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これまでの放送 2014年2月1日(土)の放送

言葉にできない気持ちを歌に 春らしい雰囲気が漂うピアノ曲「春の歌」。
作曲したメンデルスゾーンは、ピアノを使ってどんな「歌」を表現したかったのか?
作品の誕生に欠かせない一人の女性とのエピソードもひもといてゆく。
言葉にできない気持ちを歌に
春らしい雰囲気が漂うピアノ曲「春の歌」。作曲したメンデルスゾーンは、ピアノを使ってどんな「歌」を表現したかったのか?作品の誕生に欠かせない一人の女性とのエピソードもひもといてゆく。

春の歌
春の歌

春は名曲が生まれる季節

寒く厳しい冬を経てようやく訪れる春。特に、冬は鉛色の空が広がるドイツやオーストリアの人々にとって、春の訪れは心の底から待ち焦がれるものです。クラシック音楽の中にも「春」を描写したものは多く、モーツァルトの歌曲「春へのあこがれ」や、ワルツ王ヨハン・シュトラウスの「春の声」、シューマンの交響曲第1番「春」など、多くの作曲家が春の訪れを喜び、音楽で表現してきました。メンデルスゾーンはこの曲の楽譜の冒頭に「春の歌」と記しています。19世紀の大作曲家も、春を喜ぶ気持ちは今の人たちと変わらないものだったのですね。

名曲誕生の裏に女の影!?

小さい頃から音楽の才能を開花させていたメンデルスゾーン。「春の歌」が収められているピアノ作品集 <無言歌集> は、メンデルスゾーンが15年間にわたって書き続けたもので、彼のライフワークのような作品群です。「無言歌」はドイツ語の「言葉の無い歌」の日本語訳ですが、実は、「言葉の無い歌」と名付けたのはメンデルスゾーン自身ではなく姉のファニーでした。子どもの頃からメンデルスゾーンといっしょに英才教育を受けて育ったファニーは、弟に劣らぬ音楽の才能に恵まれ、姉弟はお互いに信頼し合う関係でした。そんなメンデルスゾーンがファニーの誕生日に贈ったピアノ作品に彼女がつけたタイトルが「無言歌」です。メンデルスゾーンはその後も多くの「無言歌」を作曲しました。 <無言歌集> は、音楽的な交流も深かった姉と弟の絆から生まれた作品集と呼べるでしょう。

「春の歌」の「春」と「歌」

「春の歌」には、「ピアノで歌曲を表現するための工夫」と、「春らしさを感じさせる演出」が散りばめられています。まず、歌曲を表現するための工夫は、次の音に跳躍する時に表れる「揺れ」。芯となるメロディーを飾る半音進行の音が、人が歌う時の「揺れ」や「こぶし」のような印象を与えているのです。もうひとつは「春らしさを感じさせる演出」。こちらは、メロディーの間を縫うように弾く細かい分散和音が効果的に表現しています。「ポロロン」と聞こえる装飾音が伴奏とメロディーの間を飾り、かわいらしさや軽やかさが感じられるのです。「春の歌」は、ピアノを使って「歌らしさ」と「春らしさ」を表現するためのメンデルスゾーンの工夫が詰まった作品といえるでしょう。

ゲスト

森口博子
(歌手)

森口博子(歌手) 森口博子(歌手)

楽曲情報

春の歌
メンデルスゾーン
ゲアハルト・オピッツ
バイオリン 弓

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