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これまでの放送 2014年11月8日(土)の放送

名曲集 ~文豪と作曲家 永遠のパートナー~ クラシック音楽には文豪の名作を題材にした名曲が数多くあります。
逆に、音楽から大きな影響を受けた作家もいます。
彼らは、文学や音楽に何を感じ、
どのように自分の作品を作り上げたのでしょうか?
名曲集 ~文豪と作曲家 永遠のパートナー~
クラシック音楽には文豪の名作を題材にした名曲が数多くあります。
逆に、音楽から大きな影響を受けた作家もいます。彼らは、文学や音楽に何を感じ、
どのように自分の作品を作り上げたのでしょうか?

作曲家たちの「ロメオとジュリエット」

劇作家で詩人のシェークスピアが書き残した戯曲「ロメオとジュリエット」は、敵同士の名家に生まれた男女の悲恋の物語。これをテーマに、多くの作曲家たちが名曲を残しました。

  • 現代性に注目
    バーンスタインの「ウエスト・サイド物語」
    ミュージカル「ウエスト・サイド物語」も、原作は「ロメオとジュリエット」です。作曲したのは20世紀のアメリカを代表する作曲家で指揮者のバーンスタイン。彼が目指していたのは、アメリカの社会問題を反映させた新しいミュージカルを作ること。物語に登場する家同士のいがみ合いは、アメリカで人種同士がいがみ合う姿とも共通するものでした。バーンスタインは、「ロメオとジュリエット」を、現代を生きる人々を描いたミュージカルへと昇華させたのです。
  • 多様性に魅せられて
    プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」
    幅広い作曲スタイルを誇っていたロシアの作曲家プロコフィエフは、自分の多面性を最大限に生かせると考えた文学作品が「ロメオとジュリエット」でした。これを題材にバレエ音楽を作り上げたのです。革新的な作曲技法により、「ロメオとジュリエット」の様々な要素や魅力を音楽にしたこの作品は、彼の代表作になりました。自分の多彩な音楽を詰め込める器の大きい作品、それが「ロメオとジュリエット」だったのです。
  • かなわぬ恋の失意の中で
    チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」
    ロシアの作曲家チャイコフスキーがデビューして間もないころ、名歌手アルトに出会って恋をし、婚約するまでになりました。しかし、周囲の反対にあってアルトは去り、別の男性と結婚してしまいました。失意のどん底にあったチャイコフスキーに、作曲家の大先輩バラキレフが「ロメオとジュリエット」を題材に作曲をすることを勧めます。恋の痛みを知ったチャイコフスキーは、この悲恋の物語の作曲に情熱的に取り組みました。
  • ジュリエット命!
    ベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」
    フランスの作曲家ベルリオーズは大のシェークスピア好き。父親の影響で少年時代から彼の戯曲をむさぼるように読んできました。そんなベルリオーズは、シェークスピア劇団の公演を見て、ジュリエット役を演じたイギリスの女優スミスソンに一目ぼれして結婚。いつかきっと「ロメオとジュリエット」を題材に作曲をしようと構想を温め続けてきた彼は、着想から10年ほどをかけ、シェークスピアへの愛、ジュリエットへの思いによる大作を書き上げました。

アンデルセン 名作の源
メンデルスゾーンの「無言歌」

デンマークの童話作家アンデルセンは、オペラ歌手を目指したこともあるほどの音楽好きで、著名な作曲家たちとも交流しました。そんな彼は、メンデルスゾーンのピアノ曲集「無言歌」からヒントを得て、名作「絵のない絵本」を書き上げました。主人公は、屋根裏部屋に住む貧しい画家。窓から見えるお月さまが画家に語った33の短い物語をまとめた短編集です。「無言歌」を聴いたアンデルセンは、こんな言葉を残しています。「この曲を聴けば、歌詞を心のうちに読みとることができる」。歌詞のない音楽で歌の世界を伝えられるなら、自分も文学で同じようなことが出来るのではないか。物語を読めば、その絵を心のうちに読みとることが出来る…こうして生まれたのが「絵のない絵本」でした。

ゲーテとシューベルトの「すれ違い」シューベルトの「魔王」

ドイツの文豪ゲーテは、多くの戯曲や小説を残し、ワイマール公国の大臣まで務めました。彼の詩を題材に、モーツァルトやベートーベン、シューマンなど様々な作曲家が曲を作っています。中でも、70近いゲーテの詩を音楽にしたのが歌曲の王シューベルト。彼は、ゲーテの詩「魔王」をテーマに歌曲を作曲しましたが、当初、ゲーテはこの曲の価値を認めませんでした。ゲーテが理想とした歌曲は、多くの市民に歌われる、解りやすい曲。具体的には、短い歌詞が1番、2番、3番…と繰り返され、伴奏がシンプルなもの。一方、シューベルトの「魔王」は、1つの歌詞が長く、非常にドラマチックな歌唱力が求められ、ピアノ伴奏は複雑。つまり、誰でもすぐに歌えるようなものではなかったのです。しかし、シューベルト亡き後、80歳になったゲーテは、再び「魔王」を聴く機会を得ます。その時ゲーテは初めて心を動かされ、シューベルトの意図を理解したのです。「魔王」は、完成から15年を経てようやくゲーテに認められたのです。

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