2016年1月31日放送

再放送
  • 2月1日(月) 午前 11:05
  • 2月6日(土) 午前 5:15
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ソラは風に包まれて
~徳島県 つるぎ町~

徳島県西部のつるぎ町では、山の急斜面にへばりつくように家々が点在しています。人々はこの急斜面に畑を切り開いて暮らしています。まるで空の中で生活しているかのような空間を、人々は古くから「ソラ」と呼びました。冬、山から吹き下ろす風「剣山おろし」が暮らしを彩ります。農家は大根を干す作業に大忙し。そうめん職人は麺を山からの風にさらして仕上げます。つるぎ町の冬の営みをみつめる旅です。

この地域の畑は山の斜面を切りひらいてつくられました。長年農業を営んでいる西岡田治豈(はるき)さんと妻・節子さんの畑は、急なところだと30度にもなる斜面にあります。畑の土は雨や風によって流されてしまうため、土を持ち上げて元に戻す作業が欠かせません。冬、ふたりの暮らしを彩るのが「ソラ」に吹く風「剣山おろし」です。大根をこの風で乾燥させれば、濃い味わいになるといいます。干した大根の炒め物や酢の物は、「ソラ」の人たちに親しまれてきた料理です。

畑仕事に使ったくわの刃は、次第にすり減り短くなります。大森豊春さんは畑仕事のかたわら、近所の農家に頼まれて農機具の修理をしています。刃先に鉄くずを溶接し、たたいて延ばすと、新品同様になります。大森さんは30代の頃、出稼ぎに行った先で鍛冶の技術を身につけました。地域の人の役に立ちたいと、大森さんは快く修理を引き受けています。「ソラ」の暮らしは、人と人のつながりによって支えられています。

麓の半田地区では、江戸の頃からそうめん作りが盛んです。「半田そうめん」と呼ばれるこの土地のそうめんは、麺が太くコシがあるのが特徴です。そうめん作りを支えるのも「剣山おろし」です。製麺所の三代目、坂口照明さんは麺を風にさらして乾燥させる昔ながらの作り方を守っています。風にさらすことによって、コシのある麺に仕上がるといいます。風に揺れるそうめんは、半田地区の冬の風物詩です。

旅人 山田敦子から

その畑は想像を超えた高さにありました。振り仰ぐと首が痛くなるような山の急斜面。そこに取り付いて農作業をしている夫婦の姿を見たのです。この「ソラの畑」で、西岡田さん夫婦は長年暮らしを立ててきました。お話を聞こうと登る足元から土はほろほろと転がり落ち、振り返れば高所恐怖症なら卒倒しそうな絶景です。斜面で黙々とくわを振るう姿、大きなかやの束を背負って細い山道を歩く姿。夫婦の足取りはあくまでゆっくり、確実。それは毎日を送るリズムでもあるのでしょう。何か尊いものを今私は見ている、という実感がありました。

つるぎ町へのアクセス

<電車>
JR徳島線「徳島」駅→「貞光」駅(約1時間20分)

<車>
徳島自動車道「美馬」ICから国道438号を南へ(約10分)

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問い合わせ先

つるぎ町の観光情報について
つるぎ町役場(代表)
0883-62-3111

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