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これまでの放送 2015年4月18日(土)の放送

出会いは名曲の源泉 川魚のマスをテーマにして書かれた「ます」。
作曲者シューベルトの性格は、内気で世渡りの下手な引っ込み思案。
しかし彼は、意外なことをきっかけに名曲を生み出す男だった…
出会いは名曲の源泉
川魚のマスをテーマにして書かれた「ます」。作曲者シューベルトの性格は、内気で世渡りの下手な引っ込み思案。しかし彼は、意外なことをきっかけに名曲を生み出す男だった…

「ます」に れちゃいマス

五重奏曲「ます」、その第4楽章のもととなったのは歌曲だったのです。1817年、20歳になるシューベルトが、ドイツの詩人、クリスティアン・フリードリヒ・ダニエル・シューバルトの詩「ます」に基づいて書き上げた作品でした。第1節では、小川に遊ぶマスの姿が描かれ、第2節では、釣り人が現れ、このマスを狙います。そして第3節で、ついにマスは、釣り上げられるのです。どんなにすばしこく泳ぎ回っても、釣り人の手を逃れられない、哀れなマスの運命が歌われています。詩に描かれた、マスと人間との駆け引きに心ひかれたシューベルトが、その光景をドラマチックに表現した作品だったのです。

“引っ込み思案”が
燃えるとき

オーストリアのウィーンに生まれたフランツ・シューベルトは、未完成交響曲をはじめ歌曲「のばら」や「魔王」など数々の名曲を残した大作曲家です。しかし、自らをアピールしたり作品を売り込むことが苦手。性格は内気で、世渡りの下手な引っ込み思案でした。ところが、人から勧められたり頼まれたりするとたちまち発奮し、瞬く間に名曲を書き上げてしまう男でした。五重奏曲「ます」も、そんな彼が人から頼まれて書き上げた作品です。1819年の夏、シューベルトがオーストリア北部を旅行で訪ねたとき、一人の男に出会いました。彼の名はパウムガルトナー。鉱山業を営む傍ら、チェロを嗜み、自宅に仲間を集めて演奏会を楽しむ、アマチュアの音楽家でした。彼はシューベルトを自宅に招き、お気に入りの歌曲「ます」を元に五重奏曲を作曲してほしいと依頼します。シューベルトは、すぐさま構想を練り始め、その年のうちに五重奏曲「ます」を完成させたと言われています。作品を世に出してお金をもうけることよりも、友人たちを楽しませることがシューベルトの作曲の原動力になっていたと考えられています。人からの依頼で書かれた五重奏曲「ます」も、シューベルトの生前に出版されませんでした。身近な人を喜ばせたいという思いから、大きな力を発揮したシューベルト。彼の豊かな音楽は、今では、世界中の人々を楽しませているのです。

マスのように 釣り人のように

五重奏曲「ます」は、五つの楽章で出来ていますが、その中で最も有名な第4楽章は、マスと釣り人が繰り広げる生き生きとした光景が目に浮かぶような音楽です。冒頭は、マスが泳いでいる川を思わせるような滑らかなメロディーで始まります。これが元になって様々な形に展開していく「変奏曲」という形式になっています。
1つ目の変奏
ピアノのメロディーは、マスの動き、キラキラ…ピチピチ…とした感じが目に浮かぶようです。
3つ目の変奏
ピアノが両手でとても早いオクターブのメロディーを奏でます。左手と右手で弾く鍵盤の動きが同じで、さながらマスと釣り人が追いかけっこをしているような、マスの数が増えたような感じにも聴こえる興奮する部分です。
4つ目の変奏 ピアノが劇的な短調の和音を連打。マスが釣り人に追いつめられた様子が感じられる緊迫感に満ちたメロディーです。
さらに注目すべきポイントは、チェロのメロディー。作曲を依頼したパウムガルトナーがこの曲を演奏することを想定したシューベルトは、チェロの美しいメロディーを盛り込み、彼の活躍の場を与えたと言われています。そんなシューベルトの気遣いが感じられるチェロのパートにも是非注目して、楽しんで聴いてみてください。

ゲスト

つながっている人の思い…伝えていかなきゃいけない それを音楽の中で教えてくれている感じがした。

つながっている人の思い…伝えていかなきゃいけない それを音楽の中で教えてくれている感じがした

藤本隆宏(俳優) 藤本隆宏(俳優)

藤本隆宏(俳優)

profile

テレビや舞台で幅広く活躍中
ピアノや弦楽器のクラシックに興味あり

楽曲情報

五重奏曲「ます」第4楽章
シューベルト
川田 知子(バイオリン) 
須田 祥子(ビオラ)
渡邉 辰紀(チェロ) 
黒木 岩寿(コントラバス)
松本 望(ピアノ)

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