バックナンバーバックナンバーをみる

これまでの放送 2014年5月24日(土)の放送

これが私の原点 旅先の出来事がチャイコフスキーの原点を呼び覚ます。
華やかなバイオリンの名曲に秘められたドラマとは。
これが私の原点
旅先の出来事がチャイコフスキーの原点を呼び覚ます。
華やかなバイオリンの名曲に秘められたドラマとは。

誰も寝てはならぬ
誰も寝てはならぬ

失われた私を求めて

この曲が書かれたのは1878年、旅先のスイスでした。その頃、チャイコフスキーは公私ともに行き詰まっていました。結婚に失敗し、作曲はうまくいかず、ロシアの音楽界では活躍できない日々。ついにチャイコフスキーはロシアを去り、居場所を求めてヨーロッパを転々としながら作曲を続けます。そしてスイスを訪れたチャイコフスキーのもとに、親しいバイオリニストのイオシフ・コーテクがやってきます。コーテクは色々な流行曲を弾いてきかせました。気心の知れた仲間とのひとときに、音楽のたのしみを思い出したチャイコフスキー。創作意欲が刺激され、わずか20日でバイオリン協奏曲を書き上げます。コーテクの意見をききながら共に作ったこの曲は、心から満足できる音楽になりました。こうして自らを模索する旅は終わりを迎えたのです。

私の2つのルーツ

ラロ作曲の「スペイン交響曲」に刺激されたというこの曲。当時こういった民族色の強いバイオリンの音楽が流行していました。チャイコフスキーはこの曲に、ロシア民謡を独自の手法で取り入れます。第1楽章は西ヨーロッパの伝統的なバイオリン協奏曲の形式に則り、第2・3楽章はロシアの民族音楽ドゥムカの形式を協奏曲にあてはめたのです。西ヨーロッパの芸術音楽とロシアの民謡。この2つの側面、実はチャイコフスキーの少年時代に形作られていました。ロシアの小さな町に生まれ、様々な民謡を聴きながら育ったチャイコフスキーは、一方でオーケストリオンという自動演奏装置によって、モーツァルトやロッシーニといった西ヨーロッパの作曲家の音楽と出会います。2つのルーツを併せ持ち、感性を磨き上げていったチャイコフスキーは、生涯かけてその融合に取り組んでいくのです。

ソリストが輝く!演出のヒミツ

協奏曲の主役であるソリストを輝かせるチャイコフスキーの演出の技を、第1楽章で解説します。1つ目の技は「追いかけっこ」。第1主題の後、ソリストの奏でるメロディーをオーケストラが追いかけるように奏で、2つの旋律が重なり合う部分です。これは「対位法」という西ヨーロッパの伝統的な技法。ソリストのメロディーをオーケストラがそっとついていき、印象づけます。2つ目の技は「不動の支え役」。第2主題をソリストが奏でるとき、チェロやコントラバスのベースラインに注目すると、ほとんど動かずに同じ音を弾き続けています。これによってソリストの弾くメロディーを静かに支え、劇的に際立たせるのです!このように、ソリストを輝かせるための巧みな技が散りばめられているのです。

ゲスト

やっぱり感動!チャイコフスキーにしか作れない曲です!

やっぱり感動!チャイコフスキーにしか作れない曲です!

羽田美智子(女優) 羽田美智子(女優)

羽田美智子(女優)

「バイオリン協奏曲」は人生の1曲

profile

ドラマ10「第二楽章」(2013年放送)でこの曲を弾くバイオリニストを演じて以来、
チャイコフスキーに夢中。

ドラマ10「第二楽章」(2013年放送)でこの曲を弾くバイオリニストを演じて以来、チャイコフスキーに夢中。

楽曲情報

バイオリン協奏曲 第1楽章
チャイコフスキー
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
尾高忠明(指揮)、諏訪内晶子(バイオリン)

profile

諏訪内 晶子(バイオリン)

1990年 史上最年少でチャイコフスキー国際コンクール優勝。その後世界の一流オーケストラとこの曲を演奏している。

Page Top