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"速すぎる"電動アシスト自転車にご用心

記者リポート

執筆者のアイコン画像春口龍一(記者)
2023年01月26日 (木)

あなたの電動アシスト自転車は適正な製品でしょうか?
急な坂道や強い向かい風でも楽々こぐことができ便利ですが、実は、法律の基準を超える“速すぎる製品"が販売されている可能性があることがわかりました。
急発進や急加速で大きな事故につながるおそれがあるだけでなく、法律違反に問われることも。
いったいどんな製品なのでしょうか。そして、見分けるにはどうすればよいのでしょうか。
(京都放送局記者 春口龍一/2023年1月取材)

【2倍速で進む基準超えの製品】

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京都府警察本部が公開した道路交通法の基準を超えた電動アシスト自転車の実験映像です。
上の段が基準超えの製品、下の段が大手メーカーの基準を満たした製品です。
それぞれ30メートル走った段階での速度を計測すると、
基準を満たした製品が時速13.6キロだったのに対し、基準超えの製品は時速27.6キロでした。
基準超えの製品がゴールしたとき、基準を満たした製品は半分ぐらいしか進んでいません。
基準超えの製品は2倍以上の速さで走行できることがわかります。

【電動アシスト自転車とは】

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電動アシスト自転車は、ペダルをこぐ力を電動モーターが補助する自転車で、安全のため道路交通法で基準が設けられています。
ペダルをこいだ場合にだけモーターが補助する仕組みで、こぐ力に対して最大で2倍の力までアシストされます。
低速時のアシストは強力ですが、速度が上がるにつれてアシストは弱まり、時速24キロに達すると切れます。

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1993年の発売以来、次第に子育て世代やお年寄りなどから人気を集めるようになり、最近ではスポーツタイプも増えています。
経済産業省によると、国内では2018年に「ママチャリ」と呼ばれる一般の自転車の販売台数を上回りました。
2021年1年間の出荷台数は79万台あまりで、「ママチャリ」のおよそ53万台を大きく上回ります。

【“時速45キロに設定可能” 京都府警が初摘発】

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人気の電動アシスト自転車ですが、
国民生活センターなどでは以前から、基準を超える製品が販売されている実態があるとして繰り返し注意喚起してきました。
そして1月、京都府警察本部が基準を超える製品の販売会社を全国で初めて摘発しました。
京都市の自転車販売会社が、基準を超える製品を「電動アシスト自転車」としてインターネットで広告表示し消費者の誤認を招いたとして、不正競争防止法の疑いで書類送検しました。

この会社では一般の自転車からスポーツタイプまでさまざまな商品を販売し、中には、アシストを時速45キロにまで設定できるものもあったということです。これは時速24キロまでという基準の2倍近くになります。
アシスト力も基準を大幅に超える強力なもので、急発進や急加速し大きな事故につながるおそれがあったということです。
会社では海外から製品を安く仕入れていたとみられるということで、代表取締役は、「利益のためインターネットサイトでは伏せて販売していた」と話しているということです。

【基準超え自転車は原付バイクに該当】

基準を超えた製品は、法律上、原付バイクに該当します。

公道で乗るには、
▽運転免許や
▽ナンバープレート
▽ヘルメットの着用
などが必要です。

そのまま乗ると、
▽無免許運転などの道路交通法違反
▽道路運送車両法違反
などに問われる可能性があります。

【通販業者も対策に乗り出す】

こうした製品はネット通販で手軽に購入できます。
通販業者が加盟する業界団体では、警察の要請を受けて2022年7月、加盟する25社に対し、販売する際には商品説明の目立つところに「公道走行不可」とか「敷地内のみ」などと注意事項を記載するよう求めました。

ネット通販大手の楽天市場やアマゾンなどでは対応を取っています。
アマゾンでは、法令違反が疑われる商品は販売できないよう事前に対策しているほか、サイト内の見回りをして違反が確認されれば削除しています。
一方、原動機付き自転車に該当する商品は、公道が走れるかどうか明記することを求め、走行可能な商品については、免許やナンバープレートが必要だという説明文を記載しているということです。

 【見分けるには?】

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製品が基準を超えているかどうかは、外観からはなかなか判別できません。

国民生活センターでは、購入の際は、「型式認定」を取得しているかどうかを目安にしてほしいと呼びかけています。
「型式認定」は、国家公安委員会が道路交通法の基準を満たした製品を認定するものです。

日本交通管理技術協会のホームページで2011年以降に型式認定を取得した電動アシスト自転車を商品名やメーカー名などから検索できます。
取得していない場合は、注意書きを探し、道路交通法の基準を満たしているか、電動アシスト自転車として公道を走れるか具体的に問い合わせるなど、慎重な検討が必要です。

また、基準を超えた製品は安く販売されている傾向があるということです。大手メーカーの製品と比べて割安な場合は、より慎重に、基準を満たしているかどうか検討する必要がありそうです。

【購入した製品に不安があれば】

国民生活センターでは、購入した後に製品の異変に気づいた場合は、まずは購入した販売店に問い合わせ、納得いく回答が得られなければ最寄りの消費者センターに相談してほしいと呼びかけています。

【取材後記】

私の周りにも子どもの送迎用や通勤用に電動アシスト自転車を毎日利用している人がいます。一度乗ると一般の自転車には戻れないと話し、重宝している様子ですが、そうした身近な自転車の中に基準を超えたものがあるかもしれないと思うと危機感を覚えました。
改めて、自分の自転車が“本物”かどうか確かめてほしいと思います。

そして、取材の中でもう一つ気になることがありました。
今回摘発された製品の通販サイトの口コミ欄には、基準を超えたものとわかっているような書き込みが散見されました。
製品はスポーツタイプで、大手メーカーの製品より割安でした。価格が安く、しかもアシストが強力なので魅力に感じる人がいるのかもしれません。
ただ、街なかで急に飛び出したり猛スピードで走ったりすれば、事故のリスクは高まります。衝突すれば、相手も自分も大けがをするおそれがあります。法律違反にも問われます。基準を超えた製品にはくれぐれもご用心ください。

私もこうした“身近な暮らしに潜む危険”を引き続き取材していきたいと思います。

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