川の道 息づく町
~新潟県 阿賀町~

新潟県東部、福島県との県境にある阿賀町。江戸時代は会津藩に属した山間の町です。町を東西に流れるのは、会津から日本海に流れ出る阿賀野川。交通や物流の要所として古くから栄えて来ました。町には今も、“河港”としての文化が息づいています。遊覧船の船頭として川とともに生きる人、150年続くこうじ屋の後を継ぐ職人、会津街道沿いに残る歴史ある建物を守る人。川とともにある昔ながらの暮らしに出会う旅です。

古くから暮らしを支えてきた阿賀野川には今、遊覧船が走っています。変化に富んだ川沿いの風景を眺めながら、その流れを楽しむことができます。この遊覧船で40年にわたって船頭をつとめる長谷川幸平さんは、代々川舟の船頭をなりわいとする家に生まれ、若い頃からこの川で船に乗ってきました。川を知り尽くした長谷川さんは厳しい自然を相手に巧みにかじを切り、観光客を楽しませます。川舟が無くなった今も、幼い頃から育ってきた川での暮らしを大切に守り継いでいます。

この時期になると、町では保存食作りが始まります。漬物作りに欠かせないのが、こうじです。山間地のため、乾物や野菜を保存しおいしく食べるために発展した昔の人の知恵です。町の老舗のこうじ屋さんでこうじを作るのは、6年前に阿賀町にやってきた小森田智哉さん。ひょんなことから妻の実家の後継ぎとなった小森田さんですが、働くうちに、こうじが地域の食を支えていることを強く感じるようになりました。伝統の味を守り継いだ職人が、昔からこの地に根づく食文化をこれからも支えていきます。

水運の大動脈となった阿賀野川。阿賀町で下ろされた荷は、そこから会津地方へと伸びる陸の道「旧会津街道」を通って運ばれました。川の道とともに物流の動脈だった旧会津街道沿いには、歴史を感じさせる旧家が今も残っています。かつて越後の藩の大名が参勤交代で江戸との間を往来する際に休憩所として使われた家に暮らすのは、渡部一郎さん。代々受け継いできた歴史ある家の誇りを胸に、大切に手入れをすることで家を守っているのです。その思いは、子や孫、ひ孫にも伝わり、守り継がれていきます。
旅人 山田敦子から
11月末の阿賀町は、早や冬枯れの景色。植木達は縄をかけたり板で囲ったり、いつ雪が落ちてきてもいいようにしてありました。その雪と見紛うのが、地元の米を使った「糀(こうじ)」。米に咲く花という字のとおり、白く固い米粒が全体にけばだって柔らかく微笑んでいるようです。江戸の昔から、阿賀野川を船で運ばれてきた海の幸「身欠き鰊(にしん)」をこの糀に漬けるのが、地元のお正月準備。今も人々は寒風の中、糀を買いにやって来ます。鰊を漬けて、畑の野菜を漬けて、甘酒やみそを作って、地酒を飲んで。豊かな発酵文化に彩られた新潟。冬もまた魅力のある季節でした。
阿賀町へのアクセス
<電車>
JR磐越西線「新潟駅」→「津川駅」(約1時間)
<車>
磐越自動車道経由「津川IC」→阿賀町内(新潟から約1時間)
問い合わせ先
- 阿賀野川の遊覧船について
- 道の駅「阿賀の里」
0254-99-2121
- 阿賀町の観光について
- 阿賀町役場 農林商工課 商工観光係
0254-92-4766
※NHKサイトを離れます