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次回の放送 2014年1月18日(土)の放送

よみがえったスワン バレエの代名詞的な作品として知られる「白鳥の湖」。
しかし、チャイコフスキーにとって人生最大ともいうべき失敗作だった!?
作曲家の信念がこめられた名作バレエの復活劇に迫る。
よみがえったスワン
バレエの代名詞的な作品として知られる「白鳥の湖」。しかし、チャイコフスキーにとって人生最大ともいうべき失敗作だった!?作曲家の信念がこめられた名作バレエの復活劇に迫る。

誰も寝てはならぬ
誰も寝てはならぬ

バレエの国をつくった男たち

バレエという芸術に多大な情熱とエネルギーを注いできた国、それがロシアです。実は、ロシアをそんなバレエの国にしたのは、19世紀後半に活躍した2人の男でした。作曲家チャイコフスキーは、「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「くるみ割り人形」というロシアバレエの金字塔ともいうべき作品を生み出し、これらは「三大バレエ」と呼ばれています。もう1人が、サンクトペテルブルクにあるバレエの殿堂、マリインスキー劇場のバレエマスターとして活躍した振付家のプティパです。彼は、主役のペアの見せ場「パ・ド・ドゥ」のスタイルを確立するなど、様式美に満ちたクラシックバレエの時代を作り上げました。「白鳥の湖」も、2人の才能が出会って花開いた作品だったのです。

*「白鳥の湖」のストーリー
悪魔の呪いにより白鳥に姿を変えたオデットとジークフリート王子が出会い、二人は愛を誓います。しかし、王子は悪魔の策略で、オデットによく似たオディールに魅了され、彼女に結婚を申し込んでしまいます。王子とオデット、引き裂かれそうになった2人が悪魔との闘いの末、結ばれるというロマンチックな物語です。(悪魔に勝利するハッピーエンドのものと、湖に身を投げた2人が天国で結ばれるものがあります。)

バレエを変えた“失敗作"

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)。モスクワで本格的に作曲活動を始めた彼に、ボリショイ劇場からバレエ音楽の依頼が舞い込みます。苦心の末完成したのが、初めてのバレエ「白鳥の湖」でした。しかし1877年の初演は、振付や主役バレリーナの出来の悪さもあって、酷評を受けてしまいます。実は、チャイコフスキーの音楽にも大きな問題がありました。それまでのバレエの多くは踊りを引き立たせる曲を並べただけで、音楽は添え物的な伴奏に過ぎなかったのに、彼は、登場人物の深い感情を描きつつドラマを展開させる音楽を作り上げました。雄弁にストーリーを語る、かつてないバレエ音楽に人々はとまどったのです。彼の革新的な音楽に見合う振付や演出がなされないまま、しばらくして上演は打ち切りに。「白鳥の湖」がバレエの歴史から消え去ろうとしたまさにその時、この作品の価値を見出したのがマリインスキー劇場のプティパと弟子のイワノフでした。2人はストーリーを構成し直し、新しく振付をして「白鳥の湖」を上演。音楽にふさわしい振付や演出が与えられたことで、初めて作品の真価が認められ、ついに「白鳥の湖」は蘇ります。それは1895年、チャイコフスキーの死から2年後のことでした。

スワンの魔法

第2幕の冒頭、オーボエで演奏される有名なメロディーが「白鳥のテーマ」。この旋律は、第4幕のフィナーレの中でも重要な場面で調性を変えながら登場します。緊迫感のある悲劇的なシーンでは暗い響きの「ロ短調」、その後王子とオデットの愛が悪魔に打ち勝とうとするシーンでは明るい「ロ長調」となって、ストーリー展開を調性の変化で表現。その効果によって、舞台上の空気が一変するのです。 第2幕の見どころ、主役2人によるアダージョでは、絡み合うバイオリンとチェロのソロに乗せて、2人の愛が高まっていく様子が描かれています。音楽が2人の気持ちに寄り添いながら、美しい舞いを彩っていく。バレエダンサーにとって、チャイコフスキーの音楽は自然に感情を引き出してくれる、まさに魔法の音楽なのです。

ゲスト

高橋 愛
(俳優)

高橋 愛(俳優) 高橋 愛(俳優)

楽曲情報

バレエ「白鳥の湖」
・第2幕 アダージョから
・第4幕 フィナーレから
チャイコフスキー
オデット/オディール:
エカテリーナ・コンダウーロワ
ジークフリート王子:ティムール・アスケロフ
ロットバルト:アンドレイ・エルマコフ
マリインスキー・バレエ団
マリインスキー劇場管弦楽団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
※BSP「プレミアムシアター」にて全幕放送予定
2014年2月17日(月) 0:30~(※16日深夜)
バイオリン 弓

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