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これまでの放送 2018年6月8日(金)の放送

ワーグナー名曲集~人々をとりこにする魔性の音楽~
オペラ作曲家ワーグナー(1813~1883)の熱狂的なファンたちは「ワグネリアン」と呼ばれ、その熱狂ぶりは並大抵ではありません。狂気すら呼びさますワーグナーの音楽に彼らは没入し、中には国を傾けるほどワーグナーにお金をつぎ込んだ王様もいるほどです。なぜ人々はそれほどまでにワーグナーの音楽にのめりこむのか。今日は、ワーグナーの音楽が持つ魔性の魅力に迫ります。
ワーグナー名曲集
~人々をとりこにする魔性の音楽~
オペラ作曲家ワーグナー(1813~1883)の熱狂的なファンたちは「ワグネリアン」と呼ばれ、その熱狂ぶりは並大抵ではありません。狂気すら呼びさますワーグナーの音楽に彼らは没入し、中には国を傾けるほどワーグナーにお金をつぎ込んだ王様もいるほどです。なぜ人々はそれほどまでにワーグナーの音楽にのめりこむのか。今日は、ワーグナーの音楽が持つ魔性の魅力に迫ります。

ワグネリアンの生きざま

究極のワグネリアンといえば、バイエルンの国王、ルートヴィヒ2世(1845~1866)です。彼は、幼いころにみたオペラ「ローエングリン」に魅了され、国王に即位すると真っ先にワーグナーのパトロンを名乗り出ました。直後にプロイセンとオーストリアの戦争に巻き込まれ、国が危機的な状況に追い込まれても、まるで現実逃避をするかのように国家予算をはたいてワーグナーのオペラの世界を再現するノイシュヴァンシュタイン城の建設に取り掛かります。しかしこの城の建設によって国は財政危機に陥り、彼は国王の座を追われます。ワーグナーの音楽が彼の国も人生も破滅させてしまったのです。

神話とエロス ワーグナーの魔力

1895年のパリ・オペラ座での「タンホイザー」の上演はワグネリアンたちが爆発的に増えるきっかけとなりました。このオペラのテーマでもある「エロスの誘惑」、本能的な快楽と清廉潔白を重んじるキリスト教世界とのせめぎあいは、まさにパリの新たな文化的潮流に合致したものであり、みなが夢中になりました。当時の作曲家や小説家も、聖なるもの、俗なるものもお互いに結び合って高められていくというプロセスをたどったこのオペラに惹かれたのです。

“熱狂と陶酔”の秘密を分析

作曲家・吉松隆さんによれば、ワーグナーの音楽の魅力は、その音域にあります。主要な音型は男性のテナー・バリトンの音域に納まり、オーケストラ全体においても中低音域に重点が置かれています。これこそが、ずっしりとした「ドヤー」というワーグナーの世界の秘密だといいます。何万人という聴衆を想定して作曲されたワーグナーの作品、その作品が持つ計り知れないエネルギーは、聴くものを圧倒します。

ゲスト

ワーグナーが見てた世界って、ものすごくでかい

ワーグナーが見てた世界って、ものすごくでかい

吉松隆(作曲家) 吉松隆(作曲家)

吉松隆(作曲家)

profile

1953年東京生まれ。慶應義塾大学工学部を中退後、独学で作曲を学ぶ。NHK大河ドラマ「平清盛」の音楽を担当。クラシックというジャンルを越えた幅広いファンの支持を得ている。

楽曲情報

「“ローエングリン”第3幕への前奏曲」
ワーグナー
アンドレア・バッティストーニ(指揮)、東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
「“ニュルンベルクのマイスタージンガー”前奏曲」
ワーグナー
渡邊一正(指揮)、東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

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