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答申第26号 平成17年10月13日
NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の諮問第26号に対する意見

1. 審議委員会の結論
   NHKが放送した番組「問われる戦時性暴力」をめぐり、職員の内部告発を受けてNHKのコンプライアンス推進室がまとめた調査結果報告書の元になった資料として、この番組に関する民事訴訟の第一審においてNHKが裁判所に提出した第1〜第5準備書面を、NHKが既に公表しているNHK役職員および番組の出演者以外の個人の氏名を除き、開示すべきである。

2. 再検討の求めに至る経緯
   2001年1月30日に放送された番組「ETV2001 シリーズ戦争をどう裁くか 第2回 問われる戦時性暴力」をめぐり、「職員の内部告発を受けて、NHKのコンプライアンス推進室が2005年1月19日に『放送法第3条およびNHK倫理・行動憲章に違反する不法行為は認められない』とした調査結果報告書の元になった内部報告書、調書、訴訟資料など関連資料すべて」という開示の求めがあった。これに対しNHKは「『コンプライアンス推進室調査結果報告書』以外の文書は存在しない。訴訟資料については、現在東京高等裁判所で審理中であり、NHK情報公開規程第8条第1項第1号の『争訟に関する情報であって、開示することにより、NHKの事業活動に支障を及ぼすおそれがあるもの』に該当し、開示できない。」とした。これに対し、開示の求めを行った視聴者から、「訴訟資料は、既に裁判所に提出済みであり、開示済みの資料と考える。よって訴訟資料のコピーをいただきたい。」として、再検討の求めがあった。

3. 不開示としたNHKの見解の要旨
   「訴訟資料は、すでに裁判所に提出済みであり、開示済みの資料と考える。」という主張については、まず、裁判の公開原則は、裁判の公正と客観性を確保するために設けられている原則であって、NHKが実施している情報公開の仕組みとは趣旨・目的が違うものであり、裁判所に提出済みであることをもって開示済みとみなすことはできない。また、裁判所における訴訟記録の閲覧については、民事訴訟法第91条第5項で「訴訟記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。」という制限がついており、係争中の事件の訴訟記録を第三者が閲覧することは、極めて難しいのが実情である。したがって、裁判所に提出済みであることをもって「開示済み」と言うことはできない。
 また、この裁判は、現在係争中であり、NHKは被告・被控訴人の立場にある。この訴訟に関係しない第三者が、裁判所における閲覧制度ではなく、情報公開の仕組みを使って訴訟資料を入手するというのは、特定の当事者間の係争のための文書であるという性格からみても、なじまないものである。
 なお、NHKはこの程、控訴審で東京高等裁判所に提出した準備書面のうち、編集過程を含む事実関係の詳細を記した部分をホームページ等で公開したが、これは「政治家からの指摘を受けて、番組が改編された」などとする一部の報道に基づく視聴者の誤解があり、この件に関しては視聴者の誤解を払拭することが何より大切と考え、編集過程を含めた事実関係の詳細を明らかにしたものである。

4. 審議委員会の判断
   本件開示の求めは、「コンプライアンス推進室が『放送法第3条およびNHK倫理・行動憲章に違反する不法行為は認められない』との調査結果の元となった内部報告書(報道資料ではない)、調書、訴訟資料など、関連資料全て」の開示を求めるものであるが、本件再検討の求めは、そのうちの「訴訟資料」の開示を求めるものである。
 この「訴訟資料」とは、「問われる戦時性暴力」の放送に関する民事訴訟に関してNHKが収集または作成した文書のうち、調査結果の元となった文書であると解されるところ、この調査に第一審の第1〜第5準備書面であると認められる。
 本来、訴訟資料は、すべてが争訟に関する情報であって、その性質上、開示することによりNHKの訴訟活動に支障を及ぼすおそれのあるものであるから、NHK情報公開規程第8条第1項第1号の不開示情報に該当するが、NHKが裁判所に提出した準備書面については、副本が訴訟の相手側にも渡っているため、それが開示されることによって訴訟活動に支障を及ぼすおそれがあるものと言うことはできない。なお、NHKが裁判所に提出した準備書面は、裁判所の訴訟記録の一部となり、何人も閲覧することができるが、実際に閲覧するには多くの制約があり、このことをもって、NHK情報公開規程第8条第2項第1号の「すでに公にされ何人も知り得る状態に置かれているものまたはそれに準ずる状態に置かれているとみなすことができるもの」に該当すると解することはできない。
 本件再検討の求めの対象となる第一審の第1〜第5準備書面には、開示してもNHKの事業活動に支障を及ぼすおそれがあると認められる記述はない。ただし、これらの文書中の個人の氏名は、NHKが既に公表しているNHK役職員および番組の出演者を除き、個人情報であるから開示すべきではない。

5. 審議の経過
 
平成17年   5月26日  (第43回審議委員会)  第26号諮問
    6月 9日  (第44回審議委員会)  審議
    6月30日  (第45回審議委員会)  審議
 
7月14日
 (第46回審議委員会)  審議
 
7月28日
 (第47回審議委員会)  審議
 
9月 8日
 (第48回審議委員会)  審議
 
9月22日
 (第49回審議委員会)  審議
   10月13日  (第50回審議委員会)  審議・答申


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