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これまでの放送 2015年5月30日(土)の放送

楽器特集 ピアノ いつもと少し趣向の異なる「楽器特集」。紹介する楽器は「ピアノ」!
“楽器の王様”ピアノの奥深い魅力と名曲の数々をご紹介します!
楽器特集 ピアノ
いつもと少し趣向の異なる「楽器特集」。紹介する楽器は「ピアノ」!
“楽器の王様”ピアノの奥深い魅力と名曲の数々をご紹介します!

より大きく より豊かに

ピアノが生まれたのは、今からおよそ300年前の18世紀初頭。イタリア・フィレンツェの大富豪メディチ家で楽器の管理をしていたクリストフォリによる画期的な発明でした。しかし当時のピアノは、羊皮紙を巻いたハンマーで真鍮製の弦を打つというデリケートな素材が使われていたため大きな音は出せませんでした。そこでピアノ制作者たちはまず、弦の数を増やしたり楽器の枠を大きくしたりして音量を大きくすることに取り組みます。枠が大きく頑丈になったことで多くの弦が張れるようになり、それは音域の拡張にも繋がりました。さらに、「ペダル」の登場によって「やわらかい音」や「伸びのある音」など響きに豊かな表情も付けられるようになりました。このピアノの進化に夢中になったのが、ベートーベン(1770-1827)です。彼は新しいピアノが製造されるとすぐにその響きを取り入れて新曲を発表。ベートーベンの32曲のピアノソナタには、表現力が豊かになっていったピアノの進化を過程が表れています。そしてその後もさまざまな作曲家がこの鍵盤楽器に大きな可能性を見いだし、多くの作品を書いていったのでした。

進化と深化

19世紀に入ってから、ピアノはさらなる変化の時期を迎えます。この時期、フランス・パリには「エラール」と「プレイエル」というピアノ作りの歴史に欠かせない2人の製作者が登場しました。そしてこの2人の製作者によって自らの音楽性を発展させていった作曲家がまた2人、リスト(1811-1886)とショパン(1810-1849)です。「ピアノの魔術師」と呼ばれたリストは、自分の超絶技巧を大きなコンサートホールで披露し、多くの聴衆を魅了したピアニスト。そんな彼は、高速での連打を弾きやすくする構造を発明したエラールのピアノを好みました。一方、「ピアノの詩人」ショパンが愛したのはプレイエルの作るピアノの響き。彼は、指先の微妙なタッチの違いが音色の変化となって現れるプレイエルのピアノに大きな信頼を寄せました。この時代、エラールとプレイエルのほかにもピアノ製作者はたくさんいて、素晴らしい作曲家と製作者が切磋琢磨し、共に歩んでいくことで、多様なピアノがうまれていったのです。

そして、今のピアノへ…

ピアノが、現在の標準的な鍵の数、88鍵を有するようになったのは19世紀の最後。クリストフォリが発明した時には4オクターブ(49鍵)だった音域は、2倍近くの7オクターブ半にまで広がりました。これはフルオーケストラの楽器の音がカバーできる音域と言われています。そして現在の演奏会用のフル・コンサート・ピアノ(通称「フルコン」)は、全長2m80cm、重量は480kgにもなります。誕生から300年ほどの歳月をかけて、ピアノ製作者たちが試行錯誤を繰り返しながら作り上げていったピアノは、ハイテクノロジーな精密機械であるとともに、人の心の深いところまで雄弁に語る豊かな表現力をもつ楽器となったのです。

ゲスト

すごいですね!ひとつの楽器で同じ方が演奏されているとは思えませんでした

すごいですね!ひとつの楽器で同じ方が演奏されているとは思えませんでした

城戸真亜子(洋画家) 城戸真亜子(洋画家)

城戸真亜子(洋画家)

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幼い頃からクラシック音楽に親しむ。
最近は絵を描く時のBGMとしてクラシックを聴くことが多い。

楽曲情報

ピアノソナタ「熱情」
ノクターン 作品9-2
ラ・カンパネラ
①ベートーベン  ②ショパン ③リスト
横山幸雄(ピアノ)

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横山幸雄
(ピアノ)

1990年ショパン国際コンクールで歴代日本人として最年少入賞。現在は後進の指導にも意欲的にあたっている。

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