚いて飛び逃げているのかもしれません。

臨場感のある作品です。

 

・島々の果てに広島鬼やんま           高橋寅次

【解説】

「島々の果てに広島」は瀬戸内海。

上五中七でかなり広い奥行きのある風景を描いるので

下五の着地が難しいところ。

下五を「鬼やんま」にしたのは非常にいいバランスです。

「赤とんぼ」だと瀬戸の花嫁の夕景みたいなイメージで

終わりますが「鬼やんま」だとここまでグングン飛んできて

さらに海を越え「広島」へと渡っていきそうな迫力があります。

まさに季語の力です

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

【添削前】

何気無い幼き記憶糸蜻蛉(とんぼ)  ひとひら

川蜻蛉(とんぼ)水面(みなも)に光る自粛明け  文明

【解説】

「蜻蛉(とんぼ)」は、秋の季語ですが

「糸蜻蛉」と「川蜻蛉」は、夏の季語になる。

「糸蜻蛉」の傍題には「灯心蜻蛉(とうしみとんぼ)」

「とうすみ蜻蛉」など。

そして「川蜻蛉」の傍題「鉄漿蜻蛉(おはぐろとんぼ)」

「かねつけ蜻蛉」など)も、夏の季語です。

 

【添削前】

川蜻蛉(とんぼ)水面(みなも)に光る自粛明け  文明

【添削例】

川蜻蛉水面に自粛明けの空

【解説】

「川蜻蛉水面に」で意味がひとかたまり。

前半の叙述で「川蜻蛉」も「水面」も

夏のひかりに溢れている。

そこから「自粛明けの空」と展開すると

一句の世界や心情が広がる。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年09月12日 (土) 07時55分


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