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記者リポート

京都・舞鶴市出身"JO1"大平祥生さんにインタビュー

視聴者参加型のオーディション番組で、応募総数約6000人の中から選ばれた11人組のダンスボーカルグループ「JO1」。 メンバーのひとり、大平祥生さんは、舞鶴市出身の23歳。 地元・京都への思いを詳しく聞きました! (京都放送局記者 山﨑麻未) ダンスへの思い 大平祥生さんは、JO1のダンスの中心メンバーとして活躍しています。 子どもの頃からダンスに熱中していた大平さん。 デビューするため、高校生の時に舞鶴市から上京し、夢を追い続けてきました。 (大平さん)高校を転入して、芸能の通信とかにいたんですけど、その時からやるしかないと。高校2年生くらいの時に、いろいろもっと勉強したいなと思って。あと、本当に自分は何が好きなのかなって思ったときに、アメリカに(ダンス留学に)行っていろんなものに触れて、やっぱり僕はアーティストになりたいなと。 コロナ禍でのデビュー オーディションを経て2019年12月に選ばれた11人は、約3か月後の2020年3月にデビューします。 活躍のための扉は開かれたものの、待ち構えていたのは、新型コロナの感染拡大でした。 (大平さん) 想像してた未来と違う方向に進んだというか・・・準備期間と捉えましたね。 (ファンに)会えないのは試されているのかなと。 デビューから約2年の月日が流れた2021年秋、ようやく、自分たちのファンでいっぱいになった会場で、観客を入れたライブを行うことができたと言います。 (大平さん) 本当に感動でしたね。 会えない分、SNSで応援してくれてたんですよ、JAM(ファン)が。 実際目の前にすると、本当に好きでいてくれてるというか、いるんだというか。 感謝しかなかった。たくさん待たせた分、気合いが入りました。 京都への思い 今年、大平さんは、ふるさとの京都・舞鶴市をPRするプロジェクトに参加。 京都府が、地域の魅力を発信する動画「シン・キョウト」に出演しました。 2月11日からYouTubeの京都府の公式チャンネルで公開されています。 4月7日には、京都府の文化観光大使にも選ばれました。 京都の魅力には、日々、国内はもちろん、海外でも活動を行う中で、改めて気がついたと言います。 (大平さん) 京都は何といっても歴史的な建物が多いなと。情緒あふれる町並みとか落ち着きますね。 高い建物がないというか、そういう規定も決められていて、あと、派手な色とかもあんまり使っちゃいけないんですよ。 ちゃんと落ち着くように、京都市が作ってくれているというか、そういうこだわりがあるので、すてきだなと思います。 住んでた時もいいところだなとずっと思ってたんですけど、離れてみると、なかなかない場所なんだなと。 本当に魅力的に感じます。 舞鶴市の思い出は 生まれ育った地元の舞鶴市の思い出を聞きました。 (大平さん) 舞鶴市の魅力、海が近くて海鮮がおいしいんですよ。 東京じゃなかなか見られないんですけど、星がめちゃくちゃきれいで、プラネタリウムみたいになっているんです。 学生の時とか、ずっと上を見上げて歩いていました。 赤れんが(倉庫)とか、友達と自転車に乗って遊びにいったりしていました。 あと、西舞鶴に市民プラザっていうダンスをやっていた場所があって。 ダンススタジオじゃないんですよ。多目的ホールに鏡のような物を借りて、そこでダンスを軽くするみたいな。 舞鶴にスタジオがなかったんですよ。そういう環境でずっとやってたので、そこには思い入れがありますね。 感謝の気持ちとか大きいですね、ハングリー精神とともに。 今後の目標は 最後にJO1として今後の目標を伺いました。 (大平さん)まだ全国に行けていないので(ファンに)早く会いにいきたいですね。 これからJO1の活動、僕の活動含め、JAMの皆さんを幸せに出来るように、僕が発信できる京都のこととかアピールできることとかたくさんあると思うので、頑張っていきたいと思います。

執筆者 山﨑麻未(記者)
2023年04月13日 (木)

その通知、偽物です! だまされないために

宅配便の不在通知をかたった短いショートメッセージ。思わず、開いてしまった人、いませんか。それ、「スミッシング」と呼ばれる詐欺の入り口の可能性が高いんです。京都府内でも被害相談は増えているといいます。身近なサービスをかたり次々と生まれる新しい手口に、だまされないために、できることは。(京都放送局・絹川千晴) 【スミッシング 調べてみると】 (※取材のため安全を確認した上で行っています) ショートメッセージのその通知は、記者のiPhoneに実際に届きました。「お客様が不在のためお荷物を持ち帰りました。こちらにてご確認ください」。 ネット通販ヘビーユーザーの私。心当たりは山ほどあります。気になって記載されたURLをタップすると…(※取材のため安全を確認した上で行っています。決して同じようにURLをタップしないでください) ブラウザが起動し、アカウントに“安全異常がある”としてログインを求める通知が出ました。「APP Store」の文字に、ふだんアプリのダウンロードに使っているAppleのサービスが頭をよぎります。通知を閉じると…  IDとパスワードの入力を求めるホームページが開きました。 セキュリティーに異常が起きているならアプリが使えなくなるかも!確認しなければ!と焦ってログインしてはいけません。実はこれ、情報をだましとるための偽のサイト、「フィッシングサイト」なんです。こうした手口を「SMS」と「フィッシング」を組み合わせて「スミッシング」と呼びます。本物のホームページと同じ文言や問い合わせ先が記載され、デザインも似せています。本物だと思い込んでしまいかねない作りですが、うっかりIDとパスワードなど個人情報を入力してしまうと、犯罪グループにだましとられてしまいます。だましとられた情報は、アカウントへの不正アクセスや決済サービスの不正利用などさらなる犯罪に使われるおそれがあります。 記者が受け取ったのは「宅配便の不在通知」でしたが、ほかにも「アカウントが不正ログインされた」、「料金未納のお知らせ」、「サービス利用停止」など、受け取った人の不安をあおる文面はさまざまです。 また、Androidのスマートフォンを狙ったものの中には、必要な手続きに見せかけて不正アプリをダウンロードさせるものもあります。 不正アプリを入れた結果、スマートフォンの中の個人情報を抜き取られるほか、自分のスマートフォンからSMSを大量に送られ、スミッシングに加担させる被害も起きているということです。 【去年は件数が倍増】 スミッシングは増加傾向にあります。詐欺のおそれがある迷惑電話やSMSの対策ソフトを提供している「トビラシステムズ」では、利用者が受け取ったSMSや警察庁などからの情報提供をもとに、スミッシングの件数を独自に集計しています。その結果、2022年の1年間に観測されたスミッシングは、2021年と比べておよそ2倍に増えていました。2021年はさらにその前の年と比べて3倍近くに増えていて、年々増加傾向が続いています。 【多様化する手口】 件数が増えているだけではありません。この会社がまとめたスミッシングの手口です。2021年は宅配の不在通知を示すものが6割以上を占めましたが、2022年には多様化しています。 ▼宅配が最も多く3割を超えたものの、▼大手通信事業者をかたるものが2割、▼公的機関をかたるものも2割観測されました。 ▽依然として最も多い宅配でも、2021年にはヤマト運輸や佐川急便、日本郵便など実在の企業を名乗るものが多かったのに対し、2022年は会社名を入れずに不在通知を装うものが主流になったということです。 ▽大手通信会社については、「利用料金の未払い」や「アカウント不正利用」などの緊急を装う文面が多く、自分が利用しているサービスになりすまされた場合、誰でもだまされかねない手口です。 決済サービスと連携しているものも多く、注意が必要です。 ▽公的機関を名乗るものは、去年新たに確認されました。 去年8月から特に増えたのが国税庁をかたるもので、「税金のお支払い方法に問題があります」とか「未払い税金お支払いのお願い」などと言ってフィッシングサイトに誘導し、クレジットカード情報を入力させたりプリペイドカードで支払うよう指示したりする手口がみられました。 また、新型コロナに関連して、去年は厚生労働省からの新型コロナ関連の助成金の案内をかたる手口が見られたほか、旅行などの移動が自粛される中、交通系サービスの退会手続きを装う手口も見られました。 今後も新たな手口の登場が予想され、注意が必要です。 【府内でも相談相次ぐ】 被害は全国的に起きていますが、当然、京都府内でも起きています。決してひとごとではありません。 京都府警に寄せられたサイバー犯罪の相談件数は、去年(R4)1年間で5808件にのぼりますが、このうち半数近くを占めるのがスミッシングを含む「詐欺・悪質商法」でした。件数は増加傾向にあるということです。 【企業も注意喚起】 スミッシングの手口について、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便は、荷物の不在通知をショートメッセージで送ることはないと明言しています。ほかにも、大手通信事業者をはじめ、名前を使われた企業や官公庁がスミッシングの被害にあわないよう注意喚起を行っています。 【だまされないためにできること】 京都府警は、どんな内容であれ「SMSに記載されたURLを開かない」ことを呼びかけています。 文章の内容に不安を感じた時は、いったんSMSを閉じ、ふだん使っている公式のアプリやホームページからログインして通知を確認することが大切です。怪しいSMSが届いたら、まず自分で検索して調べてみること、その心がけが自分の身を守ることにつながります。 また、不安に思ったら家族や警察に相談してください。なかには相談しにくい内容もあるかもしれません。ですが、犯人はまさにそこにつけ込んでいるのです。大きな被害を受ける前に、打ち明けてみてください。 このほか、スマートフォンにウイルス対策ソフトを入れている場合は最新のものに更新することも重要だということで、心がけたいと思います。 「デジタルでだまされない」の記事一覧はこちら

執筆者 絹川千晴(記者)
2023年04月03日 (月)

不登校など経験の生徒たちが作る校則

髪型はツーブロック禁止、靴下は白。最近「ブラック校則」が有名になりましたが、校則を苦い思いとともに思い出すという方もいるかと思います。こうした中で、校則を、生徒みずから見直そうと取り組んだ高校が京都にあります。不登校などを経験した生徒たちが多い、定時制の高校です。生徒の多様性を尊重しようと始まったこの取り組み、結論はどうなったのでしょうか。 【「異色」の府立高校】 京都市北区にある京都府立清明高校。日中に授業が行われている定時制の高校です。現在、およそ400人が在籍。発達障害やLGBTQなどのマイノリティーも少なくなく、不登校を経験したという生徒もいます。 この学校、宿題と定期テストを廃止しました。学ぶ楽しさを取り戻そうというのです。学校が保護者に配った説明冊子には「テストで頭はよくなりません」、「そもそも知識では生きていけません」などと記して、理解を求めました。 修学旅行も廃止しました。「集団行動を強制されている」と負担を感じるケースもあるからだと言います。 代わりに実施したのは、自由参加のサマーキャンプ。キャンプファイアやカヌー体験など、生徒みずからプログラムを考え、今年度は200人ほどが参加したということです。 (京都府立清明高校 川畑由美子 副校長)「大勢とか、普通とか、こうあるべきみたいなところに合わせさせられている子どもたちが、自分の良さを大切にしながら学べる学校が必要かなと。誰もが参加しやすい授業のありかた、誰もが通いやすい学校のありかた、ユニバーサルデザインの考えにたってやっているというところです」 【学校の校則は】 この高校にも校則があります。8年前の開校時に定められました。 「制服を着用」、「頭髪加工、化粧、装身具はしない」など、いわゆる「ブラック校則」ではないものの、一定のルールが決められています。 この校則を見直そうという気運が全国で高まっています。去年には「子どもの権利」なかでも“子どもたちが意見を表明する権利”を持っていることを学校側が理解するよう「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂されました。そのため、生徒のための校則を考えようというのです。 この学校は、校則がそもそも必要なのかどうか、ゼロから見直すことにしました。そこには1人の教諭の問題意識がありました。 【押しつけへの葛藤】 「生徒支援部」の山下大輔教諭です。担当科目は体育。もともと「一致団結」、「みんなで頑張ろう」という考え方を持っていたということですが、生徒と向き合ううちに、少しずつ変わってきたと言います。 (京都府立清明高校 山下大輔教諭)「『気をつけ!』『休め!』という号令だったり、集団行動だったり、当たり前のようにやってきましたが、必要があるのかどうか、考えました。生徒に『自分たちで考えて行動しなさい』、『これからの時代は考える力が必要だよ』と言っているにもかかわらず、教諭自身が考えずに、そもそも必要かどうかを議論することなく、生徒たちに伝えていることがあるんじゃないかなと思っていました」 生徒と接するとき、まず、校則を守っているかどうかチェックして、必要であれば注意しなければならないというふるまいは、生徒との対等な対話のチャンスを失わせていると感じていました。必要かどうかもわからないことをルールだからということだけで守ることを求めてきたことに葛藤を感じてきたといいます。 【生徒たちに任せてみたら・・・】 そこで、生徒会のメンバーに持ちかけて、見直しを始めることにしました。生徒会が提案したのは、制服か私服かを選び、さらに化粧や髪色、アクセサリーも自由にしていい「試行期間」を設けることでした。 期間は、去年11月からおよそ2か月間。ずっと制服・私服で過ごしたという人はそれぞれ2割ほどで、制服と私服を組み合わせたという人が半数以上を占めました。 カラフルからモノトーンまで、服装の色も、髪の色もさまざま。生徒だけではなく、教員の服装まで変わりました。 終了後に行われたアンケートでは、「期間中、学校生活への意欲は向上した(ように見えた)」という設問に対し、「思う」と答えたのは▼生徒の80%▼教職員の85%▼保護者の75%にのぼりました。 【多様な意見を聞いて決める】 来年度以降の服装と身だしなみをどうするか。生徒たちは、保護者や教職員を交えて、話し合いました。 生徒からは▼服装はそれぞれが決めるべきだ、▼厳しい規定を作ると生徒の反発心を招いてしまう、という意見が出されました。一方、保護者からは▼制服を着て、高校生と認識されることで大人から社会的に守られるメリットは大きい、という意見も出ました。 その結果、服装については「制服か私服かみずから選ぶ」という案が支持されました。 しかし、化粧や髪染めなどの細かいルールについては意見が分かれました。 最終的に生徒会の決定に委ねられることになりました。 これまでさまざまな経験をしてきた生徒たちです。受け止め方はそれぞれです。メンバーの1人は「アクセサリーを付けた人や明るい髪色の人が怖い。香水のにおいが嫌い」と訴えました。 最終的に、生徒会が決めた校則案は、「『自分で選択する』ことを基本に据え、課題が見つかれば『適宜見直していく』ということにしました。 ただ「嫌だ」という声をあげにくい人のことを考え、香水とけがにつながるようなアクセサリーは禁止すると書き込みました。 生徒たちが作った案は、来年度以降の新たな校則になる予定です。 (京都府立清明高校 山下大輔教諭)「しんどさや苦しさを抱えていた生徒たちが多く、従来の小学校や中学校のやり方では生きにくかった生徒たちだと思います。しかし彼らだからこそ、他の人の、経験を想像することができるのではないのでしょうか。学校側は、生徒にはこれが足りないだろうとか、必要だろうと考えて、管理しようとするんですけど、子どもたちは、僕たちが気づいていない力を持っているし、主体的に取り組むときのパワーっていうのを持っているんです。生徒をリスペクトして、もっと子どもたちの力を信じていいかなと思っています」 【当てはめられるのではなく、自分たちで決めていく】 集団行動が優先されるあまり、自分を抑えなければいけないという違和感は、学校生活を送った人なら、感じたことがある人もいるのではないでしょうか。誰かが決めたルールに当てはめられるのではなく、今は自分たちで生きるためのルールを決めていく。子どもたちみずから考える、最もふさわしい育ち方を応援していきたいと思います。 この記事の放送はこちらから視聴できます。https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20230210/2010016662.html

執筆者 三崎由香(記者)
2023年03月03日 (金)

"速すぎる"電動アシスト自転車にご用心

あなたの電動アシスト自転車は適正な製品でしょうか? 急な坂道や強い向かい風でも楽々こぐことができ便利ですが、実は、法律の基準を超える“速すぎる製品"が販売されている可能性があることがわかりました。 急発進や急加速で大きな事故につながるおそれがあるだけでなく、法律違反に問われることも。 いったいどんな製品なのでしょうか。そして、見分けるにはどうすればよいのでしょうか。 (京都放送局記者 春口龍一/2023年1月取材) 【2倍速で進む基準超えの製品】 京都府警察本部が公開した道路交通法の基準を超えた電動アシスト自転車の実験映像です。上の段が基準超えの製品、下の段が大手メーカーの基準を満たした製品です。それぞれ30メートル走った段階での速度を計測すると、基準を満たした製品が時速13.6キロだったのに対し、基準超えの製品は時速27.6キロでした。基準超えの製品がゴールしたとき、基準を満たした製品は半分ぐらいしか進んでいません。基準超えの製品は2倍以上の速さで走行できることがわかります。 【電動アシスト自転車とは】 電動アシスト自転車は、ペダルをこぐ力を電動モーターが補助する自転車で、安全のため道路交通法で基準が設けられています。ペダルをこいだ場合にだけモーターが補助する仕組みで、こぐ力に対して最大で2倍の力までアシストされます。低速時のアシストは強力ですが、速度が上がるにつれてアシストは弱まり、時速24キロに達すると切れます。   1993年の発売以来、次第に子育て世代やお年寄りなどから人気を集めるようになり、最近ではスポーツタイプも増えています。経済産業省によると、国内では2018年に「ママチャリ」と呼ばれる一般の自転車の販売台数を上回りました。2021年1年間の出荷台数は79万台あまりで、「ママチャリ」のおよそ53万台を大きく上回ります。 【“時速45キロに設定可能” 京都府警が初摘発】 人気の電動アシスト自転車ですが、国民生活センターなどでは以前から、基準を超える製品が販売されている実態があるとして繰り返し注意喚起してきました。そして1月、京都府警察本部が基準を超える製品の販売会社を全国で初めて摘発しました。京都市の自転車販売会社が、基準を超える製品を「電動アシスト自転車」としてインターネットで広告表示し消費者の誤認を招いたとして、不正競争防止法の疑いで書類送検しました。この会社では一般の自転車からスポーツタイプまでさまざまな商品を販売し、中には、アシストを時速45キロにまで設定できるものもあったということです。これは時速24キロまでという基準の2倍近くになります。アシスト力も基準を大幅に超える強力なもので、急発進や急加速し大きな事故につながるおそれがあったということです。会社では海外から製品を安く仕入れていたとみられるということで、代表取締役は、「利益のためインターネットサイトでは伏せて販売していた」と話しているということです。 【基準超え自転車は原付バイクに該当】 基準を超えた製品は、法律上、原付バイクに該当します。 公道で乗るには、▽運転免許や▽ナンバープレート▽ヘルメットの着用などが必要です。 そのまま乗ると、▽無免許運転などの道路交通法違反▽道路運送車両法違反などに問われる可能性があります。 【通販業者も対策に乗り出す】 こうした製品はネット通販で手軽に購入できます。通販業者が加盟する業界団体では、警察の要請を受けて2022年7月、加盟する25社に対し、販売する際には商品説明の目立つところに「公道走行不可」とか「敷地内のみ」などと注意事項を記載するよう求めました。ネット通販大手の楽天市場やアマゾンなどでは対応を取っています。アマゾンでは、法令違反が疑われる商品は販売できないよう事前に対策しているほか、サイト内の見回りをして違反が確認されれば削除しています。一方、原動機付き自転車に該当する商品は、公道が走れるかどうか明記することを求め、走行可能な商品については、免許やナンバープレートが必要だという説明文を記載しているということです。  【見分けるには?】 製品が基準を超えているかどうかは、外観からはなかなか判別できません。国民生活センターでは、購入の際は、「型式認定」を取得しているかどうかを目安にしてほしいと呼びかけています。「型式認定」は、国家公安委員会が道路交通法の基準を満たした製品を認定するものです。日本交通管理技術協会のホームページで2011年以降に型式認定を取得した電動アシスト自転車を商品名やメーカー名などから検索できます。取得していない場合は、注意書きを探し、道路交通法の基準を満たしているか、電動アシスト自転車として公道を走れるか具体的に問い合わせるなど、慎重な検討が必要です。また、基準を超えた製品は安く販売されている傾向があるということです。大手メーカーの製品と比べて割安な場合は、より慎重に、基準を満たしているかどうか検討する必要がありそうです。 【購入した製品に不安があれば】 国民生活センターでは、購入した後に製品の異変に気づいた場合は、まずは購入した販売店に問い合わせ、納得いく回答が得られなければ最寄りの消費者センターに相談してほしいと呼びかけています。 【取材後記】 私の周りにも子どもの送迎用や通勤用に電動アシスト自転車を毎日利用している人がいます。一度乗ると一般の自転車には戻れないと話し、重宝している様子ですが、そうした身近な自転車の中に基準を超えたものがあるかもしれないと思うと危機感を覚えました。改めて、自分の自転車が“本物”かどうか確かめてほしいと思います。 そして、取材の中でもう一つ気になることがありました。今回摘発された製品の通販サイトの口コミ欄には、基準を超えたものとわかっているような書き込みが散見されました。製品はスポーツタイプで、大手メーカーの製品より割安でした。価格が安く、しかもアシストが強力なので魅力に感じる人がいるのかもしれません。ただ、街なかで急に飛び出したり猛スピードで走ったりすれば、事故のリスクは高まります。衝突すれば、相手も自分も大けがをするおそれがあります。法律違反にも問われます。基準を超えた製品にはくれぐれもご用心ください。 私もこうした“身近な暮らしに潜む危険”を引き続き取材していきたいと思います。<関連ニュース>人気の電動アシスト自転車 安全のため道路交通法で基準

執筆者 春口龍一(記者)
2023年01月26日 (木)

" 発見 " 毛虫の〇〇がお茶に!?

「桜もち」のような香りが立ち上る「お茶」。実は、茶葉は、サクラの葉を食べて育った毛虫の「フン」です。お茶になることを“発見”したのは、京都大学の大学院生。なぜフンから抽出されたものを飲もうと思ったのか、その魅力は?詳しく聞いてきました。※虫が嫌いな人にも読んでもらえるよう毛虫の画像はありません(京都局記者 絹川千晴) 【おいしかった “フンでいれたお茶” 】 記者は虫は好きですが、唯一「ガ」が大の苦手です。「その幼虫である毛虫のフンの抽出物を飲む?信じられない!」と最初は思いましたが、「でも気になる」という記者魂が勝り、研究室にお邪魔しました。部屋では小瓶に入った大小さまざまなフンが出迎えてくれました。その中からサクラの葉のフンを選び、恐る恐る試飲を申し出ると、お湯が注がれた瞬間から、部屋中に「桜もち」のような甘い香りが広がりました。「これはいけるかもしれない」思い切って飲んでみると、完全にお茶の味でした。すっきりとした紅茶のようです。しかも、甘みを存分に感じ、後味も悪くありません。「いや、むしろこれはおいしい。もっと飲みたい」 【“発見”は偶然】 新たなお茶を“発見”したのは、京都大学大学院農学研究科の大学院生、丸岡毅さんです。“発見”は偶然でした。1年半ほど前、リンゴ農園に実習に行った先輩が果樹の葉を食い荒らす「マイマイガ」の幼虫50匹を持ち帰ってきました。世話を任され、毎日大量に出るフンを掃除していたとき、フンから「桜もち」のようなよい香りがすることに気がつきました。エサとして与えていたサクラの葉に由来するものだと直感し、まじまじと見たとき、サクラの枝の水替えの際にこぼれた水がフンにかかり、赤茶色の液体がにじみ出していることに気がつきました。もう、お茶にしか見えなかったといいます。 (丸岡さん)「ひらめいてすぐに飲んでみましたが、びっくりするほどおいしかった。   もともと昆虫食に関心があり、いろいろな虫を捕ってきて食べていたので、   飲むことに抵抗はありませんでした。   飲んだ翌日には毛虫のフンを求めて外に探しに出ていました」 【 “茶葉” は70種類に】 丸岡さんはこれまでに40種類の幼虫に20種類の葉を与え、70種類もの“茶葉”を生み出しました。できたお茶にはそれぞれ個性があるといいます。 ※いずれも丸岡さんの感想です。 ▼「サクラ」の葉を「イラガ」もしくは「スズメガ」の幼虫に食べさせると・・・ マイマイガと同様、桜もちのような甘い香りがするお茶に。 うまみを感じ、飲み応えがあるといいます。 ▼「ヤブガラシ(雑草)」の葉を「スズメガ」の幼虫に食べさせると・・・ ヤブガラシは繁殖力が強いやっかいものとして知られますが、 上品なウーロン茶のような香りと、ほのかな甘みが感じられるお茶に。 金色のように輝く不思議な色合いになるそうです。 ▼「クリ」の葉を「オオミズアオ」の幼虫に食べさせると・・・ 幼虫は人差し指ほどの大きさで、フンも直径5ミリほどと大ぶり。 香ばしく、ほうじ茶のような香りと味で、ほのかな甘みがあるそうです。 ▼「ミカン」の葉を「マイマイガ」の幼虫に食べさせると・・・ かんきつ系のすっきりとした味わいになるかと思いきや、 青臭い独特の風味になってしまったそうです。 ただ、今ではそれがおいしいと感じる味覚の変化も。 ▼「ビワ」の葉を「ドクガ」の幼虫に食べさせると・・・ 甘くなるのではと期待したものの、 ほとんど味がしない薄いお茶になったそうです。 【なぜフンがお茶に?】 新たなお茶はいずれも紅茶に味わいが似ています。丸岡さんは、紅茶の製造工程と同じことが、幼虫の体内で起きているのではないかと考えています。紅茶はチャノキの葉をもんで組織や細胞を破壊したあと、発酵させて作られます。植物の葉は幼虫にかじられて組織や細胞が破壊され、幼虫の体内では消化酵素の働きで発酵します。そして、幼虫に必要な栄養素が吸収されたあと、繊維質がフンとして排出されます。フンはまさに“茶葉”とも呼べる存在なのです。 【安全性に問題なし】 丸岡さんはいま、この不思議なお茶の魅力を広めようと、商品化に取り組んでいます。最初のハードルは、安全性でした。丸岡さんの体調に異変はまったくありませんが、入念に確かめました。 京都市の保健所、医療衛生センターに問い合わせたところ、茶葉として飲用しても問題ないという回答が得られました。また、食品メーカーの協力で行った細菌検査でも、食中毒のおそれがないことが確認されています。 【インパクト乗りこえ魅力伝えたい】 次にハードルとなったのは、「毛虫」の「フン」というインパクトです。それだけを聞けば、多くの人がかなりの抵抗感を感じるであろうポイントです。そこを乗りこえた先にある魅力をどうしたら伝えられるのか。 まず、商品名を工夫しました。当初はインパクトを強みにしようと、「うんころ茶」という刺激的な名前を考えていました。しかし、知り合いのデザイナーに「その路線は違う」と止められ、冷静に。新たに決まった名前が「虫秘茶(ちゅうひちゃ)」。フンの存在は隠し、謎めかしました。試作品のパッケージは、研究室のシャーレをイメージした容器に虫食いの葉をデザインしたラベルを合わせ、親しみやすくしています。 広め方も模索しています。パッケージのイラストを手がけた画家やお茶に詳しいバーテンダーとの意見交換では。 画   家「友だちに原料を知らせず、      おいしいお茶ゲットしたよと言って飲んでもらい      ほんとにおいしいねという感想を引き出してから、      実は毛虫のフンから生まれたお茶でしたと種明かししてみたいなあ」 バーテンダー     「それは賭けですよね。友情を失う可能性がある(笑)」 画   家「でもこのパッケージを見ればきちんとした商品なんだとわかり、      安心してもらえそう」【毛嫌いしないで】 新たなお茶は、クラウドファンディングで資金を集め、商品化が近づいています。丸岡さんは、ハードルを乗りこえ、飲んでもらえさえすれば必ず満足してもらえると確信しています。 身近な存在ですが、嫌われ者としてほとんど目を向けられることがなかった毛虫。そして、偶然、毛虫から生まれたおいしいお茶。丸岡さんは、自然界には人間がまだその魅力に気づいていない資源が山のようにあると考えています。新たなお茶をそこに思いをはせるきっかけにしていきたい。ゆくゆくは、効率的に毛虫を飼い、フンを採集できる方法を確立し、それぞれの地域にある植物と虫を生かしたお茶づくりをしたいと夢は広がります。 毛嫌いしているものにも実は魅力がある。資源だけではなく、人間関係などあらゆるものに通じる考え方かもしれません。   この記事の放送はこちらから視聴できます。https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20230104/2010016322.html

執筆者 絹川 千晴
2023年01月11日 (水)