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これまでの放送 2016年8月20日(土)の放送

ドビュッシーの交響詩“海” ~海だ!嵐だ!音楽の夜明けだ~
フランスの作曲家ドビュッシーの交響詩「海」は
海の様々な表情を音で表した作品。
創作の源には、日本から渡ったある絵の存在が!?
20世紀音楽の扉を開いたとも言われる誕生の秘密に迫ります
ドビュッシーの交響詩“海” ~海だ!嵐だ!音楽の夜明けだ~
フランスの作曲家ドビュッシーの交響詩「海」は海の様々な表情を音で表した作品。
創作の源には、日本から渡ったある絵の存在が!?20世紀音楽の扉を開いたとも言われる誕生の秘密に迫ります。

海に魅せられて

陽光あふれるフランス・カンヌで少年時代を過ごしたドビュッシー。彼は「音楽家でなかったら船乗りになっていただろう」と語るほど、生涯にわたって海への憧れを抱き続けました。そんなドビュッシーが、海の様々な印象を音楽で表現したのが3曲から成る交響詩「海」。1曲目のタイトルは「海の夜明けから真昼まで」。この曲からイメージされるのは、早朝、まだ暗い中でうごめく波。そして日が昇るにつれて見えてくる雄大な海の姿です。2曲目は「波の戯れ」。まるで音そのものが、寄せては返し、はかなく消えていくさざ波のようです。そして3曲目「風と海との対話」は、風の巻き起こす力強い波が、オーケストラに乗り移ったかのようにダイナミックに響きます。愛する海をテーマに作り上げたこの交響詩は、ドビュッシーが円熟期の1905年に発表した代表作です。

浮世絵が20世紀の幕を開ける?

浮世絵が20世紀の幕を開ける?

ドビュッシーの書斎の写真を見てみると、なんと葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」が飾られています。19世紀末、パリでは万博が開催され、世界中の文化が紹介されていました。とりわけ数々の芸術家に衝撃を与えたのが日本の文化。ドビュッシーも日本文化から影響を受けた一人でした。北斎の浮世絵を大いに気に入り、自分の書斎に飾り続けたのです。実はこの浮世絵、交響詩「海」の楽譜の表紙にもなっています。ドビュッシーは日本の浮世絵に刺激を受け、西洋の伝統的な音楽表現にのっとらなくても、芸術は成り立つのではないかと考えたのです。それまでの西洋音楽ではメロディーに頼って作曲は発展したのですが、断片だけでも十分音楽の表現ができると考えたのです。ドビュッシーが浮世絵さながらに、波の印象を大胆に描いた交響詩「海」。音楽の姿について、ドビュッシーは「音楽の本質は形式にあるのではなく、色とリズムを持った時間なのである」と語りました。ドビュッシーはまさに、色とリズムで、海そのものを表現したのです。人気ドラマ「あまちゃん」の音楽でもお馴染み、ミュージシャンの大友良英さん。ドビュッシーの様式に囚われない自由な音楽は、まさにジャズの精神そのものだと大友さんは言います。心に刻み込まれた印象を自由に、大胆に表現したドビュッシー。その音楽はまさに20世紀音楽の扉を開いたのです。

音符で描く海

「風と海との対話」は、海の嵐を予兆させる低弦楽器で鳴り響く「風」のような音で幕を開けます。続いて「波」をイメージさせる部分を楽譜で見てみると、本当の波のように音形が上下に揺らめいていることがわかります。このように、メロディーではなく、音の塊や音の運動で自由に海を音楽で表現したことが、ドビュッシーの革新性なのです。

ゲスト

海に行かなくても、この曲を聴けば海が感じられる!

海に行かなくても、この曲を聴けば海が感じられる!

石原良純(俳優・気象予報士) 石原良純(俳優・気象予報士)

石原良純(俳優・気象予報士)

profile

神奈川県逗子の海辺に生まれ育つ
小型船舶免許も持っています

楽曲情報

交響詩“海”
ドビュッシー
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
円光寺雅彦(指揮)

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