バックナンバーバックナンバーをみる

これまでの放送 2017年7月7日(金)の放送

グリーグの「ピアノ協奏曲」~これこそ真の北欧だ~
北欧ノルウェーを代表する国民的作曲家グリーグ
名作「ピアノ協奏曲」誕生の裏には
ピアノの魔術師リストのアドバイスがあった!?
そして北欧の大自然を不思議と連想させる
メロディーの秘密とは?
ノルウェー愛にあふれたグリーグの名作を紐解く
グリーグ
グリーグの「ピアノ協奏曲」
~これこそ真の北欧だ~
北欧ノルウェーを代表する国民的作曲家グリーグ名作「ピアノ協奏曲」誕生の裏にはピアノの魔術師リストのアドバイスがあった!?
そして北欧の大自然を不思議と連想させるメロディーの秘密とは?ノルウェー愛にあふれたグリーグの名作を紐解く

グリーグ

ノルウェーがいっぱい!?

雄大なフィヨルドや流れ落ちる滝など、聴くと不思議と北欧の自然を思い浮かべるこの作品。グリーグがこよなく愛したのがノルウェーの自然でした。ノルウェーでは、自然を象徴するものの一つに精霊「トロル」という存在があります。ノルウェーの伝説にしばしば登場するこの森の精霊になぞらえ、作曲家グリーグは自らを「小さなトロル」と呼んでいました。そして、グリーグは大自然の中に小さな作曲小屋を作り、作曲に没頭しました。大自然の力と恩恵を音楽で表現しようとしたのです。さらにノルウェーに根付く古くからの民謡や舞曲を収集するなど、素朴で温かなその響きはグリーグの創作の源となり、いくつもの曲が生まれたのです。

グリーグが愛したノルウェー独特の伝統楽器、ハーディングフェーレ。
スタジオでは奏者の山瀬理桜さんに楽器を紹介頂きました。グリーグのピアノ協奏曲には、ノルウェーの民俗舞曲「ハリング」が一部取り入れられています。その特徴は「独特なリズム感」。当時の一般的なクラシックでは1拍目にアクセントがくるものが多いところ、グリーグは、1拍目ではない所にアクセントを置くことで、ノルウェーらしさを曲に封じ込めたのです。クラシック作品に、あえて民俗音楽のエッセンスを取り入れたこの作品。当時、聴衆に斬新な印象を与えたそうです。

生涯追い求めた北欧らしさ

グリーグがピアノ協奏曲を作曲したのは25才の頃。「ピアノの魔術師」リストとの出会いが大きな影響を与えました。グリーグの目の前で、リストはこの作品を初見で弾き切り「これこそ、真の北欧だ」だと絶賛しました。それまでには無い異国の香りを感じさせる音楽に心を打たれたのです。そしてグリーグにこう告げます。「あなたの道を行きなさい。あなたにはその能力があるのです。恐れるものはありません。」この言葉をきっかけにグリーグは“ノルウェーらしさ"を深く追求し始めます。実はこのピアノ協奏曲は改訂を重ねた作品。細かな改訂を亡くなる6週間前までおよそ40年も続けました。修正箇所はピアノパートで100、オーケストラパートで300にも上りました。余分なものをそぎ落とし、北欧らしい厳しくドラマチックな曲へと変えていったのです。真の北欧とは何かー。ピアノ協奏曲は生涯問い続けたグリーグの傑作なのです。

ピアニスト反田恭平が感じる新たな魅力

今回、反田さんが参考にしたのが、グリーグの思いや言葉が細かく反映されているという楽譜。読み解いていくと、他の作品ではあまり見かけない指示が随所にあったといいます。そのひとつがS.P.(ソステヌートペダル)という記号。他の作品では使用頻度の少ないこのペダルを巧みに使うことによって、グリーグは、より北欧らしい響きを作り出したかったのかもしれません。

ゲスト

グリーグは自身の細胞の奥深い所までノルウェーがしみこんでいる作曲家なのです

グリーグは自身の細胞の奥深い所までノルウェーがしみこんでいる作曲家なのです

正木文惠(ピアニスト) 正木文惠(ピアニスト)

正木文惠(ピアニスト)

profile

日本グリーグ協会理事を務め日本とノルウェーを拠点に演奏活動を行う

楽曲情報

ピアノ協奏曲 イ短調 第1楽章(カット版)
グリーグ
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
反田恭平(ピアノ)

Page Top