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これまでの放送 2014年5月17日(土)の放送

怖いよ!お父さん 学校の音楽の授業で聴いた怖~い曲といえば、シューベルトの歌曲「魔王」。
そこに隠された怖さの秘密とは? 今夜、ついに「魔王」が本当の姿を現す!
怖いよ!お父さん
学校の音楽の授業で聴いた怖~い曲といえば、シューベルトの歌曲「魔王」。
そこに隠された怖さの秘密とは? 今夜、ついに「魔王」が本当の姿を現す!

オンブラマイフ
オンブラマイフ

本当は怖くない「魔王」

暗い森、馬を走らせるのは、息子を抱えた父親。おびえる子どもを魔王が甘い声で誘う。そして家にたどり着くと、子どもは息絶えていた・・・。そんな恐ろしい情景を描いたシューベルトの歌曲「魔王」。歌われているのは、ドイツ最大の詩人ゲーテの詩です。この詩は、もともと音楽劇「漁師の娘」の一部として書かれました。ストーリーの流れとは直接関係ない素朴な民謡として登場し、特に怖いものではなかったのです。そんな「魔王」の詩に多くの作曲家が魅せられ曲を作りましたが、それらの多くも同様でした。一方、シューベルトは18歳で「魔王」を作曲。彼は詩の中にある恐怖をあぶり出し、劇的に表現。リアルに情景が目に浮かぶ、世にも怖い「魔王」を作り上げたのです。ちなみに、当初は彼の「魔王」が気に入らなかったというゲーテ。シューベルト亡き後に改めて曲を聴き、ようやくその良さに気づいたそうです。

ドラマチックじゃない人

オーストリアのウィーンで生まれたフランツ・シューベルト(1797-1828)。600もの歌曲を残し、「歌曲王」として愛されています。しかし、若い頃はなかなか作曲家としての道が開けず、まったく無名の存在。そして、嘘や嫉妬とは無縁の誠実な人柄で、万事控えめ、人前に出て目立つことが苦手な青年でした。そんな彼が情熱を注いだのは、ドラマチックな世界、オペラなどの劇音楽です。しかし、登場人物が多く、上演時間も長い劇音楽では全体をうまく設計できず、メリハリに欠ける作品になりがちでした。それに対して、自分の才能を十分に発揮できたのが、歌とピアノだけの小さな歌曲の世界。シューベルトは詩を繰り返し朗読し、言葉に凝縮されたイメージを、劇的な音楽へと昇華させていきました。言葉に対する感覚が鋭かったシューベルト。歌曲という分野で、オペラにも負けない緻密なドラマ、劇的な世界を作り上げたのです。

ゾクゾクッの秘密

「魔王」は、とても印象的なピアノの前奏で始まります。右手は3連音符の細かい連打で馬のひづめの音を表現。そこに左手で、嵐や風のうねりを表すパッセージが加わります。何か恐ろしいものに追われるような切迫感のあるこの音型は、曲の間に繰り返し現れて、全体の曲のイメージを決定づけています。そして歌の部分に登場するのは、子ども、父、魔王、ナレーションの4人(1人の歌手が歌い分けます)。このうち、怖いはずの魔王は、甘い言葉で子どもを誘うため、意外にもずっと明るい長調で歌われます。ところが最後の最後になって初めて短調に転調。魔王は恐ろしい本性を現します。本当は怖い存在であることを、長調から短調へ劇的に変化させることによって表現。シューベルトは、調性など様々な手段を駆使して、怖さを演出しているのです。

ゲスト

親として聴いても怖い!

親として聴いても怖い!

つるの剛士(タレント) つるの剛士(タレント)

つるの剛士(タレント)

中学校で聴いた「魔王」が忘れられない!

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歌から将棋までマルチに活躍。
4人の子どもの父親でもある。

楽曲情報

魔王
シューベルト
イアン・ボストリッジ(テノール)
ジュリアス・ドレイク(ピアノ)

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イアン・ボストリッジ(テノール)

イギリス出身の世界的テノール。シューベルトをはじめ歌曲で高く評価されている。

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