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これまでの放送 2016年10月29日(土)の放送

熱い思いを鍵盤にたぎらせろ!~ベートーベンの「熱情」~
ベートーベンのピアノ・ソナタの最高傑作「熱情」は、
数ある彼のピアノ曲の中で、最も激しい曲の1つとされています。
この名曲誕生の裏には、ベートーベンのかなわぬ恋がありました。
そして、「熱情」を表現するべく彼が取り組んだ、ピアノの大改革とは?
嵐のようなエネルギーに満ちた「熱情」の世界へご案内します。
熱い思いを鍵盤にたぎらせろ!
~ベートーベンの「熱情」~
ベートーベンのピアノ・ソナタの最高傑作「熱情」は、数ある彼のピアノ曲の中で、最も激しい曲の1つとされています。
この名曲誕生の裏には、ベートーベンのかなわぬ恋がありました。そして、「熱情」を表現するべく彼が取り組んだ、ピアノの大改革とは?
嵐のようなエネルギーに満ちた「熱情」の世界へご案内します。

かなわぬ恋への“熱情”

「熱情」は現在のハンガリー、ブダペスト近郊にある宮殿で書き上げられました。
宮殿の主ブルンスヴィク伯爵は音楽を愛した、チェロの名手。ベートーベンとは親友でした。そして、彼を通して出会った運命の女性が、その妹ヨゼフィーネです。彼女にピアノを教えていたベートーベン。レッスンを重ねるうちに、すっかりヨゼフィーネに魅了されていきました。20世紀の半ば、ベートーベンが彼女に宛てた、13通の手紙が、およそ150年ぶりに発見され、話題となりました。
“おお愛するJ、私はあなたのすべてを尊敬しています。私の全ての感性を虜にしています”
しかし二人の間には大きな壁が。平民と貴族という身分の差です。彼女の両親は裕福な貴族でないと結婚を決して認めませんでした。ヨゼフィーネは別の貴族と政略結婚をさせられたものの、わずか4年で死別。ベートーベンは未亡人となった彼女を健気に支えましたが、結局「身分の差」は超えられず、二人は結ばれなかったのです。その引き裂かれるような思いは13通のラブレターからも伝わってきます。
“あなたにお会いしたとき、決してどのような愛情も抱くまいと、私はかたく決心していました。しかしあなたは私を征服してしまったのです”
「熱情」は、そんな叶わぬ恋の苦しみの中で書かれたといいます。求めても求めても得られぬ苦しみ。それを激しい旋律に込めたのです。

ピアノ開発にかける“熱情”

「熱情」誕生の裏には「ピアノを進化させたい」という、ベートーベンの強い思いがありました。ピアノ進化の過程をたどると、彼の功績の大きさが見えてきます。
訪れたのは浜松市楽器博物館。バロックから現代まで、およそ80台のピアノが展示されています。ベートーベンが10代の頃、つまりモーツァルトやハイドンが活躍した時代に流行したピアノがありました。鍵盤の音域は最大でも5オクターブ。ベートーベンも「悲愴」や「月光」など、初期のピアノ・ソナタは、こうした5オクターブまでしかないピアノで作曲していました。しかし、そんな音域の制限に、どうしても我慢できなかったベートーベン。度々、職人たちに5オクターブ以上の鍵盤を要求したといいます。当時住んでいたウィーンでも新しいピアノが次々と登場。でも彼は満足できません。例えば、鍵盤の裏にある「膝レバー」。当時は音を伸ばすのに、このレバーを膝で押さなければならなかったため、常に体と楽器が密接した状態となり、上半身を左右に動かしづらかったのです。つまり、膝で操作する限り、自由かつ大胆な演奏はできなかったのです。ベートーベンがピアノ製作者に宛てた手紙の中には、こんな一節があります。
“ピアノはあらゆる楽器のなかで最も研究が遅れている!未発達である!”
ついにはウィーンから遠く離れたイギリスにまでピアノを注文したベートーベン。リクエストに応えたイギリスの職人たちは、きわめて画期的なピアノを作り上げました。音域は、ベートーベンこだわりの5オクターブ半。音域が広がったことで、心の叫びのような、鋭い高音のメロディーも演奏可能となったのです。さらに、膝で操作していたレバーは足先に移動。現在のピアノのペダルに随分近づきました。体全体を左右に動かせるようになったことで、激しい演奏も可能になったのです。

ベートーベンの斬新さとは?

ベートーベンの斬新さとは?

ダイナミックな表現が特徴の「熱情」。それが最も分かる部分の楽譜を見てみると、pp(非常に弱く)から一瞬にしてff(非常に強く)へ音の強さが変わっています。大胆に強弱が目まぐるしく変わるベートーベンの音楽は当時の人々を驚かせたのです。
そして、冒頭で聞いたメロディーがまた登場したかと思いきや、そのメロディーを破壊するような強烈な和音が突如鳴り響くという仕掛けも。誰もやったことのない表現に挑戦し続けたベートーベンの斬新さが「熱情」に詰まっているのです。

ゲスト

ベートーベンはドラマチックなイメージ!

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生田絵梨花(乃木坂46メンバー) 生田絵梨花(乃木坂46メンバー)

生田絵梨花(乃木坂46メンバー)

profile

3歳からピアノを習い 今も続けている
ドイツ・デュッセルドルフ生まれ 東京育ちの19歳

楽曲情報

ピアノ・ソナタ第23番「熱情」から
ベートーベン
小倉貴久子(フォルテピアノ)

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