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これまでの放送 2018年9月7日(金)の放送

こどもの領分
ユーモアにあふれ、親しみやすいメロディが特徴的な「ゴリウォーグのケークウォーク」。作曲したのはフランスを代表するかの作曲家、ドビュッシー。彼にしてはちょっと意外なこの作品の背景には、たった一人の愛娘の存在がありました。今日はそんな「ゴリウォーグのケークウォーク」の魅力に迫ります。
こどもの領分
ユーモアにあふれ、親しみやすいメロディが特徴的な「ゴリウォーグのケークウォーク」。作曲したのはフランスを代表するかの作曲家、ドビュッシー。彼にしてはちょっと意外なこの作品の背景には、たった一人の愛娘の存在がありました。今日はそんな「ゴリウォーグのケークウォーク」の魅力に迫ります。

ドビュッシーの親バカが生んだ名曲

43歳になったドビュッシーは二人目の妻との間に一人の娘クロード・エンマを授かります。そして、ここからは親バカの道を邁進することになるのです。娘のことを「シュシュ(キャベツちゃん)」と呼び、仕事で家から遠く離れると娘に愛を伝える手紙を送りました。そして1908年、3歳になった娘に捧げたプレゼントこそ、「ゴリウォーグのケークウォーク」も含まれるピアノ組曲「こどもの領分」でした。

6つの曲に描かれたこどもの情景

楽譜の表紙の絵をもドビュッシーが描いたというこの作品には、彼がイメージする、愛する娘を中心とした小さな世界が描かれます。ある曲はピアノの練習曲に奮闘する子供の姿を、またある曲ではシュシュが愛してやまなかったというぬいぐるみや人形を主人公に、ユーモラスで暖かな物語が語られます。ドビュッシーにとって異例の雰囲気を持ったこの組曲は、彼の心配をよそに、初演から観客の心をつかみました。

ワーグナーとアメリカ音楽~「ゴリウォーグのケークウォーク」の背景を探る

「こどもの領分」の最後を飾る「ゴリウォーグのケークウォーク」は、シュシュが大好きだった「ゴリウォーグ」が踊りだすイメージで作曲されています。ドビュッシーが当時興味を持っていたアメリカのダンス「ケークウォーク」の音楽をヒントにかかれた、独特のユーモアを持つ作品です。またこの作品には、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルテ」の冒頭部分が引用されています。しかもその引用直後には、まるで観客が笑っているようなフレーズが続きます。偉大なワーグナーにあこがれたドビュッシーの憎愛入り混じるリスペクトがこの作品のユーモアを生んでいます。

ゲスト

「こどもの領分」には、こどもへの絶対的な愛情と、うらはらな悲しい気持ちなど、親の愛情の象徴がつまっています。

「こどもの領分」には、こどもへの絶対的な愛情と、うらはらな悲しい気持ちなど、親の愛情の象徴がつまっています。

青柳いづみこ(ピアニスト・文筆家) 青柳いづみこ(ピアニスト・文筆家)

青柳いづみこ(ピアニスト・文筆家)

profile

ピアノの演奏、文筆2つの世界で活躍。ドビュッシーを研究した数々の著作で知られる。

楽曲情報

組曲「こどもの領分」から「ゴリウォーグのケークウォーク」
ドビュッシー
青柳いづみこ(ピアノ)

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