2018年11月16日 (金)インバウンドと温泉の伝統(井口 治彦局長)


 

 みなかみ町藤原地区からさらに北へ入ったところにある宝川温泉をご存知のかたも多いと思います。長い歴史を誇る、群馬県でも人気の高い温泉です。大きな露天風呂があり、いまの季節は湯につかりながら、山々の紅葉を楽しめるとあって、多くの観光客でにぎわっています。この宝川温泉の特徴は客の多くが外国人だということです。この2年間でおとずれた外国人の国籍は190を数えます。なかでもタイ、台湾、アメリカが多いそうです。
 現在湯守をつとめるのは小野与志雄さん、三代目です。現在でこそ“外国人観光客の受け入れ”が、どこの観光地でも共通のテーマになっていますが、小野さんはすでに18年前から、外国人観光客に注目し、受入れ対策を進めてきたといいます。その理由について小野さんは「日本人の人口も減少する、またかつては“60歳の定年後はのんびり旅行をしよう”という考え方があったが、それもままならなくなっている。外国人観光客に目を向けないと経営が成り立たなかった」と述べています。
 なかでも外国人が多く訪れるのが冬。雪を間近でみられることに大喜びだそうですが、日本人とは異なり、温泉そのものにはあまり興味がないそうです。たしかにヨーロッパでは温泉地に保養のために長期滞在する習慣はありますが、一泊旅行で温泉へ行くということはあまりききません。
  旅館の食事に対する考えも、日本人と外国人では異なるようです。日本人はやはり“華やかなお膳”など、日常ではない食事を期待しますが、外国人が希望するのは、焼きそばや串カツなど、いわゆる“B級グルメ”と呼ばれるものだといいます。またイスラム教の観光客には群馬名物の豚肉をふるまうこともできません。
 お話を聞いていて、もうひとつ大きな違いがありました。ある時期、小野さんは近くの山で保護されたクマをおりに入れて飼っていたところ、外国人観光客から“クマがかわいそうだ”という声が多く寄せられたそうです。小野さんはクマを思っての行動でしたが、外国人観光客の思ってもみない反応に、困惑を隠しきれませんでした。
 しかしながら国が違えば文化や風習も異なります。そうした違いに小野さんは日々、時に戸惑いながらも、広い気持ちで外国人観光客を迎え入れ、山あいの温泉を守り続けています。 

 

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投稿者:井口治彦 局長 | 投稿時間:11:48

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