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これまでの放送 2017年3月18日(土)の放送

音楽って、すばらしい!~ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~
オペラの主役はニュルンベルクの歌う職人たち・マイスタージンガー。
街の中に自らが理想とする芸術を求めたワーグナーの思いにせまります。
ワーグナー
音楽って、すばらしい!
~ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~
オペラの主役はニュルンベルクの歌う職人たち・マイスタージンガー。
街の中に自らが理想とする芸術を求めたワーグナーの思いにせまります。

ワーグナー

職人たちの芸術讃歌

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は庶民が主役のオペラ。マイスタージンガ—とは日本語にすると『親方歌手』。16世紀、ニュルンベルクでは職人たちが仕事の傍ら詩を作り、歌を競い合って暮らしていました。この街にやってきた騎士ヴァルターは美しい娘と恋に落ちますが、彼女と結ばれるには歌合戦で優勝しなければなりません。困ったヴァルターを助けたのが町一番のマイスタージンガーで靴職人のザックス。彼の教えによってヴァルターは恋と芸術を手に入れるのです。ワーグナーが「オペラの神髄」と語った前奏曲は、4時間にわたるオペラのダイジェストであり、聴衆をオペラの世界へいざなう役割を果たしています。

芸術は街の中にある

ドイツのニュルンベルクは古くから職人たちが暮らす街として知られてきました。今から800年ほど前、王侯貴族に仕えた吟遊詩人たちがやってきて、ものづくりをしながら歌にも情熱を注ぐマイスタージンガーの伝統を生みました。ワーグナーは22歳のときにこの街を訪れ、酒場で歌自慢をする職人の親方に出会います。はるか昔のマイスタージンガーの伝統を思い出すワーグナー。歌を冷やかされて大激怒する親方をみて、みずからの芸術に誇りをもつ姿に惹かれます。その時の印象をもとにワーグナーはこのオペラを構想。そして54歳で完成させたのです。かつて目にしたニュルンベルクの酒場での乱闘も、オペラのみどころの1つとなっています。街に生き、芸術を謳歌する職人たちの姿を通して、ワーグナーはみずからの芸術への思いを語りかけているのかもしれませんね。

前奏曲は芸術だ!

ワーグナーはこの前奏曲で、人物やイメージをあらわす旋律「ライトモチーフ」を駆使して音楽で物語を表現しています。作品の中の重要なテーマは、マイスタージンガー、愛、ダビデ王の3つ。実はすべてド・ミ・ソという和音で出来ており、とてもシンプルで単純な旋律なのです。ワーグナーはこれらを巧みに組み合わせ、ついには3つを同時に演奏させるところも。音楽の調和を保ちながら、物語を音楽で語り、4時間のオペラの全体像を数分間で描く。ワーグナーの巧みな作曲技がこの前奏曲を奥深くしていたんですね。

ゲスト

ワーグナーが芸術ってすばらしいよ〜って言っているようで僕はそこがすごく好きなのかもしれないです!

ワーグナーが芸術ってすばらしいよ〜って言っているようで僕はそこがすごく好きなのかもしれないです!

茂木健一郎(脳科学者) 茂木健一郎(脳科学者)

茂木健一郎(脳科学者)

profile

幼い頃から大のクラシックファン
脳とクラシック音楽についての本も多数執筆

楽曲情報

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
ワーグナー
渡邊一正(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

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