夏井いつきの四季めぐり

兼題:白子干(しらすぼし)


2021年2月13日(土)放送

兼題:白子干(しらすぼし)

 

▼選句ポイント

・意外な発想

・想像力をかきたてる

 

 

▼ギュッと!特選

摘(つ)まんでは富士の形にしらす干し     妹のりこ

[解説]
「摘(つ)まんでは」は「指先」、指先で何かをつまんでいると思えば、いきなり中七に「富士」がでてきて読者の脳は一瞬「え?」と思います。「なぜ富士山?」と思った瞬間「~の形」と比喩に展開し、下五で「しらす干し」と肝心の季語をだしてくるこの構成に工夫があります。白子干(しらすぼし)というヤツは、ついつい摘(つ)まんでしまうものです。摘(つ)まむ度にその指が「富士の形」の白子(しらす)の山を形作り、山は次第に小さく低くなっていく。やめられない止まらない、そんな「しらす干し」の美味さも、言外に語っている作品です。

 

 

▼入選

猫振り向かず篭(かご)百枚のしらす干し     すみれ

[解説]
さすがの猫たちもこの時期にはいつもそこに「しらす」が干してあるものだから、振り向きもしない。白子漁が盛んな海辺の日常を切り取った一句です。「篭(かご)百枚」という数詞によって映像を描いている点も、この句の工夫です。

 

潮荒れの手をこぼるるや白子干(しらすぼし)   伊奈川富真乃

[解説]
「潮荒れの手」のアップにリアリティがあります。一気に潮の匂いと、ザラザラした感触も伝わります。その手を「こぼるるや」とこぼれていくモノがあることを強調・詠嘆しておいて、そのモノである「白子干し」を配する。丁寧な描写力を褒めたい作品です。

 

粥(かゆ)の海に放つ百態白子干(しらすぼし)  裾野くみこ           

[解説]
お粥(かゆ)やご飯に「白子干(しらすぼし)」をのせてという句は沢山あったのですが、「粥(かゆ)の海に放つ」という表現が面白いですね。「百態」という「白子干(しらすぼし)」のさまざまな形が、まるで元の海に戻っていくかのような面白さがあり、想像力をかきたてられます。

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

【添削前】朝粥(あさがゆ)に振りたる柔きしらす干し  小鞠

【添削後】朝粥(あさがゆ)に振るやはらかき白子干(しらすぼし)

[解説]
「たる」は完了の意味になるので、振るという行為が今、完了した、というニュアンスです。 この句は、朝粥(あさがゆ)にふっくらと柔らかい「白子干(しらすぼし)」を振ったというその感触を伝えたいわけですから、完了の助動詞「たる」は損。

普通に「振る」と書けば、やわらかい白子干(しらすぼし)を指先につまんで、今まさに振っている一句になります。表記も「やはらかき」と平仮名書きにし、下五「白子干」を漢字で書くほうが、季語の印象がはっきりします。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

 

投稿時間:2021年02月13日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:白子干(しらすぼし)添削「はじめの一歩!」


◆「兼題」とは?

にわか雪家族暖欒枯れ紅葉   京三昧

[解説]
「兼題」とは、あらかじめ出題するお題のことです。本番組では、毎回兼題を出題しています。今回の兼題は「白子干(しらすぼし)」。次回は兼題を確認の上、再度挑戦して下さい。

 

 

◆正しい表記とは?

・しらすぼし 瀬戸の足跡  砂肝だ ターくん

・白子干し  ジッと狙う  猫の顔    猫雪

瀬戸の陽や、口一杯に、しらす干し 佳匠

白子干、潮風香る、春だより。    ツークン☆

[解説]
五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)にしているのは、テレビの画面が四角という事情からです。
正しい表記を覚えましょう。

 

 

◆推敲(すいこう)のポイント

・量り終へ少しおまけと白子(しらす)干し 蒼奏

・量り針止まり「おまけ」と白子干(しらすぼし)  棗椰子

[解説]
俳句はたった17音しかないので「類想類句=似たような発想、似たような句」ができるのは宿命、とはいえ、ほんの小さな配慮が評価の分かれ目となることもあります。「量り」「おまけ」「白子干(しらすぼし)」同じ言葉をこれだけ使って、ほぼ同じ場面を描いている二句ですが、「秀作」に入るか入らないかの線引きがどこにあるのか解説します。
蒼奏さんの句は、何かを「量り」終えてほんの「少しおまけ」と言いつつ「白子干(しらすぼし)」を足してくれたという動作が無理なく描けています。それに対して棗椰子さんの句は、揺れていた「量り針」が「止まり」と具体的なクローズアップの映像を描いたのは悪くないのですが、そこからいきなり「おまけ」とカギかっこ付きの台詞らしきものがでてくるという展開が少し強引なのです。クローズアップの映像という工夫が、この句の内容にはあまり効果がなかったということになります。

 

 

◆ちょっと添削

・白子干(しらすぼし)量りてこぼる朝の市 新濃

[解説]
中七「て」が惜しい一句。ここで一拍空いてしまうと、量っていたものがこぼれているという説明になります。「て」を外してみます。
【添削例】白子干量りこぼせる朝の市

「量りこぼせる」は、量りつつこぼしているというニュアンス。「朝の市」の賑わいや

「白子干(しらすぼし)」を売る人の勢いのようなものが微量加わります

 

・ひとつまみの白子干(しらすぼし)かほりけり   まるかじり

[解説]
655のリズムが損です。ちょっと言葉を足して、音数を整えてみます。

【添削例】ひとつまみなる白子干かをりけり

下五「かほり」の歴史的仮名遣いは「かをり」が正しいですね。

 

 

袋網大きく膨れ白子干(しらすぼし)  かざみどり

[解説]
上五中七に対して、下五「白子干(しらすぼし)」が食い違っているのが、この句の問題点。漁をしているのなら、まだ干してないですものね。

【添削例】袋網大きく膨れ白子(しらす)漁

作者のコメントでは「漁船が大漁のしらすを水揚げして、袋網を開ける様子を詠んだ俳句」となっていました。となれば、水揚げの場面だと分かるように書く必要がでてきます。
【添削例】水揚げのしらす溢るる袋網

 

・白子(しらす)干し夜勤終ゆ子の朝食に   じゅん

[解説]
「終ゆ」は、正しくは「終ふ」です。「終ふ」はハ行下二段活用の終止形なので、ここに意味の切れ目が生じます。夜勤を終えた子の朝食に白子干しをという意味を伝えたいのだと思われますが、「終ふ」で意味が切れてしまっては困ります。連体形にすればよいのですが「終ふる」となるので、中七が八音になってしまう。ここが推敲(すいこう)のしどころです。「終ふ」という動詞を使わないで、この意味を伝える工夫をしてみましょう。まずは「白子(しらす)」のアップから始めましょう。
【添削例】 白子干たっぷり夜勤明けの子へ

「夜勤明け」という言い方で夜勤が終わったという意味は伝わります。推敲(すいこう)とは問題点を探し出し、その解決方法を見つける過程です。自句を冷静に分析するところから出発します。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2021年02月13日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:白子干(しらすぼし)秀作・佳作


2021年2月13日(土)放送

兼題:白子干(しらすぼし)

 

【秀作】
測量をおえて島影白子干し               世良日守

文豪の定宿の朝白子干                   おきいふ

白子干す鬼がいるらし佐多岬             ⑦パパ

動き出しさうなしらす干しへ醤油         あみま

遠慮なく飯にしらすをてんこ盛り         KAZUピー

縁青き億の目玉や白子干                 あいむ李景

撫づるやうに白子干す手の逞しき         あずお

潮騒の波ちぎれゆく白子干               ヴィッカリー趣乃

白子干湯気を引き連れ干されをり         おぼろ月

ひとつまみ白子干混ぜ握る飯             かつたろー。

こだわりの飯としらすの盛り加減         キートスばんじょうし

浅黒き漁師の肉叢白子干す               じゃすみん

白子干働く夫へてんこ盛り               すずらん

大釜の底も光るやしらす干し              スローライフ

ちりめんのチリモン蛸や笑いおり         そまり

白子干し笊器の半分から日向             ツユマメ

しらすぼし背骨もありて目もありて       ドイツばば

べた凪の漁解禁日しらす干す             はむ

高縄の朝日に香る白子干                 ひでやん

浜の風背に負いながらしらす干す          ポッキー

白子干す脇の物干し軍手干す              マユミ

助太刀はお日さま伊方の白子干            ペトロア

白子干釜揚げしたる男ぶり                みなと

湯気満ちて海の香りや白子干              みやこわすれ

天気良し風良し漁あり白子干              ゆすらご

理髪店無き集落や白子干す                伊予吟会 宵嵐

海光の節くれの指白子干す                一港

島々をつなぐ橋なり白子干                浦野紗知

つまみ食ひまだ湯気上がる白子干          花子

白子干す辺りは白く暮れにけり            花紋

浜の子の一日手伝う白子干                亀山酔田

白子干ほんのり海の湿りかな              亀田かつおぶし

白子干だけで良いから食べて行け          菊池洋勝

なんににもなれない白子干ましろ          橘まゆこ

やはらかき湯気の粒々白子干              宮武美香

への字よりくの字に近い白子干            宮本象三

丼にあふれんばかり白子干し              玉井令子

天の日を一つ一つに白子干し              近江菫花

網元の娘ユキてふ白子干                  薫夏

筵一枚六000匹の白子干す              香依蒼

干し網に怪物混じる白子干                高橋平地草

赤きもの箸につまむや白子干              高橋寅次

しらすぼしたぶんいま目を食んだとこ      高尾里甫

作業終へかっこむ息子白子丼              紗智

夫居らぬ夜の柔らかき白子干              小野睦

白子干し塩梅よしと風まかせ              松山冬花

白釉の皿より白きしらす干し              深山紫

白子干浜辺の日射し波の音                勢田清

ていねいな島の暮らしよ白子干            石塚彩楓

島の名はぼんやり旅の白子干              大和田美信

街なかに「湊町」ありしらす干し          池之端モルト

骨太の母の教えやしらす干し              南側

白波の泡立つごとき白子干                播磨陽子

青空に白き灯台白子干                    板柿せっか

光載せ幾千の波白子干                    富山の露玉

千通りの曲がり癖あり白子干し            風ヒカル

小さき身の片側乾く白子干                平本魚水

ごはんあつあつ白子干きらきら            木染湧水

昨日今日日本晴れや白子干                岩宮鯉城

白子干しのすべて孵化しさうなる陽射し    ケレン味太郎

量り終へ少しおまけと白子干し            蒼奏

国道の九四フェリーや白子干              比々き

 

 

【佳作】

父母帰る減る浄水や白子干                Sonyist

寒シラス丸い背中に我重ね                あぽろ

いしづちの車窓白子干の凍雲              どーりー3

ちりめんのよじれや朝日のこつんと        じょいふるとしちゃん

白子干したっぷり香る道の駅              マレット

白子干とろ箱買いの父遥か                みうら朱音

嫁っこの丼こぼれ落つ白子干し            かあこ

三分で消えゆく朝のしらす丼              ねじり花

白子干や蛸見つけあう子等の声            のど飴

骨粗鬆症トーストに白子干                ハルノ花柊

湯気立ちて浜香り染む白子干し            メイさん

白子干食べて海へと導かれ                ヤチ代

しらす干しほろしよつぱさを吸ふごとく    よしざね弓

甲殻類のピンクが混じる白子干            れんげ畑

白子干初めてもらう母子手帳              伊丹妙子

身の裡の水返す海白子干                  一生のふさく

箸六本揺らしてほぐす白子干              花の首飾り

水分の加減お見事白子干                  玉井瑞月

白子干ひと山買い足して亀の餌            細川小春

白子干こぞって天を目指しをり            山内三郎

タッパーの溝三匹の白子干                山羊座の千賀子

静けさや刹那の形白子干                  紫水晶

おほきことおもしろきこと白子干          七瀬ゆきこ

月経の授業受けたり白子干                紗千子

阪神淡路震災忌朝定食のちりめん雑魚      小池令香

青空の浜に大量白子干し                  水晶文旦

白子干し湯気も笑顔も消えた路地          水蜜桃

コンタクトレンズはうろこ白子干          西原みどり

しらす干し今年なりたい宇宙食            昔無架志

黙々と漁師の妻白子干す                  節子。

赤子蛸入る当り日白子干                  川越のしょび

硬めなり母の好みし白子干                戦後生まれ

湘南のサーファー今は白子干す            蒼求

思い出は瀬戸内の海しらす干し            太郎

白子干し黄身にからめて一口目            打楽器

海からの旨みはここに白子干              土佐藩俳句百姓豊哲

白子干し先輩の言う金いいよ              島村福太郎

しらす干いのち一つもこぼさぬやうに      東京堕天使

ちりめんは掴んで口に押し込んで          桃子ママ

こんもりと溢るる白子干の朝              藤田ゆきまち

バリウムは嫌いじゃないの白子干          踏野正東風

純白が浜辺彩る白子干し                  文明

赴任先ひとり晩酌白子干し                芳郎

愛南のひと手間が愛白子干                房総たまちゃん

三間米に山盛りの春しらす干し            堀アンナ

畳では死ねぬ病や白子干す                椋本望生

故郷の浜辺や喰らう白子干                野中泰風

白子干し混ぜ手を染めて飯にぎる          藍月

路地裏に潮の香充つる白子干              里山まさを

波音と風音の中白子干す                  良馬

完形の蛸は5㎜や白子干                  棗椰子

驚いたタツノオトシゴ白子干              翡翠

浜いっぱいにおいと色にしらす干す        宇都宮 巧

白子干すにおいと色に浜いっぱい          宇都宮訓子

白子干しどう見ても赤い年のせい          ひよとり2

 

>>放送で紹介された句
>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

 

投稿時間:2021年02月13日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:蓮根(れんこん)


2020年12月12日(土)放送

兼題:蓮根(れんこん)

 

▼選句ポイント

・蓮根の形や質・収穫の特徴

・産地や生産者への想い

 

▼ギュッと!特選

大海の栓を抜くごと蓮根掘(はすねほり)     池之端モルト

【解説】
胸まで泥につかって掘っている現場を思いました。『俳句王国がゆく』で宮崎のれんこん畑を訪ねた時掘るおじさんは足の指先でれんこんを探りあて、足の指で継ぎ目をひねり切って収穫していました。まさに「大海の栓を抜くごと」という比喩(ひゆ)ならではの動作。
しかもこの「大海」は泥の海なのですね。最後に、季語が出てくる語順も巧みでした。

 

▼入選

蓮根(れんこん)掘る掘る雨があたたかいよ  花紋

【解説】
れんこんの収穫は畑の水を抜き、手で丁寧に掘り出すやり方やホースで放水して泥を払いつつ収穫するやり方もあります。この句は、放水を思いました。水の冷たさ、泥の冷たさの中で、降り出した「雨」。顔に当たる「雨があたたかいよ」という、つぶやきに実感があります。

 

折らぬやう沈まぬやうに蓮根(はすね)掘る     かつたろー。

【解説】
「折らぬやう沈まぬやう」って何?と思わせておいて、下五で答えが分かるというタイプの句ですね。上五中七が、いかにもレンコンならではの言いまわし。丁寧に掘っている様子が分かるような、ゆったりとした調べが内容に似合っています。

 

色白の蓮根(はすね)吉野は水豊か       あずお       

【解説】
「蓮根(れんこん)」を詠んだ一句です。「色白の」で人物かなと思わせておいて「蓮根(れんこん)」が出てきます。「吉野」は吉野川、四国三郎の豊かな水がはぐくむ、れんこんの肌であるよという一句には、この地へのご挨拶の気持ちも込められています。

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

今回の兼題「蓮根(れんこん)」じつは少し意地悪な出題でした。ほとんどの歳時記が「蓮根(れんこん)掘る」という農作業を季語として載せていて、植物の季語として「蓮根(れんこん・はすね)」を載せているのは少数派の歳時記です。兼題「蓮根(れんこん)」といわれて、はて?と首をかしげた人は、とてもよく勉強している証拠。中には「蓮根(れんこん)掘る」と「蓮根(れんこん・はすね)」を作り分けてくれた人たちもいて天晴れ!です。

・地震あり動けぬままの蓮根掘     新濃 健          

 冬めくや蓮根並ぶ直売所         新濃 健          

・鼻先の泥は乾きて蓮根掘り       蒼奏

 不発弾の話し蓮根すりながす     蒼奏      

蓮根掘り畦より夫の指図かな     藤田ゆきまち      

 蓮根のあな菜箸のとらへたり     藤田ゆきまち      

鍬掘りの蓮根泥の乾くまま       一港             

 蓮根の先ずは灰汁抜く大三十日   一港       

左足沈み右足沈み蓮根掘る       木染湧水  

 蓮根を洗うシンクがまた詰まる   木染湧水

富山の露玉さんは、兼題「蓮根(れんこん)」は、歳時記に載ってないと判断し、別の季語と取り合わせて見事な作品を仕上げてくれました。

すりおろす蓮根白し雪もよひ   富山の露玉

 蓮根の穴の白じろ神の留守     富山の露玉

 

【解説】
なぜ、多くの歳時記が「蓮根(れんこん)」を季語として載せていないのか、その理由はよく分かりません。「図説俳句大歳時記(角川書店)」には「早いものは八月中旬、多くは秋の彼岸を中心として掘るが、農家の仕事の都合や市場の値段を考えて冬の間でも収穫する」とあります。秋の農繁期を終え、蓮根掘りの仕事にかかるのが初冬の頃、これが季語として定着していったのかもしれません。
「大根引く」「大根洗う」は人事の季語。「大根」は、植物の季語と区別する歳時記が多いように「蓮根(れんこん)」も「蓮根掘る」が人事の季語。「蓮根(はすね・れんこん)」が冬の植物の季語となっても良いのではないかと思います。
レンコンの産地が多い四国、「蓮根」そのものが多くの歳時記に載る日がくるよう四国から季語を発信していけたらいいと思いませんか。そのためには、たくさんの人たちが「蓮根(れんこん)」を冬の植物の季語として使い、多くの秀句が生まれる必要があります。レンコンの生産者を応援しつつ、私たちはレンコンの秀句に挑戦してみましょう。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

 

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兼題:蓮根(れんこん)添削「はじめの一歩!」


◆正しい表記とは?

母親見舞う なますの蓮根 刻む父     高畑よしき

・子ら駆ける 未来を見通す 蓮根かな   津国智之

[解説]
五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)にしているのは、テレビの画面が四角という事情から。
正しい表記を覚えましょう。

 

 

◆類想類句は宿命

・掘あげし蓮根の穴に見る未来        花子

・蓮根の穴の中にも未来あり          亀田かつおぶし

[解説]
俳句はたった17音しかないので「類想類句=似たような発想、似たような句」ができるのは宿命です。類想類句を気にしすぎず「多作多捨=たくさん作って、たくさん捨てる」を心がけ、たくさん作った中から、よりオリジナリティの高いものを自選する力をつけていきましょう。

 

 

◆ちょいと添削

・蓮根掘り我を植えたり泥の中   深山紫

[解説]
「蓮根掘りをしたことはないのですが、子供のころ泥田にはまって足が抜けなくなったことがあります。このまま苗のように田んぼに植えられてしまうのかと大泣きしてみんなに笑われました。懐かしい思い出です」と深山さん。
お気持ち分かります(笑)。中七「植えたり」で切れるので、三段切れっぽくなっているのが惜しい。語順を変えると解消しそうです。
【添削例】 我植うるごとき泥なり蓮根掘り

 

・蓮根掘るタニシ堀端潰れおり     鈍亀      

[解説]
「タニシ」も季語ではありますがこの場合は「蓮根掘る」が主たる季語ですね。よく観察しているところがよいです。中七下五を調えてみましょう。
【添削例】 蓮根掘る畦にタニシの潰れけり

 

・太けれど見事に折れたる蓮根かな     KAZUピー         

[解説]
中七は極力7音におさめるのが最善な方法です。「に」は不要ですね。
【添削例】 太けれど見事折れたる蓮根かな

 

土中よりリアス海岸蓮根かな      升屋 

[解説]
「土中より」と説明しなくても、今掘り出したところだと分かるように書くことはできます。例えば
【添削例】 リアス式海岸めける泥蓮根

 

 

◆推敲(すいこう)のヒント

・闇に秘するは籠殻の花火か蓮根や       Sonyist     

[解説]
「子供の頃『蓮根の模様は花火だ』と思ったのを詠みました。泥沼の底の日光も遮断された世界に潜むが、その殻(皮)の中には美しい花火が‥という句。季重なりで、字余り(特に中七)で、造語まで使っている点が心配。」と作者の弁。
確かにいろいろとやり過ぎています。「闇」の「籠」と「蓮根」で一句、「花火」のような「蓮根」で一句、という具合に作り直してみましょう。

 

蓮根田日を遮るはイナゴ玉     カメちゃん    

[解説]
「天気の良い日、徳島県鳴門市の蓮根田の横を通っていると、視界が一瞬に真っ暗になりました。よく見ると勢いよく飛んできた大量のイナゴが太陽の光を閉ざしたものでした」と作者のコメント。
そのコメントから判断して、表現したいのは「勢いよく飛んできた大量のイナゴが太陽の光を閉ざした」ということではないでしょうか。ならば「蓮根田」を諦めて「蝗(いなご)」の句として作り直してみましょう。

 

・蓮根掘る爺さん語るシャキ感を   打楽器    

[解説]
「蓮根掘る」「蓮根」どちらの句にしたいのかまず方針を決めましょう。「蓮根掘る」ことと、食感の「シャキ感」を17音にいれるのはちょっと難しいかも。

 

・蓮根掘る水圧ポンプ慎重に     マレット

[解説]
下五が惜しいです。どんな様子を見て「慎重に」作業しているなと感じたのでしょう。そこを描写してこその一句、脳内のビデオテープを再生して5音で描写してみましょう。

 

・ハス終りあとはレンコンほるぞのみ     山先文雄

・父の法事に蓮の花生け蓮根食べ        まほ

[解説]
どちらも詠み込もうとする時間が長すぎます。

 

・泥蓮根白き姿はかぐや姫       マユミ

[解説]
「姿は」は不要です。

 

・蓮根で御当地グルメ町おこし   太郎  

[解説]
「ご当地グルメ」とあれば「町おこし」と書かなくても想像ができます。

 

・酢蓮根薄紅染めて膳飾る        メイさん

・泥にいた蓮根酢水で寒そう     ほんよむひと

・蓮根に希望詰め込み挟み揚げ   葵

・一欠片の蓮根児のスタンプに   花  小雪

[解説]
「~染めて~飾る」「水で寒そう」「~に詰め込み」「~の~の~に」が散文的です。作り直してみましょう。

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年12月12日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:蓮根(れんこん)秀作・佳作


2020年12月12日(土)放送

兼題:蓮根(れんこん)

 

【秀作】

地震あり動けぬままの蓮根掘           新濃 健

冬めくや蓮根並ぶ直売所           新濃 健

鼻先の泥は乾きて蓮根掘り             蒼奏

不発弾の話し蓮根すりながす           蒼奏

蓮根掘り畦より夫の指図かな           藤田ゆきまち 

蓮根のあな菜箸のとらへたり           藤田ゆきまち 

鍬掘りの蓮根泥の乾くまま             一港

蓮根の先ずは灰汁抜く大三十日         一港

左足沈み右足沈み蓮根掘る             木染湧水

蓮根を洗うシンクがまた詰まる         木染湧水

蓮根堀る才能はある愚息かな           吉行直人

粘り気の強き泥土や大蓮根             キートスばんじょうし 

脚指を捻じり掘り出す蓮根なり         スローライフ 

蓮根掘る穴の不思議を天に聞く         のど飴

四国三郎の肥やす土なり蓮根掘る       はむ

脱サラの重なる重み蓮根掘る           ハルノ花柊

助造の鍬に銘なし蓮根掘る             まっことマンデー

ずくずくと鈍色の泥蓮根掘             みやこわすれ

かかへたる重きひかりや蓮根堀         伊奈川富真乃

蓮根掘り終ふ月面に立つ心地           一斤染乃

蓮根掘る五十分待つ鳴門線             伊予吟会 宵嵐

部活なし蓮根掘りを手伝へる           宮武美香

どろどろと溺れるごとく蓮根掘る       おきいふ

出戻りの吾の長靴や蓮根掘る           宮本象三

キハ40去り再開の蓮根掘り            近江菫花

蓮根掘る風は渦潮越えて来る           高橋平地草

禅寺の厨用にと蓮根掘る               紗智

足の爪硬き男や蓮根掘る               小池令香

蓮根掘る要領悪しき父でした           小野睦

蓮根掘る厄介な姉夫婦きて             松井くろ

蓮根掘足を吸い込む温き泥             川越のしょび

水竜の眠れる髯や蓮根掘る             登りびと

ゴボゴボと活断層へ蓮根掘る           南側

泥払う水猛々し蓮根掘り               文明

鳩尾に水の重さや蓮根掘る             平本魚水

炎鵬頑張れ泥の蓮根蹴飛ばして         椋本望生

熟寝子のごとくに蓮根掘り起こす       比々き

蓮根の掘られしあとの水たまり         松本だりあ

手掘りてふ鳥生蓮根まるかじり         あみま

蓮根のまとへる泥の乾ききる           佳山

切り口が糸引く鳴門蓮根よ             ⑦パパ

蓮根の穴美しき楕円形                 あいが だなえ

蓮根の穴の一つがなみだ型             七瀬ゆきこ

蓮根の穴を光の水走る                 宮武美香

蓮根の穴は無意識の領域               紗千子

れんこんのバリバリバツイチの朝は     大和田美信

蓮根に節二つ三つ仏めく               播磨陽子

蓮根は口が軽いに決まってる           風ヒカル

赤子のごとまろく輝く新蓮根           藍月

すりおろす蓮根白し雪もよひ           富山の露玉

蓮根の穴の白じろ神の留守             富山の露玉

 

 

【佳作】

蓮根は売切れ無人販売所           じゅん

山積みのレンコン見上げ泥化粧         かざみどり

蓮根堀り腹筋ねじれ掲げをり           おぼろ月

泥すれすれ耳傾けて蓮根掘り           じょいふるとしちゃん

水かけて真白き足と蓮根かな           じゃすみん

収穫の放水冷たき蓮根や           すみれ

思春期の悩み蓮根の穴に吐露           ずんこ

蓮根目覚めん噴射の強き圧             たま

蓮根を掘りて地球の力知る             そまり

土水の眠りは深き蓮根よ           ツークン☆

蓮根のムチン吸い付く年の暮           ツユマメ

あかがねの身に入る蓮根の醤油         どーりー3

蓮根掘り骨の髄まで冷えて風呂      ドイツばば

手も足も視線も潜る蓮根堀り           ねじり花

泥中を足先で見る蓮根掘           ひでやん

蓮根を掘る脚ずぶずぶと深く           まるかじり

蓮堀や息子二人は未成年           ヤチ代

蓮根の穴を数えてより食らう           りょうせい

蓮根や朝は食べぬと決め込む子         ゆすらご

早食いの子の蓮根の咀嚼音             よしざね弓

「うずしお一号」蓮根産地を駆け抜ける     れんげ畑

れんこんやれんこんや福よぶやうに食む     浦野紗知

蓮根掘る両手広げる長さかな           伊丹妙子

蓮根掘る畑に映る空グレー             花の首飾り

蓮根に仏の鼻の穴のあり           橘まゆこ

蓮根やつながっている泥の中           玉井令子

泥まみれ掘るや蓮根白き足             康寿

恐妻に辛し蓮根喰わされて             子安一也

酢蓮根かしゅかしゅつまむ節料理       紫水晶  

蓮根や穴の向こうの割烹着             純子

泥に足突っ込む覚悟蓮根掘る           小鞠

蓮堀の匂ふ泥色水綺麗             松山のとまと

蓮根の歪な穴に指をさす             城内幸江

鼻の穴蓮根の穴土の香よ           高尾里甫

暴れ川余して残す蓮根かな             香依蒼

繰り言を子ひとくさり蓮根掘る         みなと

世間話も盛り上がる蓮根かな           山内三郎

列車めく蓮根5両繋ぎかな      山羊座の千賀子

雪の朝泥田の中の蓮根や           水晶文旦

蓮根のくびれに酸素苦しそう           水蜜桃

蓮根掘る都会生まれの妻の尻           世良日守

蓮根掘る水の呼吸の探る探る           清人

長靴を洗ふ星空蓮根掘り           石塚彩楓

蓮根掘る石鎚見上げ腰伸ばす           節子。

蓮根を噛みしめ君のこころ読む         川畑 彩

蓮根を掴む形は楕円形             土佐藩俳句百姓豊哲

蓮根堀ウィーンと響くポンプ音         島村福太郎

蓮根掘る太古のロマン掴み出す         桃子ママ

手で掘りて鳴門の白き蓮根よ           房総たまちゃん

蓮根の産声高き阿波の国           野中泰風

蓮根堀ひと節千切れ泥人形             里山まさを

泥の顔うろうろしてや蓮根掘り         良馬

まっしろの滑らかな肌蓮根剥く         棗椰子

足取られドボンと嵌る蓮根堀           翡翠

蓮根の穴も真っ赤に冬夕焼             我省

泥蓮根足がばと抜く時雨どき           亀山酔田

蓮根や肱川あらし迫り来る             亀田かつおぶし

蓮根を掘る腰見ゆる秋遍路                  蒼求 

 

>>放送で紹介された句
>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

 

投稿時間:2020年12月12日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:紅葉(もみじ)


2020年11月14日(土)放送

兼題:紅葉(もみじ)

※動画の公開は放送日から2か月間です

 

▼選句ポイント

・臨場感が伝わる

・五感で感じている

 

 

▼ギュッと!特選

しぶき満つ龍王(りゅうおう)さんの紅葉かな      小野睦

【解説】

上五「しぶき満つ」で、水が飛び散る様子がわかります。

滝それとも堰(せき)かしらと思ったとたんに出現する

「龍王さん」。

「~さん」という呼び名が地域の人たちから大事に

祀(まつ)られている水神様を思わせます。

上五中七が水の印象で構成されているので

上五「しぶき」が下五の季語「紅葉」の赤の鮮度をあげる

かのような効果をもたらします。

 

 

▼入選

行列を厭(いと)わず紅葉へと渡船     あずお 

【解説】

長い行列をものともせずに並んでいるのです。

人気のお店か チケットを買う行列かと思えば「紅葉」。

紅葉の名所と思ったとたん「~へとの渡船」と着地。

「渡船」に乗り込む様子までもが、生き生きと

想像されます。

 

トロッコへ紅葉メガネをはみ出して       大和田美信

【解説】

「~へ」ですから「紅葉」の枝がせり入ってくる

感じでしょうか。

別の言い方をすれば、「トロッコ」が「紅葉」の中に

突入していくような状況かもしれません。

かけている「メガネ」の視界を「はみ出して」という

視点に臨場感があります。

 

紅葉(こうよう)や果実売らるる白峯寺(しろみねじ)   山内三郎  

【解説】

「紅葉や」と強調した後に、「みかん」とか「柿」とか書くと

季重なりになりますが、「果実」と書くことで秋の豊かな実りの

印象が表現できます。

その果実が「売ら」れているのが「白峯寺」だという

固有名詞もよいですね。

「紅」と「白」の印象が一句の良きアクセントとなります

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

 

瀬戸内の多島に沈む紅葉色(もみじいろ)     文明

【解説】

「紅葉色」という表現が気になります。

「紅葉」は季語ですが、「紅葉色」は紅葉のような色という意味。

そこに紅葉があるのか、紅葉色のものがあるのか不明瞭です。

作者は「紅葉のような太陽」を表現したかったそうなので

これは厳密にいうと「季語のない句」になります。

さらに「沈む」が湯に沈むのか、夕日が沈むのかも曖昧。

原句の言葉をできるだけ使って添削すると……

 

【添削例】湯に沈み島の紅葉と夕映えと

文明さんの描きたい場面は ぎりぎり伝わるかと思います。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:紅葉(もみじ)添削「はじめの一歩!」


手を広げ 描く細石は  紅葉色      安曇   

・眼下なる  五色紅葉が   何もかも      芳郎

靴裏の  紅葉に残る  夏の跡      三上 慧        

もみじ散り  都思いて  白峯寺        青島しき

[解説]

五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。

テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)に

しているのは、テレビの画面が四角という事情から。

正しい表記を覚えましょう。

 

・哀れ彼岸花紅葉紅葉と云ふけれど     いつきなつを    

[解説]

「彼岸花」と「紅葉」の季重なりです。

むしろ「紅葉」が脇役になっている点に問題があります。

 

・もみじ狩りハンカチくるむ秋一つ   ツークン☆

[解説]

「もみじ狩り」「秋」が秋の季語 「ハンカチ」は夏の季語。

兼題は「紅葉」ですが、この句の場合は「もみじ狩り」を

諦めたほういいでしょう。

中七下五には、詩になる要素があります。

 

季節(とき)めぐり色づく紅葉コロナ禍も       宮井直樹      

[解説]

季語ではありませんが、一句に「季節」という

言葉を入れて成功する例は稀(まれ)です。

季語を一つ入れるだけで(この句では「紅葉」になりますが)

季節がめぐってまたこの時期がきたという

ニュアンスは伝わるのです。

「季節(とき)めぐり」は不要の言葉になります。

そこから一句の構成を考え直してみましょう。

 

銀杏黄葉うぶすな道の途中下車   裾野くみこ

青峰の黄葉を突きて根来寺や     青島              

[解説]

「銀杏黄葉」も季語ではありますが、兼題「紅葉」とあれば

「紅葉」という言葉を入れる必要があります。

 

我が家にはいつでも紅葉野村かな       翡翠

[解説]

作者から「我が家のシンボルツリーは「野村紅葉」という

いつも紅葉している種類です」と補足されていました。

「野村紅葉」という名前を初めて知ったのですが 

うーむ、これを季語として認識してよいのか?

困ってしまいました。

秋に落葉するとのことですから、ノムラモミジが

落葉する時期という季節感があるのかもしれません。

 

向かひけりマイントピアの紅葉かな     どーりー3    

[解説]

「けり」「かな」と強い切れ字が2カ所にあります。

感動の焦点がブレるので、俳句ではこのような使い方を嫌います。

どちらをいかしたいかによって、一句の展開は大きく変わります。

仮に「向かいけり」をいかすとしても

①移動していくという意味なのか、②今紅葉の前に立っているのか

それによっても下五の表現が変わります。

【添削例】①向かいけりマイントピアの紅葉へと

【添削例】②向かいけりマイントピアの照紅葉(てりもみじ)

 

・てっぺんを神になでられ薄紅葉(うすもみじ)    キートスばんじょうし       

[解説]

神が色をつけるのではという発想はありはしますが

「薄紅葉」に感動する気持ちには共感します。

もったいないのは中七 「~なでられ」がやや散文的な

叙述になっています。例えば…

【添削例】てっぺんを神のなでしか薄紅葉

「神がなでたのだろうか」というニュアンスなります。

さらに、意味合いがちょっと変わりますが

【添削例】てっぺんをなでしか神の薄紅葉

神社の杜のようなニュアンスを加えつつ

神がなでたのかもしれませんねという句になるので

少し奥行きが生まれます。

 

・濃紅葉や六十メートル自由落下      蒼求

[解説]

「六十メートル」を「落下」していくという

視点はおもしろいと思います。

「自由落下」という科学用語を持ち込むことも

悪くないのですが、この句の場合「六十メートル」と

「自由落下」二つ入れるのは無理があります。

俳句は17音しかありませんから、仮に「六十メートル」を

いかすとすれば、上五に字余りで置くのが効果的です。

【添削例】六十メートル落下崖紅葉の一葉

「紅葉」は3音の季語なので

「谷紅葉」「山紅葉」「崖紅葉」など場所情報を加えると

ちょうど5音になります。

「朝紅葉」「夕紅葉」など、時間情報を入れることもできます。

 

散骨の海凪いで紅葉が震う     堀アンナ

[解説]

これも素材がよく、ちょっとした言い回しで

さらに良くなります。

「紅葉」を「もみじ」と読ませたいか

「こうよう」と読ませたいかによって

微妙にニュアンスが変わります。

  【添削例】 散骨の海凪ぎ紅葉が震ふ

  【添削例】 散骨の海凪ぎ紅葉ふるへけり

 

大歩危(おおぼけ)の雨濃くなりぬ紅葉かな     宮本象三

[解説]

とても惜しい一句。

「大歩危(おおぼけ)」という地名「雨」が濃くなるという感知

さらに「紅葉かな」という詠嘆もしっとりと着地できています。

もったいないのは中七「ぬ」です。

完了の助動詞「ぬ」の終止形ですからここで意味が切れ

調べもここで切れてしまうのです。

意味の上でつなげると「雨濃くなりぬる」と連体形にしないと

いけないのですが中七が、8音になってしまいリズムが滞ります。

対処方法は二つ「ぬ」を諦めるか「かな」を諦めるか。

【添削例】 大歩危の雨濃くなれる紅葉かな

【添削例】 大歩危の雨濃くなりぬ夕紅葉

 

>>放送で紹介された句
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:紅葉(もみじ)秀作・佳作


2020年11月14日(土)放送

兼題:紅葉(もみじ)

【秀作】

岩盤に隆起の記憶紅葉渓        あいだ だなえ

ふかふかのマイク紅葉の取材班      あいむ李景

公園の紅葉から二軒目が我が家      かつたろー。

石鎚の法螺貝夜明の谷紅葉          じゃすみん 

霊園の桶にもみじのはりついて      じょいふるとしちゃん

行列の門抜け紅葉は東福寺          すみれ     

野良猫が安座に座る初紅葉          スローライフ  

餌を待つ猫わらわらと寺紅葉        ハルノ花柊

曽祖父は好事家真つ直ぐな紅葉      ひでやん

薪風呂のけむりと暮らす夕紅葉        まっことマンデー

紅葉は今朝のからくり時計に散る   まるかじり

旅は素寒貧夕紅葉は豪奢        七瀬ゆきこ         

地獄とはこんなにきれい紅葉谷      宮武美香 

細胞診待つや川沿ひ夕紅葉          松山のとまと

お見舞の袋の底に付く紅葉          世良日守           

紅葉の中を琴電一両目          川越のしょび

吊り橋のしんがりとなり紅葉山      蒼奏         

肩を紅葉信号待ちのサイドカー    池之端モルト

窓に紅葉恩師の最終講義        島村福太郎

火を噴かぬ砲台の下紅葉谷          東京堕天使

大家さんの会釈は深し照紅葉        藤田ゆきまち

紅葉明るくて雲が迎えに来る        播磨陽子

照紅葉防火バケツの水面にも        板柿せっか         

色街の朝の箒や照紅葉          平本魚水   

山頂より空と紅葉と海と島          妹のりこ   

竹箒仕舞う紅葉のついたまま        木染湧水

 

 

 

 

 

 

【佳作】

紅葉東平貯蔵庫を飲み込みて         ⑦パパ   

ロープウェイ呑み込まれゆく谿紅葉   KAZUピー

駐輪場こごまる風とかごの紅葉       Sonyist

岩肌を覆ふ紅葉や寒霞渓         あみま           

夢で成就さめて紅葉の降りしきる    おぼろ月    

廃校の片隅照らすもみじかな         かざみどり       

金閣の金透き通る紅葉かな           じゅん      

風の輪がやわらかく去り紅葉落つ     そまり

紅葉して喫茶は移転坂の上           たま

七輪の猪肉の煙紅葉谷           ツユマメ

粒餡のつるっと食感紅葉山           ツユマメ末っ子@8歳

紅葉する木一本に人十人         ドイツばば       

洗車する父の鼻歌薄紅葉         ひとひら 

山門の歪み瓦に寄る紅葉        ペトロア

風と行く朝巡礼の紅葉道        みやこわすれ         

凛として紅葉羽織る天狗岳           メイさん 

居ながらに画像如きや庭紅葉         ヤチ代

石段の紅葉踏み締む仁王門           ゆすらご 

フェリーから見える紅葉の小豆島     れんげ畑

濃紅葉ややうやう鎖場を抜けて       伊奈川富真乃

デイケアの一団歌いだす紅葉         一斤染乃

ブォロロロとボンネットバス渓紅葉   一港     

石段を同行二人もみじかな           浦野紗知

紅葉川別子の銅の酸化して           佳山             

紅葉手に舞う巫女の袴濃き色         花の首飾り

里も奥隠れ耶蘇の碑渓紅葉           花子             

山脈の静脈のごと紅葉谷         花紋             

谿紅葉濃くあれ鳥は飛ぶところ       亀山酔田 

庭紅葉落ちて真っ赤な円となす       亀田かつおぶし   

リハビリの指を広げる紅葉かな       菊池洋勝 

おむすびを頬張る娘紅葉かな         玉井瑞月 

描きても描ききれざる紅葉かな       玉井令子         

おほぞらに開くキャラ弁紅葉かな     玉繭     

紅葉敷く遍路墓守る婆様をり         近江菫花         

未だ華奢な紅葉一本賜りぬ           薫夏

グレートトラバースもみずる木曽駒   香依蒼           

接待は有り難き縁夕紅葉         高橋寅次      

紅葉降る三崎 風車の二回転          高尾里甫

直葬の車にへばり付く紅葉           みなと                   

紅葉掃く僧の頭にまた紅葉           山羊座の千賀子

吊橋の揺れにしたがひ谷紅葉         紗千子           

もみじ葉や足湯飛び交ふ国なまり     紗智     

前かごに紅葉ひとひら夕まぐれ       小鞠     

紅葉見てもみぢ踏み行く父と杖       小池令香  

松山城宥め紅葉の四百回         松井くろ         

人力車紅葉くぐりて旅の宿           松山冬花

赤い橋渡り紅葉の町となる           城内幸江

湯屋を出で紅葉の坂に下駄が鳴る     新濃 健         

全霊の紅葉の紅の尤さよ         水蜜桃           

捨て石を目がけて散りし夕紅葉       裾野はな         

吊橋へ燃え上がり来る紅葉かな       石塚彩楓 

山紅葉暮れゆく麓に遍路道           太郎          

木もれびは仁淀ブルーへ谿紅葉       打楽器   

照紅葉ファイブアローズ開幕戦       土佐藩俳句百姓豊哲

ようきたなと山の声聞く紅葉晴れ     南側     

紅葉谷へ放つ小便小僧かな           比々き   

ひと枝の長きがもみづ始めなり       富山の露玉       

ワイパーに紅葉一枚留り居り         風ヒカル         

四万十や紅葉の喰らう沈下橋         野中泰風         

傷つけて息苦しいほど紅葉燃ゆ       藍月     

結願の涙にきらり夕紅葉        里山まさを       

磴のぼりきれば札所の紅葉かな       良馬                     

肩車伸ばす子の手に紅葉落つ         六手             

ひとり見る秘湯の谷の紅葉かな       戌亥     

ざる蕎麦の昼や父との初紅葉         棗椰子   

紅葉してフックラインが読み切れぬ   椋本望生

山閑か太師は一人紅葉の賀           ねじり花 

紅葉狩り分け入るとサルの群なす     水晶文旦

紅葉狩こんぴらさんの裏道を         はむ

せせらぎは雅楽のやうに草紅葉       のど飴   

骨董の壷に逢い合う蔦紅葉           上原まり                 

夫ありしままの門札柿紅葉           田島良生         

柿紅葉隣宅の犬また逃げて           伊予吟会 宵嵐

山城に続く小径に櫨紅葉         有明海           

巡りくる母の忌日や冬紅葉           揺子     

 

>>放送で紹介された句
>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」

 

投稿時間:2020年11月14日 (土) 07:55 | 固定リンク


兼題:秋祭(あきまつり)添削「はじめの一歩!」


・枯れる前  カボチャの雌花  多数成る   松山の竜馬 

手をつなぎ  好きなあの子と  秋祭り   翡翠

[解説]

五七五の間を空けないのが 俳句の基本的な表記。

テレビの俳句番組で三行書き(あるいは二行書き)に

しているのは、テレビの画面が四角という事情から。

正しい表記を覚えましょう。

 

 

・へんろ道お練(ね)る神輿と彼岸花    宮井直樹

・無機質な壁空蝉の安住    さくら丸

[解説]

兼題が「秋祭」とあれば、その言葉を入れる必要があります。

次回の兼題は「紅葉(もみじ)」ご投句お待ちしていますよ。

      

 

・提灯に灯りともる人の群れ    ツークン☆

[解説]

「秋祭」の光景を詠もうとしている句ですが、

肝心の季語が入っていません。

季語を入れるためには、どれかの言葉を

外さなくてはいけません。

この句の場合、無くても伝わる言葉がありますね。

 

【添削例】 提灯に灯り秋祭の人波

「提灯に灯り」とあれば、灯っていることは分かります。

ここでカットが変わり、後半で次の映像になります。

このような型を「句またがり」といいます。

1音余りますが、延々と続く人波を思わせる効果はあります。

 

・コロナ禍で蔵に眠る秋祭り    久龍昇     

秋祭りコロナ気にせずはしゃぐ子ら   子安一也

コロナ渦の秋祭り獅子は来年   芝山

[解説]

コロナを詠んだ時事句は たくさん届きました。

「コロナ」・「コロナ禍」という言葉が

「コロナのせいで」という説明的な意味に使われている

ケースが多かったように思います。

 

 

・ソーシャルディスタンスを執る秋祭り   水晶文旦

[解説]

「コロナ」と書かずに、コロナだと分かってもらおうと

挑む句もありました。

「ソーシャルディスタンス」という新語に目を付けたのは

良いのですが、これだけで9音もあるので使うのが難しいのも事実です。

 

 

御神灯氏子集うも秋寂し     芝山  

[解説]

「今年の秋祭りはコロナの為、小奴や獅子舞などの子供、

青年が参加する練り物行列(御下がり)が中止となりました。

神事だけは行いますが例年になく寂しい秋祭りになります。」

というコメントもついておりました。

この句は、「コロナ」と書かずに、コロナの年の秋だったなと

読んでもらえるのですが、肝心の兼題「秋祭」が抜けてしまった

勿体ない一句です。

 

 

秋祭睨みを利かす金の龍     宮武美香 

[解説]

山車や神輿(みこし)、お練(ね)りや舞いの動きなど

細部の一点を描写するのもコツの一つです。

 

 

銅山や猛者のあふるる秋祭   松井くろ

[解説]

「銅山」で、どんな場所なのかが分かります。

経済効率の良い言葉選びです。

 

 

 

・装束の父を遠目に在祭      裾野くみこ

会長は四時に目が覚め秋祭   かつたろー。

伯父さんの供米一俵秋祭     ひでやん

[解説]

その行事の現場にいる人たちも、ユニークな句材です。

人物をクロッキーするかのように目についた人や

動作を書き留めていきましょう。

 

 

・おいなりのきんいろ甘し秋祭   佳山

おこわ蒸す匂い家中秋祭      ドイツばば 

秋祭ぼうぜの姿寿司ぱくり    はむ

  ※ぼうぜ:イボダイ。徳島では秋祭時期にぼうぜの姿寿司を食べる。

[解説]

「秋祭」は豊作感謝という本意をもっている季語、

美味しい食べ物もまた大事な句材です。

「秋祭」に対して「おいなり」「おこわ」「姿寿司」など

取り合わせると、17音の半分ぐらいは使ってしまいます。

そうなると、残りの音数でリアリティあるいは

オリジナリティを工夫する必要がでてきます。

 上記の三句の場合、「きんいろ甘し」「蒸す匂い家中」

「ぼうぜ~ぱくり」等にその工夫が見て取れます。

 

 

●「秋祭り」に関する各地のお便り

 

文字だけの手書きポスター秋祭   じゅん 

小さな町ですが、毎年お寺の境内で秋祭が開催され

観音おどりをしています。

そのポスターがいつも毛筆で日付のみ書かれて

町のあちこちに貼られています。               

 

・新築やもぶり寿司食む秋祭     たま 

昔は新築の家に親戚が集まり神輿が入り

かき夫も子供もふるまい酒等で祝っていました。

 

・秋祭り獅子の頭を卒業す       ゆすらご  

秋祭に地域の子供らの獅子舞があります。

獅子の頭を兄が、後脚を弟が。

兄は来年高校生だから今年で獅子舞は卒業

弟が今度は頭になる。

地域で育てていると感じる獅子舞です。 

 

・秋祭桟敷に島の破籠寿司     柴田花子   

香川県の小豆島では、秋祭には桟敷で

破籠(わりご)と言う島独特の弁当箱で客をもてなします。

酌み交わしながら太鼓台の乱舞を見ます。

帰島の人も楽しみにしています。       

 

・夕暮れに響く太鼓や秋の声   太郎

愛媛県の西条祭りです。

私は愛媛県西条市で生まれ小学1年まで住んで居ました。

街を練り歩くだんじりのリズミカルな太鼓の音は

71歳になった今でも思い出せます。

 

・獅子百に百の油単や秋祭     比々き

高松の獅子舞。

神の通る道を先導し 清めるために舞う。

地の米の糊を使った糊染めで

獅子の絢爛豪華で勇壮な衣裳=油単を作る。

縁起のいい柄ばかりだが、皆柄が違い、そこも見どころの一つ。

 

・潮騒に松明かつぐ秋祭り       文明  

高知県中土佐町で毎年9月に行われる久礼八幡宮大祭。

高さ6mの大きな松明を担いで練り歩く。

波の音と松明の「パチパチ」という音が重なる。

初任地・高知の思い出の一つです。     

 

・褌の尻厳かや秋祭り      妹のりこ

勝岡八幡神社には、一体走りと言う無形文化財になっている

お祭りがあります。

昔、塩を運んだ事が由来で御輿を上下させないように走るのが

良いとされています。

 

・おなばれや街練り歩く秋祭   野中泰風 

故郷の街では秋祭りにて神輿(みこし)が運び出され

太刀(たち)踊りや天狗装束、巫女(みこ)さんや獅子などが

古市町商店街などを練り歩く「おなばれ」が行われます。

 

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投稿時間:2020年10月10日 (土) 07:55 | 固定リンク


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